米テキサス州サン・アントニオ水族館を訪れた6歳の男児がタコの水槽に手を入れたあと、腕に数十カ所のあざを負った。
男児の母親がTikTokでことの詳細を明かし、注目を集めている。
動画を投稿したのは、ブリトニー・タリンさん。
タリンさんによると、親子は2021年ごろから頻繁にサン・アントニオ水族館を訪れていたという。動画内でタリンさんは、水族館の名前は伏せている。
水族館はタコの飼育を始めた3年前から、来館者がタコに触れることを許可しており、「今までは問題がなかった」とタリンさんは主張する。
息子の夏休み中に、久しぶりに友人たちと水族館を訪れると、タコは巨大に成長していたという。
その成長ぶりに驚いたタリンさんは、スタッフに「これは同じタコですか」と尋ね、「そうです」と返答があったと、振り返る。
タリンさんいわく、ほかの来館者がタコに触れていたのを見て、息子にも触らせた。
いつもは動物に対して落ち着いて接する息子が「タコが離してくれない」と訴えたため、タリンさんは息子を抱き上げたが、それでもタコは離れなかったという。
水槽タンクから出てこようとする巨大タコに、タリンさんと友人はパニックになった。
タコを傷つけないように離そうとしたものの、息子の腕にアザができていることに気づき、周りに助けを求めたという。
周囲に飼育員はおらず、しばらくすると、男性スタッフが「今日はタコが遊びたい気分なんだね」と言いながら、焦る様子もなく助けに来たという。それでもタコは離れようとせず、さらに2人のスタッフが駆けつけた。
最終的には飼育員が3人がかりで引き離したという。全員が落ち着いて対処したというが、息子の腕には数十箇所のアザが残った。
タリンさんは動画内で、ケガの写真も公開している。一方で、息子が今回の出来事を前向きに受け止め、「とてもクールな出来事だった」と話していると明かした。
また、動画を投稿した理由については、水族館を批判するつもりはなく、このタコの行動について詳しい専門家の見解を募るためだったと説明した。
後日、タリンさんは水族館宛てにメールを送り、今回の出来事を知らせたものの、返信はなかったという。
7月15日に投稿された動画は、これまでにTikTokで400万回以上再生され、注目を集めた。
タリンさんは水族館の名前は伏せていたものの、水族館側は後日、公式TikTokでタリンさんの動画に関連付けた動画を投稿。タコの吸盤についての豆知識をまとめた。
動画内で、水族館側は「タコの吸盤によりアザができることがあるが問題ない」と説明し、「タコは人間に危害を加えるつもりはないし」「これを“タコからのキス”と呼んでいる」と続けた。
このタコが環境下にストレスを感じているわけでも、助けを求めているわけでもないとし、「タコのような動物には通常範囲内の行動」だと続けた。
その後、水族館は声明を発表。KSATの取材に対し、タリンさんの主張に誤りがあると説明した。
「(タリンさんは)タコの展示の柵を超えて、スタッフの監督がないにも関わらず、子どもと触らせた」
「男児は落ち着いており、スタッフは医療支援を提供したが、母親が辞退した。事件報告書に母親が署名している」
タリンさんは、水族館側が主張する事実はないと説明している。
米国農務省(USDA)は、これまでに同水族館に対して、複数の違反指摘を行っている。2023年には、ヤマアラシのメスが逃げ出してオスの囲いに入り込み、オスのヤマアラシのとげに刺されて死ぬ事故が発生した。

タリンさんは、水族館にいる動物たちにとって「適切な環境」を求めている。
タリンさんは、8月10日に再び動画を投稿。タリンさんの動画が「多くの人にとってどうぶつの権利について考えるきっかけとなった」と語った。
「メディアに出演した目的は、“水族館にいる動物たちが適切な環境で、動物愛護管理法のもとで保護されるべきだ”という思いを訴えたかったからです」
「しかし、私たちのメッセージは切り取られ、“タコが親子を襲った”という件だけが報道されました」
「この出来事を通して、タコは動物愛護管理法の対象ではないことを知りました。私たち親子が誹謗中傷を受けることもありますが、あのタコのためにも、私たちは変わらない目的を持って行動していきます」