戦後のテレビ草創期から活躍し、ユニセフ親善大使としても活動している黒柳徹子さん。 俳優や音楽家、写真家、研究者など、多彩な人々と交流を重ねてきた黒柳さんは、作家たちとの出会いからも大きな影響を受けてきた。 そのひとりが、文豪・森鴎外の娘であり、耽美な世界観を持つ作家・森茉莉さん。出会ったのは、森さんが80歳を迎えた頃だった。 古びたアパートの一室での一夜や、深夜の長電話の数々。黒柳さんにとって、森さんとの時間は豊かで忘れがたいひとときだったという。 今回は、黒柳さんのエッセイ集『トットあした』(新潮社)から、この稀有な女性との出会いの記憶をお届けする。 黒柳徹子「森茉莉さんのこと――『トットあした』より」 森茉莉さんの小説を、私に激賞したのは三島由紀夫さんだった。 六本木の「鮨長」は三島さんも行きつけにしていて、時おり、顔を合わせた。三島さんの書かれた「熱帯樹」という芝居を観に行ったら、ロ

