米ケンタッキー州レキシントンで9月15日、補助犬を理由に客に差別的な対応をしたとして、飲食店に2万5000ドル(約370万円)の罰金が科された。
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トイレに続く通路には、ビュッフェカウンターが置かれていた。
同紙の取材で、オーナーは当時の状況について説明した。
「補助犬が、ビュッフェのにおいを嗅ごうとしていたんです」
「だから、(犬がビュッフェの方に向かわないよう)道をふさぎました」
「補助犬だからといって、許される行動ではありません」
「問題になるかもしれない行動は、早めに対処しなければいけません。もし保健局を巻き込む状況になったら、それもまた問題です」
「客に提供する食事に動物は近づけてはいけないと、誰でも理解しているはずです」
しかし、「障がいを持つアメリカ人法(ADA)」では、飲食店での補助犬の同伴が認められており、この法律は各州や各自治体の規則や保健局の指示より優先される。
ボーレンさんは店側の対応が「ADAに違反している」と伝えたが、オーナーは行動を変えなかった。
ボーレンさんは荷物をまとめながら、証拠を残すために動画をまわすと、「補助犬を理由に店の利用を拒否された」と説明。地元人権委員会に訴えを起こした。
動画には、オーナーがボーレンさんに「すぐに店を出てください」と訴える様子が映っている。
ボーレンさんは飲食店への罰金確定後、声明を発表した。
「人権委員会が私たち障がい者の権利を守ってくれたことに、心から感謝しています」
「私たちは、尊厳と敬意ある対応を受けるに値します。今回の決定は、そのことを認めてくれました」
「この出来事をきっかけに、補助犬が日常生活のなかで障がいのある人を支えるために重要な役割をになっていることを、社会に知ってもらえるとうれしいです」
オーナーには、30日間の不服を申し立てる猶予が与えている。
なお同飲食店は、この一件があった約2年後の2025年4月、カナダのトロント出身のシーン・ソホールさんが購入し、オーナーの座を引き継いでいる。
ソホールさんはフェイスブックに声明文を投稿。事業引継ぎの際に、今回の件について説明を受けていなかったことを明かし、前任者の行動は「私たちの理念や運営方針を反映するものではない」と明言した。
今後は、「補助犬を含むすべてのお客様を歓迎し、誰も差別されることなく尊重される所持の時間を提供する」としている。

日本でも、補助犬に対する理解の課題が残っている。
認定NPO法人「全国盲導犬施設連合会」がおこなった「盲導犬受け入れ全国調査(2025)」によると、回答者のうち48%が盲導犬を理由に、飲食店や公共交通機関などの利用を断られた経験があると答えた。
理由としては「動物や犬はダメ」が61.2%ともっとも多く、続いて「犬アレルギーや犬嫌いの人など他の人に迷惑がかかる」「犬を店の外に待たせる、外の席でなどの条件をつけられた」が上位に入った。
厚生労働省は補助犬ユーザーに対して、飲食店が安心して補助犬を受け入れられるよう、定期的なシャンプーや日々の手入れを呼びかけている。
また飲食店に対して、「補助犬ユーザー受け入れガイドブック:飲食店編」で、ケースごとに推奨される対応や実例を紹介している。