
「これまでで最高の花火映像が撮れました」
「全世界に見てほしい! これが世界に誇る日本の花火、きほく燈籠祭の『彩色千輪』!」
別所さんは、撮影した映像にコメントを添えて1件の動画を投稿。
公開された映像には、26日に三重県紀北町で開催された夏祭り「きほく燈籠祭」の名物花火プログラム「彩色千輪」と「彩雲孔雀」を同時に打ち上げる「彩雲孔雀千輪」が写っています。
半円状に打ち上げられた青や紫の花火の上には、空一面に広がった色とりどりの花火が。花火は水面に反射して、画面全体が花火でいっぱいとなっています。
公式サイトによると、打ち上げ場所となる堤防が斜めに折れ曲がっているため、「会場と平行したまっすぐな花火が打ち上げられない」と花火室は悩んでいたそう。偶然見た海外の花火動画からヒントを得て試行錯誤すること3年、2011年に「彩雲孔雀」はお披露目されました。
折れ曲がっている堤防だからこそ打ち上げられるこの花火は、打ち上げる角度を緻密に計算し、会場から一番きれいに見えるように打ち上げているそう。数十個の花火が夜空に虹をかけ、孔雀が羽を広げたように見えることから「彩雲孔雀」と名付けられたそうです。まさに燈籠祭のために考えられた、ここでしか見られない花火となっています。
花火映像の美しさに絶賛の声!
この花火映像には
💬「すげえええ!!」
💬「うわぁ~すごすぎます」
💬「こ、これは圧巻」
💬「機材も映像もハンパない!」
💬「胸が熱くなります」
など絶賛のコメントが寄せられています。
BuzzFeedは撮影者の別所隆弘さんにお話を聞きました。
――この映像はいつ頃撮られたものでしょうか。
「撮影日時は2025年の7月26日になります。時間は20時少し前くらいだったと思います。例年より早い時間に上がったのでかなりびっくりしました」
――きほく燈籠祭の花火は毎年撮っているのですか?
「僕はこの花火を10年撮り続けています。その頃僕はまだ駆け出しで、きほくの花火の投稿と、飛行機の投稿で注目をいただいて、プロになるという道を辿っています。だから僕にとってはきほくの花火は恩人というか、育ててもらったような感覚です」
――思い入れのあるイベントなんですね。
「当時この花火の存在は知っていたのですが、こんなに凄まじい一発が上がるとは知らず、フラフラっといって、今年も撮った海岸線のところに辿り着きました」
「地元の写真家の皆さんが快く場所を譲ってくださり、そのご縁で撮れた写真をきっかけに、今に至るまでその時お世話になった方や、地元の皆さんとの交流が続いているような、そんな花火なんです。だから毎年必ず、個人的な巡礼のような気持ちで撮影に行っております」
――きほく燈籠祭の「彩色千輪」の魅力はどういったところにありますか?
「きほくの千輪は圧倒的に芸術性が高いんです。三重で有名な和田煙火店さんが打ち上げています」
「長島湾が内海に近い状態になっているため、花火の写り込みが非常に美しく、まるで鏡のように上下に広がっていきます。花火自体の美しさと現場の特異性の二つが噛み合うことで、唯一無二の花火として、今では写真界隈では知らぬもののない、全国から人が集まる花火になりました」
「僕もまたその美しさに初期に惹かれた人間として、毎年この花火を必ず撮りにいく理由になっています」
――撮影の際に気をつけたこと、工夫された点などあれば教えて下さい。
「結構いきなりくるんです。特に我々は花火の観覧場所で撮っているわけではないので、プログラムを周知する放送なども聞こえません。なので、全集中していなくてはいけないんですね」
「写真家たちは、直前までは結構みんな仲良く会話したりしてるんですが、花火が始まると恐ろしいほどの緊張感が走ります。一瞬を逃さないために、そこにいる全員が夜空を見つめているというのも、この花火の独特な点です」
――美しい映像とは裏腹に、緊張感のある現場なんですね。
「なので気をつける点というと、細かな技術云々というより、集中力を切らさないということに尽きますね。そして撮影後はみんな一気にリラックスモードになります。千輪が撮れたあとは、急にみんな気楽な気持ちになって、次々に打ち上がる後の花火を楽しみます。そのリラックスの瞬間はまるでご褒美のようで、大好きな瞬間です」
――花火の「動画」を撮影しようと思った理由はあるのでしょうか。
「元々僕は写真しか撮ってこなかったのですが、ある時、写真と動画の共通点と違うところに興味を惹かれました。写真は時間の蓄積を記録する芸術で、動画は時間の流れや変化を記録する芸術、その違いに気づいたんです」
――違いに気付いたきっかけは何ですか?
「きっかけは花火です。花火の写真を見ると、火線が長いですよね。シャッターを10秒くらい開けてるからです。その間に光の軌跡が全て一枚の写真の上に刻印されます。まさに時間を『ためて』いるわけです」
「一方動画の方は、必ず一瞬一瞬は次の瞬間へと流れていき、それを記録します。ためられないんですね。でもその代わりに『変化』を記録することができる。その違いが面白くて動画を始めました。どちらも『時間』を記録するという共通点がありながら、その表出の根元のところが違うということに面白みを感じています」
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美しい花火の映像は、別所さんのX(@TakahiroBessho)やYouTubeで見ることができます。