7月24日、ブロードウェイで公演中の韓国ミュージカル『メイビー、ハッピーエンディング』の主演を、アメリカ人俳優のアンドリュー・フェルドマンが務めることが発表された。
同作は近未来の韓国を舞台にしており、白人俳優が主演を務めることに批判の声が寄せられている。



ブロードウェイで公演中の韓国ミュージカルに、主演として白人俳優を起用したことが発表された。制作陣が意向を説明するも、アジア系アメリカ人らを中心に反対の声が寄せられている。
7月24日、ブロードウェイで公演中の韓国ミュージカル『メイビー、ハッピーエンディング』の主演を、アメリカ人俳優のアンドリュー・フェルドマンが務めることが発表された。
同作は近未来の韓国を舞台にしており、白人俳優が主演を務めることに批判の声が寄せられている。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、同作のキャストには現在、代役を含む8人のうち7人が、AANHPI(アジア系アメリカ人・ネイティブ・ハワイアン・太平洋諸島民)の出自を持つ俳優で構成されている。
そんな中、オーディションでアンドリューがオリバー役に選ばれた。
AANHPI俳優以外を選んだ背景について、制作陣は同作のテーマが「普遍的」であり「すべてのバックグラウンドに通じる物語である」と説明した。
この決定に対して、アジア系アメリカ人俳優による連合「AAPAC」はプレイビル誌に声明文を送付。
初演時のキャスティングが、AANHPIの俳優たちに「主演とわき役の両方を演じる希有な機会を提供し、今後の作品への前例を作った」と記すと、新たな配役に意義を続けた。
「もし物語の“普遍性”を表現するための判断であれば、改めて思い知らされることがあります」
「これまで長いあいだ『白人の物語は白人俳優だけが出演することが普遍的だ』と考えられてきました。それに対し、私たちアジア系の物語をアジア系の見た目の俳優が中心で演じることについては、十分に普遍的とはみなされないのです」
翌日31日、同作で脚本と音楽を務めたウィル・アロンソンとヒュー・パークは、インスタグラムにコメントを投稿した。
韓国で開幕した時点で、オリバーとクレアの設定は、グローバル企業が生産したロボットであり、韓国人名も付けられていないことを指摘。
初演のキャスティングが、アジア系アメリカ人にとって大きな意味を成したことを認める一方、「アジア系俳優を出演さることで韓国が連想される」という考えを「韓国文化の独自性を損なう退行的で攻撃的な見方」だと語った。
トニー賞受賞歴をもつ中国系アメリカ人俳優のB・D・ウォンは、今回のキャスティングに対する想いを、自身のフェイスブックに投稿。
1990年のイエローフェイスに対する抗議活動以降の演劇界におけるアジア系俳優の立場について「地位と可視化は向上したが、進歩はしているのか」と疑問を呈した。
ウォンが指摘するのは、『ミス・サイゴン』のブロードウェイ公演においてエンジニアの配役をめぐって論争が起きたときのことだ。
イギリス人俳優のジョナサン・プライスがベトナム人風のメイクで出演することについて、米国俳優組合は「アジア系コミュニティへの侮辱」と指摘。ウォンも抗議者として名を連ねた。
しかし、エンジニアにフランス人の血が入っていることを指摘する声も挙がった。結果、キャスティングは変更されないまま上演された。
ウォンは、『メイビー、ハッピーエンディング』の制作陣の決定について「すべきことをした」「その立場には同情する」と認める一方、決して軽々しく受け取れるものではないことを指摘した。
「アジア系の俳優や観客にとって、平手打ちをされたかのような決定です」
「私たちの人生は、長きにわたる排除の歴史の中にあります」
「アジア系ではない俳優がこの役を演じることを、インクルージョン(包括性)の例として表現しようとする意向が感じられます」
「しかしこれは、社会から疎外されてきた人々へのわずかな機会をめぐる闘いを、嘲笑しているようなものです」