サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
ブラックフライデー
www.ben54.jp
平成初期の日本で「風船おじさん」と呼ばれた50代の男性がいた。通称を鈴木嘉和(よしかず)といったこの人物は、1992年11月23日、滋賀県・琵琶湖の湖畔から、ヘリウムガスを満たした多数の風船に吊られた小さなゴンドラで離陸し、北米を目指して太平洋横断に挑んだ。 だが、その挑戦計画はあまりに杜撰(ずさん)であり、生還の可能性は著しく低かったと言わざるを得ないものだった。(本文:ミゾロギ・ダイスケ) 横浜博の会場騒動で新聞沙汰に 太平洋横断挑戦に取り組む前、鈴木氏は1992年4月、東京都府中市の多摩川河川敷から椅子にヘリウム風船4個を取り付けた装置によるテスト飛行を実行した。当初は数百m程度の上昇を想定していたが、砂袋2つを落下させた結果、高度は想定を大きく上回る5000m超に達したとされる。 降下時にはライターの炎でロープを焼き切って風船を切断するという、極めて危険な手段を用いた。機体は最終的
ビッグモーター新卒社員、“電話1本”で解雇通告され自死 「死刑死刑死刑」LINE送信の元副社長らに「8800万円」損害賠償請求 2020年4月、大学を卒業したばかりのAさん(当時20代・男性)は、株式会社ビッグモーター(現・株式会社BALM)に新卒で入社し、八王子インター店で勤務を開始した。 しかし、わずか1か月あまりで人事部から解雇通告を受け、同年5月30日未明、自宅アパートで自死した。 遺族は11月19日、株式会社BALM(旧ビッグモーターが会社分割で債務処理を担う会社として存続)、兼重宏一元副社長、人事部のB部長とC氏の4者を被告とし、東京地方裁判所に約8838万円の損害賠償を求める訴訟を提起した。 「免許未取得」も奮発、同期の2倍の営業実績 事件の発端は、Aさんが入社までに運転免許を取得できなかったことにあった。ビッグモーターは新卒内定者に対し、入社前の免許取得を要請していたが、2
最高裁による生活保護基準引き下げの「違法」判決を受け、国の方針を審議するために厚生労働省が独自に設置した有識者による専門委員会。原告ら“不在”との指摘もあるなか、同委員会の最終回会合となる第9回専門委員会が11月17日、都内で開催された。 同委員会がまとめた報告書の内容は、原告と原告を支援する弁護士らが求めていた「全受給世帯への全額補償」には遠い、遡及支給額の減額を伴うものだった。今後は、政府・厚生労働大臣に最終判断が委ねられる。 原告らは、今後の国の対応によっては、再びの訴訟も辞さない構えだ。(ライター・榎園哲哉) 最高裁で判断されるも厚労省独自に専門委設置 10年以上続いた生活保護基準引き下げ(保護変更決定処分)の違法性を問う「いのちのとりで裁判」。しかし、司法の判断が出た後も解決に至っていない。 2012年末の衆院選で自民党が掲げた「生活保護費10%削減」の公約に“忖度”したとされる
「クマが柴犬くわえ…」AIフェイク動画“投稿者”が負う「罪」の重さ 人身被害“過去最悪”の中、広がる不安に“便乗”か?【弁護士解説】 環境省によると今年上半期(4〜8月)のツキノワグマの出没件数は2万792件で、統計がある2009年度以降、初めて2万件を突破した。 同省は17日、10月の全国のクマによる負傷者を含む人的被害が88人に上り、今年4〜10月の合計が196人となったと発表した。過去5年間の同時期で最多で、死亡者数も12人と過去最多を更新した。加えて今月3日にも1人が死亡し、16日にもクマが原因と疑われる死亡事故が起きている。 テレビやネットニュース、SNSでも連日クマ被害が話題となっているが、この状況に乗じて、AIで生成された「現実のものではない映像」が多数拡散される問題も起きている。 「クマが自動車を襲う」虚偽のドラレコ映像も多数 10月25日、宮崎県大崎市の住宅にクマが出没し
東京拘置所で男性刑務官から性被害を受けた被害者の男性が国家賠償を求めた裁判で11月17日、東京地裁で和解が成立した。 国側は解決金60万円の支払いに応じるとともに、異例の条件として全職員を対象とした人権研修の実施と再発防止策の組織体制づくりを約束。同日、会見を開いた弁護団は「勝訴判決以上の価値がある」と評価した。 「食器口」から陰部触り続ける 「俺じゃ興奮しないんだね」 東京拘置所の独房前で、刑務官はそう言い残して去っていったという。被害にあったのは当時32歳の男性被収容者だった。 事件が起きたのは2021年12月28日の夜。就寝準備の時間帯、夜勤の男性刑務官が、睡眠導入剤を交付するため男性の居室前を訪れた。 刑務官は「さっきやってた?」「いつもどこでやってるの?」「大きいの?」などと性的な質問を執拗に繰り返し、やがて「陰茎を見せてほしい」と要求したという。 男性は拒めないと感じ、やむなく
障害者5人のうち4人は働けない? 「法定雇用率」の仕組みはあるが…ほとんどの当事者が“枠外”に弾き出される現実 日本で「共生社会」の実現が掲げられて久しい。だが、障害のある人々が実際にどのように社会に参画しているのか。たとえば障害者に関する雇用・就労のあり方について、具体的に知る人は多くない。 障害者事業所に関する報道も「倒産や廃業の増加」「行き場をなくした障害者の苦境」「障害者虐待」「補助金等の不正請求」など、暗い内容が目立つ。明るい内容は、成功事例や啓発イベント程度だ。 本記事では、自身も障害を持ちながらフリーランスのライターとして働き、博士号を取得した研究者でもあるみわよしこ氏が、自身の経験をもとに、障害者事業所の仕組みと課題、そして「障害者の就労」の現状を考察する。(本文:みわよしこ) 障害者である私の就労は、誰かに必要とされているのだろうか? 中年になってからの中途障害で車椅子を
「永住者でも生活保護の法的権利なし」最高裁判決が残した“課題”…自治体の「裁量」頼みで生じる“外国人保護”の限界とは【行政書士解説】 日本に居住する外国人、特に長年暮らしている永住者や定住者が経済的な困窮に陥った場合、生活保護を受ける法的権利があるのか。また、もし申請が却下された場合、彼らはそれを法的に争う「権利」を持っているのか。 この問いに対し、日本の最高裁判所は、代表的な二つの裁判例を通じて、外国人には生活保護法に基づく受給権がないという判断を下しています。それを代表する有名な判例が、「宋訴訟判決」(2001年)と「永住外国人生活保護訴訟判決」(2014年)です。 なぜ最高裁は外国人を生活保護法の対象外としたのか。そして、現在も外国人が受けている「事実上の保護」という行政措置とはどのようなものか。さらに、昨今の排外主義の高まりの中で、自治体による保護がどのように法的根拠と正当性を示し
10月30日、東京地裁において、画期的な判決が言い渡された。若い男性受刑者が受刑中にがんを発症したものの、適切な治療を受けられなかったために悪化して死亡した経緯に対し、裁判所は国の過失を認め、国が遺族(母親)に150万円の賠償を行うよう命じたのである。 医療を受ける権利は、刑務所では十分に保障されているとはいえない。社会も「罪を犯して受刑しているのだから、仕方がない」と考えがちだ。そういう社会の風潮に、一石を投じる判決であった。(みわ よしこ) がんを発見できず、手遅れに 母子世帯で育ったAさん(死亡当時23歳)は、強盗致傷等の罪で懲役6年の実刑判決を受け、21歳だった2019年3月、川越少年刑務所さいたま拘置支所に入所した。 Aさんには多数の友人と婚約者がおり、社会復帰を待たれていた。しかし、2020年1月、陰嚢(いんのう)の腫れを訴え、拘置支所に勤務する精神科医・B医師の診察を受けた。
1988年11月、埼玉県三郷市で自転車で走行していた女子高生(当時17歳)が、突然、不良少年グループに拉致された。 女子高生は約40日間にわたり、東京都足立区の加害者宅に監禁され、暴行や強姦を受け続けた末、翌年1月4日に集団リンチを受けて死亡。遺体はコンクリート詰めにされ、東京都江東区内の東京湾埋立地に遺棄された。 いわゆる「女子高生コンクリート詰め殺人事件」は、事件から36年が経過した現在も「史上最悪の少年犯罪」として記憶されている。 犯人として逮捕されたのは、A(当時18歳)、B(同17歳)、C(同16歳)、D(同17歳)、E(同16歳)、F(同16歳)、G(同16歳)の7人の少年だった。このうち、成人と同等の刑事裁判が妥当とされ、家庭裁判所から検察に逆送致されたのはA〜Dの4人。Eは特別少年院送致、Fは中等少年院送致、Gは保護観察処分となった。 本記事では、ノンフィクション作家・藤井
アサヒ・アスクル「ランサムウェア」で大損害 社員が“うっかり”感染原因になっても「賠償責任」生じない?【弁護士解説】 10月31日、オフィス用品通販大手の「アスクル」は、同月19日に発生したランサムウェア感染によって顧客などの情報が外部に流出したことを明らかにした。感染に伴うシステム障害が原因で、同社の法人向け・個人向けサービスは感染当日から11月5日時点まで受注・出荷や一部サービスが停止されている。 また10月14日には、「アサヒグループホールディングス」(以下「アサヒ」)も、9月下旬に発生したランサムウェア感染によって個人情報が流出した可能性があると発表している。同社のシステムも、いまだ完全には復旧できておらず、電話やファックスなどによる受注で対応しているという。 アスクルのシステム障害は、同社に物流業務を委託していた「無印良品」や「ロフト」にも波及しており、両社のECサイトはサービス
11月4日、大阪・関西万博における海外パビリオンの建設工事費の未払い問題をめぐり、被害を訴える建設会社の代表らとジャーナリストが東京都内で記者会見を開いた。 上位請負業者の「持ち逃げ」「倒産」で建設費未払い… 未払いが発生しているのは11か国(アンゴラ、インド、ウズベキスタン、セルビア、タイ、中国、ドイツ、米国、ポーランド、マルタ、ルーマニア)のパビリオン建設工事費。 建設会社38社が未払いを訴えており、被害額は10億円を超えているという。 問題を取材・調査してきたジャーナリストの西谷文和氏によると、未払いは2次以降の下請けに入っていた会社が工事代金を持ち逃げしたケースと、同じく2次以降の下請けに入っていた会社が倒産したケースとに大別される。 7月にはアンゴラ館の3次下請けをしていた建設会社「一六八(いろは)建設」(大阪市鶴見区)の経理担当者が、工事代金など1億2000万円余りを着服したと
生活保護「女性受給者」宅へ「男性ケースワーカー」1人で訪問、性被害が起きたケースも…行政側“配慮ルール”に課題 「女性の一人暮らしで、男性を家に上げたことなんて一度もなかったのに。生活保護を受けるようになってから、毎月のように男性が突然一人で家に来るのが、本当に怖いんです」(大阪市在住・60代女性) 「自営業の夫を亡くして狭い部屋に引っ越したものですから、男性が来ると一つしかないソファに座ってもらうことになります。そうすると、私はベッドに腰かけるしかありません。ベッドに座った状態で向き合って男性と話すことに、違和感があります。また次も来るのかと思うと、毎日気が重くて」(関西在住・70代女性) これらは、障害や高齢などを理由に生活保護を利用しながら暮らす女性たちから、筆者に寄せられた切実な声です。 生活保護制度では、暮らしぶりを確認し必要な支援を行うため、担当者(ケースワーカー)による定期的
社員 「副業したいのですが許可をいただけませんか」 会社 「ダメです」 社員のアルバイト申請を、会社がことごとく却下した事件を解説する。 「生活が厳しいのに...なぜバイトができないんだ」と社員が提訴。その結果、裁判所は「バイトをしても仕事に支障ない」として、会社に対して「社員に慰謝料30万円を払え」と命じた。 法律上、副業は「原則自由」であり、禁止できるのは「合理的理由があるときだけ」ということを押さえていただきたい。 以下、事件の詳細について、実際の裁判例をもとに紹介する。(弁護士・林 孝匡) 給料が下がる 関西地方の運輸会社に勤めていたXさんは「今の給料では生活が厳しい...」と悩んでいた。 というのも、Xさんの給料がダダ下がってしまったからだ。 Xさんの給料は、入社から約13年は手取りで約45万円あった。長距離の定期便を運行していたからだ。しかし、その後、特定のエリア(京阪神)だけ
「日本のルールおかしい」中3死亡事故で“自転車の車道走行”求める道交法に不安の声 「青切符」導入控える中…“安全整備”に課題 29日午後4時30分ごろ、大阪市中央区で、バスと自転車の事故が発生。自転車で車道の歩道寄りを走行していた中学3年生の男子生徒(15)が、病院に搬送後、死亡が確認された。 ぬぐえない自転車での車道走行の恐怖感 男子生徒は道路交通法(道交法)に則り、自転車で車道左端を走行していたとみられ、ネット上では「日本のルールおかしい」「自転車を歩道でなく車道を走らせるようになって起きてしまった事故」「そもそも自転車が車道を走るのは無理がある」と法律の不備を指摘する声も多数挙がった。 自転車移動が多いという30代会社員のAさんも次のように証言する。 「自転車で移動するときは基本、車道の左端を走行しています。ただ、正直、バスやトラックが横を通過するときは毎回ヒヤリとします。自転車レー
様々な事情で親を頼れず、「社会的養護」の制度の下、児童養護施設や里親家庭で育つ子どもたちがいます。彼らが18歳で社会へ出ていこうとする時、高い壁が立ちはだかります。 大学等への進学や、職業訓練を受けることを希望しても、経済的な理由等によりままならないケースが多いのです。 「とにかく、生き抜いて欲しいんです」 これは、神戸市内のある児童養護施設の施設長の言葉です。かつてご自身が担当した子どもが2人、将来に絶望して自ら命を絶ったといいます。その痛切な経験から紡がれた言葉に、現実の重みが込められていました。 わが国の法制度は、出自にかかわらず若者が学びの機会を得られるよう、幾重にもセーフティーネットを張り巡らせています。しかし社会には、時折沸き起こる「生活保護バッシング」に象徴されるように、「セーフティーネットに頼るのは恥ずかしいこと」という誤った認識が蔓延しています。「福祉に頼ること」への罪悪
幻冬舎が「名誉毀損訴訟」で敗訴 地裁「そもそも前提事実が存在しない」“異例”判断…訴えられたネットメディア「なぜ提起」疑問示す 出版社大手・株式会社幻冬舎と代表取締役の見城徹氏が、YouTubeで動画を配信するインターネットメディア「Arc Times」を運営するアーク・タイムズ株式会社と、同社の番組に出演した同社代表の尾形聡彦氏、キャスターの望月衣塑子氏、および法政大学前総長で同大学名誉教授の田中優子氏を被告とし、謝罪広告、動画の削除、合計1000万円の支払い等を求め提訴していた名誉毀損訴訟の判決が、21日、東京地裁で言い渡され、裁判所は原告の請求を棄却した。 原告側は訴訟において、昨年5月11日と12日にそれぞれ放映された動画内での発言において行われた4つの「事実の摘示」が、原告らの「社会的評価を低下」させると主張していた。これに対し被告側は、「事実の摘示」があったこと自体を否認し争っ
高市新首相「働け」発言にトラックドライバーが共鳴? かつては「年収1000万円」も珍しくなかったが…「長時間労働」求めざるを得ない“切実な”事情 「人数が少ないんだから馬車馬のように働いてもらう」 「ワークライフバランス(WLB)を捨てて働いて働いて働いて働いてまいる」 高市早苗新総裁誕生直後に大きな注目を浴びた、同氏による、所属議員向けのあいさつの一節である。 この発言に対し、「期待している」というポジティブな声があった一方、「労働者の現実を無視した軽率な言葉」といった批判が相次いだ。 高市氏の発言直後から嫌な予感はしていたが、その予感は的中した。 この発言を受け、SNS上で運送業従事者と思われるアカウントの投稿に2.4万もの「いいね」がついたのだ。 「高市さーん、運送業の働き方改革やめさせてー」 「元気だからたくさん働きたいのー」 その下には、「#働き方改革撤廃」というハッシュタグ。
Aさん:「足りない分の給料を請求します」 会社:「文句言わずに給料を受け取って働き続けてましたよね」 提示された金額より給料が少なかったことに不満を抱いたAさんが、会社を相手取り裁判を起こしたところ、裁判所は会社に対して「足りない分の給料を支払え」と命じる判決を下した。 以下、事件の詳細について、実際の裁判例をもとに紹介する。(弁護士・林 孝匡) 事件の経緯 Aさんは、エレクトロニクス事業を中心に展開する会社(B社)で、管理本部の部長として働いていた。 ■ 転職の誘いを受けて入社 B社に入社する前、Aさんは別の会社で働いていたが、B社の創業者から会食に招かれ、「わが社に来ないか」と誘われた。 B社はかなりAさんにほれ込んでいたのだろう。Aさんに雇用条件通知書を郵送する際、「鶴首(かくしゅ)して吉報を待っています」(首を長くして今か今かと待ちわびるという意味)としたためた手書きの便箋も同封し
江口寿史氏のイラスト、著作権的には“セーフ”の可能性も? 「トレパク」をめぐる“権利侵害”の判断ポイント 漫画家・イラストレーターの江口寿史氏が手掛けた、ルミネの開催する「中央線文化祭2025」のポスターが、SNSに投稿されたモデル・金井球(かない・きゅう)氏の自撮り写真を参考にして描かれていたことが判明した問題に端を発して、イラストにおける「トレース行為」の是非が議論を呼んでいる。 「正当なトレース」と「不当なトレース」の境界線は、どこにあるのだろうか。(本文:友利昴) トレース行為の適・不適の境界線は? この件に関する報道では、「トレース疑惑」という言葉を使う媒体もあるが、まるでトレース自体に不正性があることを含意した書きぶりであり、正確性を欠く。 トレースという手法自体には違法性はないし、またトレースさえすれば誰にでもいい絵が描けるというわけでもなく、創作プロセスとして不適切でもない
2017年、神奈川県小田原市で発覚した「生活保護なめんな」ジャンパー事件は、日本の生活保護行政の現場が抱える根深い問題と、社会に蔓延する貧困に対する不寛容さを浮き彫りにしました。 およそ10年間にわたり、同市の生活保護担当職員が、威圧的なメッセージがあしらわれたジャンパーを着用し、業務にあたっていたのです。 この一件は、決して、小田原市という一地方自治体の地方公務員の不祥事で片付けられる問題ではありません。また、提起された問題は、今なお、解決されたとはいえません。 セーフティネットの理念が機能不全になっている現状、それを助長する「自己責任論」など、日本社会が抱えるジレンマそのものを映し出すものといえます。(行政書士・三木ひとみ) 「HOGO NAMENNA(ホゴ ナメンナ)」に込められたメッセージ 事件が明るみに出たのは、2017年1月のことでした。小田原市の生活福祉課で生活保護を担当する
1994年6月29日、長野県北安曇郡池田町の小学校校庭で、宮田稔之君(当時17歳)と弟の透くん(当時16歳)が、同じ地域に住む少年らから集団リンチを受け、稔之くんは昏睡状態になった末、翌日に死亡した。通称「長野リンチ殺人」事件である。 当初、加害者として逮捕されたのはAという少年1人であったことから、警察は父の宮田幸久さんと母の元子さんらに「喧嘩だった」と説明し、新聞でも小さな囲み記事で「1対1の喧嘩」と報じられていた。しかし、稔之くんが死亡した30日、さらに6人の少年が加害に加わっていたことが判明する。 少年審判は非公開であり、息子を殺された両親は警察や検察、家庭裁判所からほとんど何も知らされないまま放置されていた。この状況に我慢ならなかった宮田さん夫妻は、真相を明らかにするため民事訴訟を提起する。 本記事では、ノンフィクション作家・藤井誠二氏の著書『少年が人を殺した街を歩く 君たちはな
「うるせえばばあ」「じじい」小学生同士の“暴力トラブル”裁判、保護者に50万円賠償命令も…「息子はやってない」えん罪主張 2016年4月、神奈川県内の公立小学校に通う女子児童(当時5年生)が、男子児童(当時4年生)からひざを蹴られ後遺症を負ったなどとして、男子児童の保護者である両親と学校を運営する市を相手取って損害賠償を求めていた民事裁判で、10月3日、横浜地裁小田原支部は、男子児童の暴行と後遺障害との因果関係を認めなかった。 しかし、男子児童が1度暴行をふるったことは認め、男子児童の両親に対し、約50万円の損害賠償を支払うよう命じた。 判決後、男子児童の両親は記者会見を開き、「(暴行は)虚偽の事実であり、不当な判決」として、東京高裁へ控訴する方針を示した。(ライター・渋井哲也) 「うるせえばばあ」「じじい」言い合いからトラブルに 判決文などによると、原告の女子児童Aと、1学年下の男子児童
パナソニック子会社「定年後パートで年収85%減」は違法か? 勤続40年の従業員が提訴「理不尽な扱いを受けたのは私だけではない」 パナソニックホールディングスの傘下「パナソニックコネクト」(東京都中央区)の労働者が、定年後の継続雇用で年収ベース85%減となるパートタイム勤務しか提示されなかったのは「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年法)」に反するとして、10月14日、東京地裁に提訴した。 原告は、第一の請求(主位的請求)として、フルタイム勤務の労働者としての地位の確認および賃金の支払いを求め、これが認められない場合の請求(予備的請求)として、不法行為に基づく損害賠償の支払いを求めている。 定年後もフルタイム勤務を希望するも不採用… 訴状等によれば、原告のAさんは、新卒で松下電送株式会社(当時)に入社。今年5月に定年を迎えた。 Aさんは2023年度から、定年後もフルタイムで働けるよう上
「廊下で雑魚寝」「24時間以上拘束」児相の元職員が訴えた「過重労働」裁判、県はなぜ“即日”控訴したのか? 親からの虐待やネグレクト、あるいは家庭の経済的困窮などを理由に、両親の元から離れた子どもたちが入所する児童相談所。 精神的に不安定な子どもたちが、安心して暮らせる住環境を整えるのが児童相談所の役割でもあるが、職員の数が追いつかず、子どものケアを充分に行えない課題も生まれている。 児童相談所の元職員である飯島章太さんは、こうした児童福祉の労働環境改善を訴えて裁判を行っている当事者だ。 夜勤は24時間を超える拘束も 飯島さんは2019年4月から、市川児童相談所(千葉県)の一時保護所の職員として働いていた。もともと子どもの電話相談員の経験をきっかけに、過酷でつらい境遇の子どもを支援したいという想いで就職を果たす。 しかし、その後わずか4か月で休職に追い込まれる。飯島さんの話によれば当時、一時
「このまま連絡なく7日過ぎれば、失踪扱いで保護を廃止にできたのに!」 福祉事務所の担当ケースワーカーから、受話器越しに投げつけられた怒声。これは、生活保護を利用し、まさに今、生活の立て直しを図ろうとしていたタカヤさん(30代男性・仮名)に向けられた言葉です。 本来、生活に困窮する人々を支え、自立を助けるはずの生活保護制度。しかし、その現場では、一般には到底理解しがたい「謎ルール」が横行し、最も助けを必要とする人々を更なる苦境へと追い込んでいる実態があるのです。 今回は、生まれて間もなく母を亡くし、乳児院、養護施設を経て父親に引き取られた先で虐待を受け、統合失調症を患いながらも懸命に生きようとするタカヤさんの事例を通して、福祉行政の現場に潜む深刻な問題と、制度の矛盾を浮き彫りにしていきます。(行政書士・三木ひとみ) 「自立を助長する」はずの行政が若者を追い詰める現実 生活保護法は、「健康で文
「紋次郎いか」50年以上親しまれたロゴが突然“著作権侵害”訴えられ敗訴 なぜ今…?「5630万円」賠償命令判決の“内幕”とは 10円、20円を握り締め、学校帰りにおやつタイム。とりわけ40代以降の中高年にとって、駄菓子の思い出は深いものがあるだろう。そんな業界に身を置く、名古屋の老舗企業に理不尽ともいえる判決がくだり、衝撃が走った。 甘じょっぱいたれと噛みごたえがクセになる「紋次郎いか」。そのラベルのイラストが著作権を侵害しているとして、小説『木枯らし紋次郎』の著者の遺族が訴えを起こし、被告の駄菓子メーカーが知財高裁で敗訴したのだ。 駄菓子の利益率を考えると、約5630万円という賠償額が与える打撃は想像に難くない…。 半世紀近く、‟共存”してきたようにみえた中、「なぜいま」だったのか…。そして、このイラストと『木枯らし紋次郎』は「本当に似ている」といえるのだろうか。(本文:友利昴) 駄菓子
「年休取得に診断書はいらないだろう」ーー。 鉄道大手JR東海の組合員の一言から始まった行政訴訟で8日、東京高等裁判所は労組側の主張を全面的に認め、2024年11月の東京地裁判決を維持。国側(中央労働委員会)の控訴を退け、会社側の団交拒否を違法と改めて判断した。 同日、都内で会見を開いた淵上利和中央執行委員長は判決について「原審以上に裁判所が踏み込んだ判断を示し、労働組合の団体交渉権や活動に対し、正当な評価がなされた」とコメントした。 年休申請も…会社側は診断書提出を強要 JR東海労働組合の組合員Aさんは2016年、手術を伴う入院のため、所定の手続きに従って年次有給休暇(年休)を申請。 しかし会社側は「診断書を提出しなければ年休を認めない」との対応を取り、組合員に診断書提出を強要していた。 これに対し、組合員は「年休は欠勤ではない。なぜ診断書が必要なのか」と素朴な疑問を提起した。 労働基準法
「マスク拒否なら受診をご遠慮いただきたい」町医者VTuberの投稿に賛否 “院内での着用要請”法的正当性は? 今年7月「院内でのマスク着用を受け入れない方には、保険医療機関の受診をご遠慮いただきたい」との投稿が、X上で大きな議論を呼んだ。 投稿者は「町のお医者さん」として診療所で働きつつ、VTuberとしても活動する山吹オルカ氏だ。 厚労省認可の保険診療を求めながら、同省推奨の院内マスク着用を拒否する“矛盾”を指摘したこの投稿には賛否が集まった。インプレッション数は1408万件を超えるが、なかには「マスクは個人の自由」として抵抗感を示す層も一定数存在する。 ではマスク着用の要請はどこまで「ルール」として機能し、法的に許されるのか。 弁護士JPニュース編集部では、投稿主である山吹氏本人と、民法や企業法務に詳しい弁護士を取材。医療現場の実情や法的妥当性について聞いた。 X投稿が注目されたことで
生活保護、障害者に加算される「約1万5000円」が自治体の“裁量”で支給拒否…背景にある「不合理な運用」の問題とは 生活保護受給者の中には、障害を抱え、働くことが困難な人が大勢います。それらの人々にとって、月額1万5000円前後の「障害者加算」は命綱です。 障害ゆえに生じる追加の出費(たとえば、体調管理に不可欠な冷暖房費など)を補うためのお金であり、最低限度の生活を維持するために不可欠なものです。受給したからといって暮らしに「余裕」が生じるわけではありません。 しかし、関西地方に住むタケシさん(仮名・40代男性)は、医師に勧められて取得した「精神障害者保健福祉手帳2級」を所持しているにもかかわらず、この加算を拒否されました。理由は障害の重さではなく、ただ「手帳を取得した時期が早すぎたから」という、にわかには信じがたいものでした。 しかも、タケシさんは事前にケースワーカーへ加算の申請方法につ
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『弁護士JP|法律事務所や弁護士の相談予約・検索』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く