
データ活用が事業成長の生命線となる今、データエンジニアに求められる役割は急速に高度化しています。しかし、現場では「なぜそのデータが必要なのか」という背景を知らされないまま、ただSQLを書くだけの“作業者”になってしまっているエンジニアも少なくありません。
今回フォーカスするのは、リクルートの決済サービス『Airペイ』が、2025年3月に追加した新機能『Airペイ オンライン決済(以下、オンライン決済)』に向けた、分析用データマートの開発プロジェクト。
このプロジェクトでは、リクルートが設計や要件定義を担い、リクルートグループの一員であるニジボックスが実装を担いました。両社のエンジニアは既存サービスとの整合を図りながら、モダンなシステム開発に則った技術スタックおよび手法を導入して、実装に漕ぎ着けました。
リクルートとニジボックス、組織の枠を超えて「ワンチーム」で課題に挑んだBIエンジニアたちの対談から、大規模プロダクトの開発を推進するための極意と、ニジボックスで得られるキャリアの可能性を探ります。
ニジボックスの「データエンジニア育成プログラム」については、以前の記事で紹介しています。ぜひこちらの記事もご覧ください。
※この記事は株式会社ニジボックスによるタイアップ広告です。
- 大規模データマートの構築を支えた体制とフロー
- 「誰もが」データを分析・モニタリングできるようにするために。ビジネスサイドとの折衝エピソード
- データ開発にもシステム開発のエッセンスを。ディメンショナルモデリングという手法
- わざわざ相談しなくても勝手に疑問が解消される。心理的安全性の高いチームコミュニケーション
- エンジニアはいつ、どんな時に成長するのか。ニジボックスが考えるデータエンジニアのキャリアパス
大規模データマートの構築を支えた体制とフロー
── 今回、リクルートの決済サービス「Airペイ」へ追加された新機能「オンライン決済」(2025年3月リリース)のために、データ分析基盤となるデータマートを構築されたと伺いました。まず、そのプロジェクトの背景について教えてください。
岩井 プロジェクトのゴールは、Airペイに関わるメンバーが誰でもオンライン決済のデータを分析し、モニタリングできる基盤を作ることでした。

岩井 晋太郎(いわい・しんたろう)
リクルート データ推進室 SaaSデータマネジメントグループ
本プロジェクトにおいては、モデル設計やプロジェクトマネジメントを担当。
── プロジェクトのフローや体制はどのようなものだったのでしょうか。
岩井 今回は2つのフェーズに分けて開発を進めました。
最初のフェーズは、オンライン決済のリリースに合わせて、最低限のデータ分析が可能なデータマートを開発するというものでした。このフェーズでは、私と村上さんを含む4人のエンジニアで対応しました。
次のフェーズで、先に構築したデータマートをディメンショナルモデリングという手法を使って、より汎用的な分析に耐えられるようにリファクタリングしました。このフェーズは主に私と村上さんの2人で担当しました。

── 皆さんの役割は、それぞれどういうものだったのでしょうか。
岩井 私は今回のプロジェクトで、プロジェクトマネージャーに近い役割でした。プロジェクト管理の側面ではスケジューリングやステークホルダーとの折衝、開発の側面ではデータマートのモデル設計などを担当しました。
実装に関しては、村上さんに担っていただくという体制ですね。

村上 広樹(むらかみ・ひろき)
ニジボックス データエンジニアリング室BIエンジニアリング2グループ
本プロジェクトにおいては実装部分を担当。
林田 私は、村上さんの上長として基本的にバックアップに回りつつ、メインは村上さんと岩井さんで連携しながら進めていただいた形です。

林田 祐輝(はやしだ・ゆうき)
ニジボックス データエンジニアリング室 BIエンジニアリング2グループ マネジャー
村上さんのマネジャーとして、本プロジェクトのバックアップを担当。
「誰もが」データを分析・モニタリングできるようにするために。ビジネスサイドとの折衝エピソード
── 既存のAirペイのデータ環境が存在する中、オンライン決済のためにデータマートを新設したのはなぜでしょう。
岩井 たしかに、Airペイにもサービス規模にふさわしいデータ環境があります。ただし、Airペイ自体、歴史の長いサービス(2015年11月にサービスリリース)で、Airペイのデータマートには長年の運用で複雑化した処理もあったため、現在はその解消作業を進めているところです。
あとは、決済方法や運営体制の違いによるところも大きいです。
── なるほど。順にご説明いただけますか。
岩井 オンライン決済は、Airペイの機能の1つで、加盟店様ならどなたでも使えるものですが、両者は決済までの道筋が異なります。
対面決済のAirペイと違い、オンライン決済には「支払いリンク発行→送信→ID登録→決済」という決済までのファネルが存在します。それに伴い、取得するデータの量やバリエーションも変わってくるわけです。
また、社内の都合ではありますが、担当するチームも分かれています。こうした事情から、新たにデータマートを作った方がいいだろうと。
── データ分析基盤として、どうしてデータマートを構築したのでしょうか。データレイクだけでは足りなかったのですか。
岩井 ローデータを扱うには、高度なドメイン知識やデータの加工技術が必要となるからです。特に、サービスの成長戦略を設計するプロダクトマネージャーなどビジネスサイドのメンバーは、データを活用する機会は多い一方、データ構造やSQL等、専門的な技術知識を我々エンジニアと同様レベルに求めるのは役割分担として本質的ではないですから。
村上 分析する人によって結果が揺らいでしまうリスクを減らす意味も大きいと思っています。複数のデータソースから必要なデータを抽出するには、自分でSQLなどを書かないといけませんが、ちょっとしたロジックの違いや母集団のズレで、弾き出されるデータが微妙に異なってきます。そうなると、誤った意思決定が下される可能性もあります。
── ビジネスサイドで自由にデータを見られるようになることが重要だったと。
岩井 はい。ビジネスサイドから私たちにデータ分析を依頼されることもありますが、そもそも事業やお客さまについての知識・勘所を持っている人がデータを分析できた方が、会社にとってはプラスだと思っているんです。

── そうなると、ビジネスサイドと要件を擦り合わせるのも大変だったのでは。
岩井 Airペイの分析軸がある程度トレースできるといった事情もあり、すり合わせにそこまで時間や労力はかかりませんでした。
ただ、我々が出したいデータとビジネスサイドが参照したいデータに当初「若干の温度差」はあったのかもしれません。主に正確性をどこまで担保するか、という点で。
例えば、加盟店様の利用状況によって「アクティブ」または「非アクティブ」と扱うケースがあります。どちらのケースとして扱うかをビジネスサイドとKPIモニタリングの観点から協議していき、データの定義を行いました。
セキュリティやガバナンスに関わる懸念点がない限り、基本的にビジネスサイドの意向を優先するようにしていますが、エンジニアとして担保したいデータモデル上の厳密さとビジネス活用上の許容範囲のすり合わせを行った良い事例ですね。
データ開発にもシステム開発のエッセンスを。ディメンショナルモデリングという手法
── 今回のデータマート構築で、採用した技術や手法について教えてください。
岩井 最初にお話しした通り、最低限の分析が可能なデータマートを作った後、ディメンショナルモデリングという手法を使って、より汎用的な分析に耐えられるようリファクタリングしました。ディメンショナルモデリングを採用するにあたっては、dbt(data build tool)というツールを使っています。
これまでは内製のジョブ基盤でサービスの成長に伴い巨大化したクエリを回していたのですが、ディメンショナルモデリングやdbtの導入でより開発効率性やメンテナンス性を高めたい意図がありました。
── ディメンショナルモデリングを採用するメリットとは何なのでしょうか。
岩井 平たく言うと、システム開発の「責務の分離」をデータ開発に組み込めることです。
以前のマートは巨大なSQLが一枚岩になっていましたが、ディメンショナルモデリングを採用すると、目指すべきデータの形が「ファクト(データの計測対象)」と「ディメンション(データの計測軸)」に明確に分かれます。
最終的なモデルが明確に分かれているからこそ、そこに至るまでの処理も段階的に切り分けて実装できるんです。dbtを使って、ロジックを一つひとつ積み上げるように開発できるので、テストも書きやすく、どこで何をしているかが一目瞭然になります。「作りやすく、メンテナンスしやすい」基盤にするためには、この考え方が不可欠でした。

村上 ディメンショナルモデリングもdbtも、いわゆるモダンなデータベース構築のための手法やツールなんですよね。
自分はシステム開発の経験が浅かったこともあり、モジュール単位でSQLを書くという感覚に慣れるのには時間がかかったのですが、それでも今回扱えたのはすごく良い経験でした。

── プロジェクトを進める上で、もっとも重視したポイントはどこでしょうか。
岩井 やはり品質の部分ですね。データ環境とは、インフラのように「正しい(誰が使っても正しい状態になる)のが当たり前のもの」。だからこそ、そこは絶対に譲れない部分です。リリースに際しても、データの整合性についてのテストをかなり時間をかけてやっていますし、データに異常がないことを確認するテストもリリースと同時に動かしています。
開発手法自体は新しいものではありますが、品質を高めるためのアプローチは、今回のプロジェクトに限らず我々の組織においては必須です。それは、データ環境や提供するデータ自体をプロダクトだと位置付けているからです。
わざわざ相談しなくても勝手に疑問が解消される。心理的安全性の高いチームコミュニケーション
── リクルートとニジボックスの協業体制について、詳しく教えてください。両社はグループ会社ですが、普段からこのような形でプロジェクトを進めているのでしょうか。
岩井 村上さんは、データマートの開発プロジェクト以前から、Airペイを担当されていて、私とは密に連携を取っていました。他の横断的なプロジェクトにも村上さんに入ってもらっていたりするので、ニジボックスのメンバーの中ではかなり密にコミュニケーションを取っていると思いますね。
── 一般的に、プロジェクトメンバーの所属が違うことでチーム内コミュニケーションに齟齬が生じることもありますが、そうしたことを防ぐために何か工夫していましたか。
岩井 工夫とまでは言えないかもしれませんが、村上さんをはじめとするチームメンバーの発言に対して、スピーディーに反応するよう心がけていました。
あとは、実装にあたっての懸念点や要望を積極的に出してもらえるようお願いしたり。私の設計が100%正しいとは思っていないので。今回も村上さんから「こうした方がいいんじゃないですか」と意見をいただき、その通りに変更したところもあります。
村上 岩井さんはすごく相談しやすいですね。質問にもなっていないような悩みや課題感に対しても、ちゃんと反応してくださって、「考えなくていいよ」と突っぱねられることがないんです。心理的安全性があるというか、相談しやすい雰囲気がすごくあります。

岩井 村上さんはSlackで作業ログや思考プロセスをよくつぶやいてくれるので、詰まってるポイントが可視化されやすいんですよ。そういうのも小まめに拾うようにしています。わざわざ相談してくれなくても、疑問が勝手に上がってきて、私や他のメンバーが拾って、いつの間にか疑問が解決している。そういう状態が理想だなと。
── メンションされたわけでもないのに、村上さんのつぶやきを岩井さんが拾ってくれるという形なんですね。
岩井 はい。村上さんは特にたくさんつぶやいてくれるので助かっています。それはすごく良いことだと思っていて、誰かが拾うというのもそうですし、同じようなところで詰まっている人がいたら、それを参考にしたりもできると思うんです。自分が今何を考えていて、どこに詰まっているかをちゃんと表明できるというのは、素晴らしいことだと思います。
村上 表明しないまま、後になって手戻りが増えてしまったら、それはお互いにとって損ですよね。自分もまだ十分にできているわけではないのですが、それでも論点を出して議論の俎上に上げることは自分のバリューだと思っているんです。
── 林田さんは、マネジメントの立場からそうした環境づくりを意識されていますか。
林田 そうですね。村上さんはギャップを埋めるコミュニケーションが自然に出来ていて素晴らしいのですが、中には人に聞くのが苦手という方もいらっしゃいます。そういう方には、個別にフォローするだけでなく、リクルート側にも受け入れられる準備をお願いするようにしていますね。

あとは基本的なことですが、「プロジェクトが目指す方向」や「プロダクトを使うユーザーのニーズ」などをしっかりヒアリングしたり。
良いアウトプットを出すためにも、どちらかだけが一方的に頑張るのではなく、両者がきちんと心構えをして、向かい合うことが必要だと思っています。
エンジニアはいつ、どんな時に成長するのか。ニジボックスが考えるデータエンジニアのキャリアパス
── 村上さんは、今回のプロジェクトで初めてディメンショナルモデリングとdbtを取り扱われたそうですが、プロジェクトを通じて自身の成長を実感できましたか。
村上 はい、実感しています。新規開発からディメンショナルモデリングでのリファクタリングまで、すべてに通して関われたので、データをどのように持てば使いやすいのか、品質をどうやったら高められるのか、といったところへの意識が強まりました。それが自分にとって大きな収穫ですね。
── 今後、挑戦してみたいことはありますか。
村上 今回設計の大部分は岩井さんが担当されたので、今後ディメンショナルモデリングに取り組む際は、設計も自分で担えるようになりたいです。
あとは、プロジェクトでの学びを周囲に共有することですね。dbtについては、ニジボックスでも扱えるエンジニアを増やしたいと、林田さんがおっしゃっていて、それに向けて今研修の準備もしています。
── 林田さんは、リクルートとのプロジェクトにメンバーをアサインする際、どのようなことを意識されていますか。
林田 そのメンバーの成長機会でしょうか。知らない技術やツールをポジティブに捉え、プロジェクトを純粋に楽しんでくれる村上さんのようなメンバーが新たなプロジェクトにどんどん参加し、未経験の仕事にチャレンジして実績を上げていくのが非常に重要だと思っています。
そもそも、グループ会社としてリクルートと垣根なく協業できる環境があるというのは、スキルやキャリアを成長させる上で大きな強みだと思っています。これからも村上さんのようなスタンスのメンバーを増やしながら、そういう人たちがさらに成長できる機会を作っていきたいですね。
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取材・文:青山祐輔
撮影:小高雅也

