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ブラックフライデー
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AIによって奪われる「新人の仕事」 生成AIの普及とセットでよく語られるのが、「雇用の喪失」だ。世界経済フォーラムが発表した「2025年 雇用の未来リポート」によると、雇用主の40%が、生成AIによる自動化が可能な業種においては、従業員を削減する見込みだと回答している。 また、報告書の作成やデータ入力など、いわゆる初級職の仕事を生成AIが担うようになったことで、若手社員が職場で経験を積む機会が失われつつあると、メディア「カンバセーション」は指摘している。 すでに、米国では新卒者の失業率が全体の失業率を上回ったという調査報告がある。
台湾有事についての高市早苗首相の答弁を機にした日中の関係悪化の波紋は、日ごとに大きさを増して世界に広がっている。このタイミングでの発言は国益にかなうのか──。保守派や高市首相の支持者からも、そんな声が漏れ出る。そうした意見は日本だけではない。英紙「フィナンシャル・タイムズ」は21日、高市首相の率直すぎた答弁と中国の姿勢を批判する社説を掲載した。 中国と日本の無駄な論争 中国のスタンダードである「戦狼外交」だったとしても、その言葉は行き過ぎていた。 「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」 今月初め、大阪の中国総領事・薛剣はSNSへ上記一文などを投稿した。この言葉は、「武力攻撃が発生したら、これは存立危機事態にあたる可能性が高い」と高市早苗首相が示唆したことに向けられたものだ。投稿はのちに削除されたものの、中国政府の憤慨はなおも強さを増し、中国人の渡航を制限する
1974年に日本人写真家6人が東京で立ち上げた「ワークショップ写真学校」に象徴される、日本の写真界の転換期に関する研究で、2024年度「渋沢・クローデル賞」(フランス側)を受賞したエリーズ・ヴォワイヨに、受賞記念講演会があった日仏会館で聞いた。 ──日本に関心を持ったきっかけは? 私はフランスの西部にあるケルローという、家が20軒あるかないかくらいの小さな村で生まれ育ちました。隣の隣の家は農家で、牛も豚も育てていました。いちばん近い町はゲランドで、塩の産地として有名です。 日本に関心を持ったきっかけは、ありきたりですがアニメと漫画でした。いまは漫画もあまり読まなくなりましたが、当時は好きでしたね。 都会に憧れ、大学は絶対にパリに行きたいと思っていました。18歳で、パリのエコール・デュ・ルーブルに入りました。そこでは美術史を学び、そのうちに美術史のなかでも写真に興味を持ちはじめ、写真研究のゼ
ビル・ゲイツでさえ、環境について書かれた「楽観的な」この本には驚いたと明かしている。『これからの地球のつくり方:データで導く「7つの視点」』(早川書房)でハナ・リッチー(32)は、既存の思想よりも数字を重視した「合理的なエコロジー」を、説得力を持って主張している。 英オックスフォード大学の研究者であり、世界の生活環境の変化を可視化するサイト「Our World in Data」の副編集長兼科学普及責任者も務める彼女は、巷に溢れかえる破滅的言説とは距離を置き、より現実的な視点で問題を捉えることを勧める。「問題」には、地球温暖化はもちろん、食糧問題、森林破壊、生物多様性の消滅、プラスチック汚染なども含まれる。 仏「レクスプレス」誌のインタビューで、リッチーは自らの楽観主義の理由を説明し、人々が統計学的な知識の欠如によって、どれだけ些細な行動に振り回されているかを解き明かす。たとえば、ビニール袋
「今年に入ってから日本の治安が悪化し、日本で中国人が襲われる事件が多発し、未解決のものもある」 「日本の指導者が露骨な挑発をおこない、在日中国人の身体と生命の安全に重大なリスクをもたらしている」 11月14日、中国外務省は高市首相が国会でおこなった台湾有事への答弁を理由に、上記内容で中国国民に日本への渡航自粛をよびかけた。これらの内容の真偽については議論の余地があるにせよ、日中関係の劇的悪化が関連産業に打撃をもたらすだけでなく、周辺海域の地政学リスクを急激に引き上げることは間違いなさそうだ。 英紙「フィナンシャル・タイムズ」はこの問題を「5年前に安倍晋三元首相が同様の発言をして以来最悪となる、日中関係悪化のひとつ」とし、世界的に注目されてきた訪日インバウンド市場への影響や中国市場で需要の高い日本株の急落などを伝えた。 同紙が引き合いにしているのは、安倍元首相が退任後に台湾のシンポジウムで述
進む大型化 近年、欧州の新車はますます大型化が進んでいる。独紙「フランクフルター・アルゲマイネ」によると、ドイツでの小型車の販売台数は2014年から2024年にかけて約27万8000台から約8万台に急落している。 この間、フォード「Ka」、オペル「アダム」、フォルクスワーゲン「up!」など、代表的な小型車が軒並み廃番となった。 小型車は単に「売れなくなった」だけなのか──フランクフルター・アルゲマイネは、そう単純ではないと見ている。いわゆる「街乗り」しかしないドライバーは欧州にも多いし、欧州の街路は狭い。小型車の需要はあるはずだ。同紙は、欧州の自動車の規格が新車の大型化を促進していると指摘している。 小型車に不利な規制 現在の欧州の車両の分類には、重量が450キログラムまでのカテゴリー(主に屋根付きバイクに近いミニカーが想定され、型式承認に衝突試験などが義務ではない)の上には、重量3.5ト
経済格差や気候変動など、資本主義がもたらした弊害は大きい。 それらの問題は資本主義の修正によって解決できるのか。それとも、根本的なシステム変更が求められるのか。何より、「いま資本主義に囚われている私たち」にできることは何なのか。 作家の四角大輔と、『人新世の「資本論」』を著した斎藤幸平が考える、「資本主義と距離を置くこと」の大切さとは──。 『人新世の「資本論」』以降の変化 四角大輔 僕はこれまで、行き過ぎた資本主義が諸悪の根源だと思い、生きてきました。 『人新世の「資本論」』では、資本主義の根本的な問題と、カール・マルクスが目指していた社会像を学びました。 彼が提唱した、本来のコミュニズムは人道的かつ合理的で、これまで刷り込まれていた暴力的なものとはかけ離れていることを知りました。
アップルのティム・クック(65)CEOが来年にも退任する見通しで、すでに後任人事の準備が進められているという。英紙「フィナンシャル・タイムズ」が11月15日、同社の内部事情に詳しい関係者らの話として報じた。 同紙によると、後継者として最有力視されているのは、現在アップルでハードウェアエンジニアリング担当上級副社長を務めるジョン・ターナスだ。 いったいどんな人物なのか?
小説、映画、漫画にアニメ……私たちはいつも物語に囲まれながら暮らしている。生活に彩りを与えてくれるこれらは、どうして人の心を惹きつけてやまないのだろうか。物語そのものの構造を読み解き、設計図の一部を垣間見てみよう。 クーリエ・ジャポンの「今月の本棚」で11月に推薦された『物語論 基礎と応用』(橋本陽介)から、一部抜粋して紹介する。 プレミアム会員にご登録いただくと、クーリエ・ジャポンの「今月の本棚」コーナーで、著名人の推薦する書籍を毎月三冊、読み放題でお楽しみいただけます。この記事は、今月推薦された書籍の抜粋記事です。 物語の大枠は… 最初に取り上げるのは、『シン・ゴジラ』である。ゴジラは1954年に第一作が公開されて以来、シリーズものとして作られ続けているが、そのうちの一作として2016年に公開された。多くの観客に受け入れられたとおり、エンターテインメント作品として良質の作品だと思うが、
かつてない繁栄の時代を迎えつつあるはずの世界はいま、国家間の利己主義やポピュリズムの拡大によって自ら崩壊の道を歩みはじめている──フランスの経済学者で思想家、「欧州最高の知性」と称されるジャック・アタリが警鐘を鳴らす。 歴史から学ぶべき「3つの教訓」 どの時代の人々も自分たちは前例のない課題に直面していると考えがちだ。だが何度も繰り返されてきた同じパターンや私欲が、文明を弱体化させて滅ぼしてきたこともあれば、逆にそれを強めて繁栄へと導いたこともある。 過去から学ぶには、歴史における対称性や共鳴を読み取らなければならない。 たとえば、長い歴史のなかで繰り返されてきた大国の興亡は、いくつかの基本的な教訓を示している。第一の教訓は、覇権国家が2つの競合国と対峙したとき、その覇権国との紛争に突入しなかった競合国こそが、最終的に勝利を収めるというものだ。
こんにちは。編集長の南です。クーリエ・ジャポンは本日11月17日に創刊20周年を迎えることができました。これも日頃から支えてくださっている読者の皆様のおかげです。編集部を代表して、心より感謝申し上げます。 20年という年月はとても長いものですが、じつは私は創刊の約半年後に編集部に加わって以来、ずっとクーリエ・ジャポンの編集をしてきました。創刊の3年後に生まれた娘は、もう高校2年生。奇しくも娘の誕生日も11月17日で、誕生日を祝うたびにクーリエも創刊◯周年の数字を重ねてきて、ついに20になりました。 新聞の国際面はあまり読まれないなどと言われますが、そんななか、国際ニュースに特化したクーリエ・ジャポンを購読してくださっている皆さんには感謝しかありません。 ときどき、編集部主催のイベントなどで読者に直接お会いしますが、お話をお聞きすると「視野を広げてくれる」ところにクーリエの価値を感じていると
南仏の島で、裸で過ごすことの心地良さを覚えた女性米国人ライターが、毎年訪れるというルヴァン島の魅力を紹介。衣服の着脱自由なポイントも多くあるという同島は、「ナチュリスト」初心者にもうってつけの場所かもしれない。 屈曲する崖沿いにうねうねと続くトレイルコースの左手に、地中海の波がゴツゴツした岩場を取り巻いて渦を巻き、右手にはお花畑が広がる。 フランス全土の海岸線の4分の1には、かつて密輸を取り締まる税官吏たちがパトロールするために使用した「税官吏の道」が通じている。ここも同じ歴史的な歩道の一部なのだが、ひとつだけ違う点がある。それは、一糸まとわぬ姿で歩いてもよいことだ。 南仏イエール沖に浮かぶルヴァン島のヘリオポリス地区には、島唯一のナチュリストコミュニティがある。野趣に富む地上のエデンは93年前から、自由な精神を尊び、自然を愛する本物志向の人々を惹きつけてきた。 ここを訪れるたびにいつも目
Text by Valdemar Brimnes Ingemann Johansen and Christoffer Clemmensen 体重の減量はなぜこんなに難しいのか。そこには、生物学的にはっきりした理由があった。デンマークの医学者たちがわかりやすく解説し、根本的な解決策を提唱する。 この数十年、体重の減量は意志の問題だと言われてきた。食べる量を減らし、もっと動けばいいのだと──。だが、実際はそうでないことが、現代科学によって証明されつつある。 詳しい話に入る前に、まずは数十万年前にさかのぼり、われわれの祖先である原始人について調べてみよう。というのも、われわれがいま減量に苦労しているのは、多分にそうした先人のせいと言えるからだ。最終的には、自分の両親まで責めることになるかもしれない。 原始人にとって、体脂肪は生き死にを左右するものだった。少なすぎれば飢え死にしてしまうし、多すぎれ
京都府宇治市にある老舗の日本茶専門店・中村藤吉本店の前には、開店の1時間以上前から長蛇の列ができていた。 開店後に客が買えるのは、小さなブリキ缶に詰められた粉末の抹茶1缶だけだ。 客の国籍は、米国、タイ、オランダ、中国、ギリシャ、アルゼンチンとさまざま。なかにはお目当ての一品を入手するため、宇治に数日間滞在している熱心なファンもいる。 “抹茶バブル”で日本茶の価格が高騰 宇治は京都府南部の風光明媚な都市で、伝統的な茶の焙煎方法と数百年続く茶陶で知られる。この街にある日本茶の店はどこも抹茶が品薄で、開店から1時間と経たないうちにすべて消えていく。まるで、世界的な抹茶ブームの縮図のような光景だ。 静岡県で茶園を営む片平次郎は、世界中の商社やカフェ、小売業者から、うまみ成分に富む粉末抹茶を求める問い合わせがひっきりなしに入ると話す。 「アフリカのベナンからの問い合わせもありました。『ベナンってど
アフリカ生まれのインド系イスラム教徒の34歳。何もかもが異例の新ニューヨーク市長ゾーラン・マムダニは、ユニークな経歴と生活に即した政策で支持を集め、市長選で劇的勝利を果たした。イカれた共産主義者、左派の新星、希望の象徴──。さまざまな評価を併せ持つマムダニの人物像と選挙戦術に、アメリカを含む各国関係者から注目が集まっている。 「イカれた共産主義者」 「アフリカに帰れ」 侮辱を追い風に 「それいけマルクス、ゾーよ行け!」 (ゾーはマムダニの愛称) 当初は無名だった移民の若者が破竹の勢いで現職らを追いやった快進撃は、反対派からも大きな注目を浴びた。ニューヨークの保守系タブロイド紙「ニューヨーク・ポスト」は11月5日付の紙面で、ニューヨーク市長に当選したマムダニが共産主義や旧ソ連を表す鎌と槌を持って笑う風刺イラストを一面に掲載した。
国際的なベストセラーの歴史家と、ノーベル平和賞受賞者であるジャーナリストと、元政治家が席を共にし、世界の現状と、世界がどこに向かおうとしているかを議論すると、どうなるか──。 ユヴァル・ノア・ハラリは中世史と軍事史が専門のイスラエルの歴史家で、人類の歴史を俯瞰する研究で最もよく知られる。著書には『サピエンス全史』、『ホモ・デウス』、そして最新作の『NEXUS 情報の人類史』がある。 マリア・レッサはノーベル平和賞の共同受賞者で、ニュースサイト「ラップラー」を創設したフィリピンと米国の二重国籍のジャーナリストだ。 ローリー・スチュワートは保守党の下院議員を務めたこともある英国の学者で、現在はイェール大学で国際関係を教えている。ポッドキャスト「ザ・レスト・イズ・ポリティクス」のライター兼共同ホストでもある。 鼎談の内容はAIの台頭から民主主義の危機、ドナルド・トランプ米大統領とウラジーミル・プ
「扱いきれないテクノロジー」の影響 ハラリ:いま起きていることで新しいのは、現在の私たちは人間をハックして、その内面の葛藤を操れるテクノロジーを持っているという事実です。これは中世どころか20世紀にも不可能だったことです。 この技術を使う大企業や人々は、前例のない方法で人の欲望や思考を解読し、人を操作できます。18〜19世紀に構築された自由民主主義は、それにどう対処すればいいか本当にわからないのです。 スチュワート:さらにテクノロジーが私たちに影を投げかけはじめる可能性もあります。「文明」といえば、これまでは偉人や模範となる人物、英雄に関連づけられることが多かったものです。 けれども、「英雄」とは何でしょう。人間の限界のハードルを上げた人物ではないでしょうか。私たちは、人間とは科学や詩や演劇などで、他の動物にはできないことができる、素晴らしい種だと信じています。 汎用人工知能(AGI)のリ
三島由紀夫の生涯を描いた映画『MISHIMA』は海外で高い評価を得ながらも、日本ではなぜか公開されないままだった。40年の時を経て、今年の東京国際映画祭で上映された本作の製作の裏側を、ポール・シュナイダー監督が米紙「ニューヨーク・タイムズ」に語っている。 ようやく日本へ 『タクシードライバー』(1976)の脚本などで知られる米国の映画監督ポール・シュレイダーは、1984年に東京で映画『MISHIMA』(原題は『Mishima: A life in Four Chapters』)の撮影を始めたばかりの頃、現場で防刃ベストを着用していたことを覚えている。 日本の超国家主義的な右翼たちが、この映画の製作を非難していたからだ。三島由紀夫について、「天皇の神聖な権威を回復しようとして失敗した殉教者」と捉えて崇拝していた彼らは、米国人が三島の生涯を映画化しようとしていることに激怒していた。 シュレイダ
Photo: Christian Kaden, Satori-Nihon.de / Getty Images ニューヨークからソウル、モスクワまで、TikTok世代から著名パティシエ、ピエール・エルメまで……。誰もが抹茶に魅了されている。世界中の流行りのカフェのメニューに、抹茶ラテはもはや欠かせない存在になった。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、米スターバックスは2025年第1四半期、前年同期比40%増の抹茶製品の売り上げを計上した。仏誌「レクスプレス」は、この「緑色の黄金」への渇望がフランスでも高まりを見せていることを伝える。仏紅茶専門店「パレ・デ・テ」の創業者で社長のフランソワ=グザビエ・デルマは同誌の取材に、この3年間で同社の抹茶の売り上げは年間60%増加しており、毎年品切れが起こっていると話す。 一方でブームの発端でもある日本は、この爆発的な需要の高まりについていけていない
カナダ最東端のニューファンドランド島に、念願叶って初上陸した。 島の総面積は約11万1000平方キロで、北海道(約8万3000平方キロ)より広い。 まずはニューファンド・ラブラドール州の州都セント・ジョンズを観光するのかと思いきや、われわれ一行は州都から車で3時間半ほどかけて、ボナビスタ半島に向かった。初めての北海道旅行で札幌をすっ飛ばし、先に釧路に行くようなものだろうか。 ボナビスタとは、スペイン語みたいな響きだと思っていたら、惜しい推測だった。 「オー・ボーノ・ビスタ!(おお、良き眺めなり!)」 イタリア人の探検家ジョバンニ・カボートが、1497年に北米大陸を初めて目にしたとき、そう感嘆したというのが由来だそうな。
起きている時間の半分は「画面の前」 子供がスマホばっかり触っている! この悩みは日本の親たちだけのものではない。だが、高齢化した親世代のスマホ依存のほうが問題だと、英誌「エコノミスト」は指摘する。 事実、テレビに親しんできた世代が、スマホやタブレットも取り入れた結果、起きている時間の半分以上はスクリーン漬けになっていると同誌は書く。 もちろん、高齢の人々がスマホやタブレットを使いこなせるようになるメリットも大きい。家にいながら友人や孫と交流できたり、Zoomで読書会に参加したり、診察を受けたりもできる。オフラインよりも充実した「つながる老後」があることは大きな恩恵だ。 また、彼らは10代の子供たちのように、SNSに没入し、極端な思想や見た目への強迫観念を抱いてしまうリスクは少ない。何より、スマホにのめり込むことで成績が下がってしまうという心配がない。 だが、家庭や学校でスマホの利用を制限さ
シニア男性たちの陰謀論 サステナビリティの世界にも、「欧州の動きは単なる陰謀だ」「バイオダイバーシティに力を入れるのは、TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:企業が、環境変化や生物多様性に関する情報を開示するための国際的枠組み)が流行っているからだ」「日本には脱硝技術があるので、窒素混焼は問題ない」「脱炭素化を進めるために原子力は必須だ」といった、“すでに合意された前提”のようなものが、業界内で疑いなく共有されている場面を、私は何度も目にしてきました。 しかし、こうした神話の多くは、論理やエビデンスによって裏打ちされたものではなく、「同じ共同体の中の空気」によって醸成されているのです。 私はこれらの、同調圧力に満ちた思考を「ボーイズ・クラブの神話」と、勝手に名づけています。さまざまな経済団体に属するシニア男性たちが、閉
2025年10月28日におこなわれた日米首脳会談の後、トランプ米大統領(左)と高市首相は対米80兆円規模の投資に関する文書に署名した Photo: Kiyoshi Ota / POOL/Anadolu via Getty Images 2025年7月、日米関税交渉が合意に達した際、日本側が約束した5500億ドル(約80兆円)の対米投資の詳細が少しずつ明らかになりはじめた。 日米両政府は10月28日、80兆円の投融資の対象になる21案件を発表。エネルギーやAI(人工知能)、重要鉱物、製造業などの分野があり、三菱重工業やソフトバンクグループなど20社以上が関心を寄せていると、「ロイター通信」が報じている。 米国が関税引き下げの“対価”として巨額投資の約束を取り付けたのは、日本だけではない。欧州連合(EU)は今後3年で6000億ドル(90兆円)、韓国は今後10年で3500億ドル(52兆円)を投資
永遠のテーマ「朝型・夜型」論争に決着をつけるときがきた。仕事のパフォーマンスが向上し、健康面でもメリットがあるのはどっちなのか? 夜型人間が朝型になったり、その反対は可能なのか? 専門家の見解と科学的エビデンスを探ってみた。 早起きCEOと夜中に創作する天才 「早起きは三文の徳」という諺がある。英語でこれにあたるのは、「The early bird gets the worm」。 文字通りに読むと、「早起きの鳥が虫を捕まえる」。しかし、虫なんて誰が欲しがるのだろう? 少なくとも私ではない。 人生の大半を夜型人間と自覚して生きてきた私は、ベッドから這い出るのをできる限り遅らせ、全力で一日をスタートするというより、仕方なく流れに身を任せるという具合だった。 米国の労働文化は夜型人間に最適とは言えない。むしろ午前4時に起床し、私たち庶民がスヌーズ機能で二度寝している間にマラソンをする企業CEOた
賛否が分かれる「学校の掃除」 ドイツのシュヴェービッシュ・グミュント市の市長が2025年10月、学校で生徒による掃除の時間を設けることを提案し、世論を二分する騒動に発展した。 日本では、授業や給食と並んで学校生活のルーティンとなっている「掃除の時間」。しかし、世界のどこでもそれが当たり前というわけではない。欧米の多くの学校では、生徒たちが自身で学校の掃除をすることはなく、清掃業者に任せられている。 日本の学校の「掃除の時間」を視察した海外の人の反応は両極端だ。子供たちの責任感を育み、学び舎の秩序が保たれると好意的に評価する声もある一方で、生徒に掃除をさせるなどありえないという声もある。 前者は、「学校は教科の学習だけでなく、社会性やコミュニティの一員としての意識を育む場所だ」という考えに基づいており、後者は「学校はあくまで学習の場であり、子供たちが学習に集中できる環境を作るのは大人の責任だ
結婚や出産をしないことを選んで生きてきて、40代に入った筆者。韓国系米国人である彼女は、ルーツである韓国へ両親と共に向かい、もう面倒を見きれなくなった先祖の墓じまいをする。 この生き方は正しかったのか、この先何を残すべきなのか──中年と高齢者、そして亡くなった人の三世代しかいない墓場を見て、彼女は人生を振り返る。 見送る若者のいない墓場 数年前、韓国に住む母の兄が「両親の墓を撤去する」と宣言した。このおじとその妻が、別々に埋葬されている祖父母の墓守を務めていたのだ。 彼らは毎年墓参りに数回訪れ(終わりのない渋滞に巻き込まれながら)、自宅で仏事の準備をしてきた(終わりのない料理と掃除もついてくる)。自分の子供たちがこういった儀式を引き継ぐ可能性は低いため、60代半ばの彼らは手を引くことを望んだのである。 再び別れを告げるために祖父母の棺を掘り起こし、その遺骨を火葬する日程を彼らは決めた。母は
今年も駆け足でやってくるホリデーシーズン。慌ただしく過ごしながらも、大切な人へのクリスマスプレゼントや、1年間頑張った自分へのご褒美を考えるのが楽しい季節だ。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、2025年版「ホリデー・ギフトガイド」を掲載。同紙記者や編集者、そして同社所有の製品レビューサイト「ワイヤーカッター」のスタッフが厳選した、全325品のおすすめの「贈り物」を取り上げている。 クーリエ・ジャポンはそのなかから、日本生まれの製品をピックアップ。海外へのお土産にしても喜ばれそうな、10のアイテムを推薦者のコメントとともに紹介する。
なぜ関税を課すべきなのか トランプ流の政治が大波のように押し寄せる昨今、欧州も世界のほかの地域と同じように貿易に関する基本方針を根本から見直さざるをえない状況になっている。 はっきり言おう。欧州は早急に、自由貿易という宗教を信仰するのをやめなければならない。さもなければ、欧州の社会と産業が前例のない惨事に見舞われるリスクがあるのだ。これは地球全体にとっても百害あって一利なしの話である。 トランプは、(対米貿易黒字ばかりに注目する)せせこましいナショナリズムの論理に従って関税を設定しているが、それは本人のその日の気分に大きく左右されるという、かなり混沌としたものだった。
米国の飽くなきアボカド需要に応えるべく、メキシコはアボカド生産を拡大させてきた。しかし、それを可能にしたのは長年にわたる森林破壊だった。 消費者からの圧力を追い風に、衛星画像を活用して森林破壊を食い止める新たなプログラムがスタートしているが、麻薬カルテルや汚職も絡んでおり、関係者の足並みはそろっていない。「ニューヨーク・タイムズ」が、変化に揺れる食料生産の現場を訪ねた。 メキシコの主要なアボカド生産地で暮らす先住民リーダーのフアン・ガブリエル・ペドラサは、森林保護を推し進める新たな計画の噂を耳にしたとき、最悪の事態を懸念して、こんな考えが頭をよぎった。 「自分たちをひどい目に遭わせようとしている」 噂が本当なら、ペドラサが暮らす町のアボカド農園は市場から締め出される可能性があり、もしそうなれば、住民は壊滅的な損失を被る。1000世帯を超える家庭が貧困から脱却できたのはアボカドのおかげだった
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