アニメーション映画『君と花火と約束と』が7月17日に公開されました。
真戸香さんによる小説をアニメ化した作品。毎年8月に新潟県長岡市で開催される「長岡まつり大花火大会」を舞台に、高校生の夏目誠(なつめ まこと)と葉山煌(はやま あき)、そして過去からやってきた謎の少女・ハルという3人の人生が交わる青春ラブストーリーです。
BuzzFeed Japanでは本作を手がけた鈴木慧監督に、アニメ化にあたってこだわったポイントや、監督としての今後の展望などについてお話を伺いました。
※インタビュー中、本作の展開に触れる箇所があります。
長岡花火の派手さと凄さをアニメに
――『君と花火と約束と』の原作を読んで、どんな感想を抱きましたか。
今時のピュアな青春群像劇や恋愛模様が描かれている点にまず惹かれつつも、原作者の真戸香さんが大切にされている「儚さ」や「切なさ」をより感じる作品だと思いました。
中でもヒロインの葉山煌は、最初は主人公の夏目誠と対照的で、運動も勉強もできる才色兼備な人物として登場しますが、話が進むにつれて、複雑な家庭の事情や弱い面も見え隠れするようになります。この変化によって、ぐっとキャラクター像が明確になっていく実感があり、とても印象に残りました。
――原作の内容をアニメに落とし込むにあたって、特にこだわったポイントはどこでしょうか。
やはり、物語後半の舞台である「長岡まつり大花火大会」のシーンですね。原作の儚さに寄り添いつつも、花火の色の濃さ、明るく見えた時の華やかさや音など、実際の花火大会のような派手さと凄さをどれだけアニメとして映像に落とし込めるかにこだわりました。
「復興祈願花火フェニックス」など、実際の花火を見ながら制作したので、観客の人に現地で花火を見た時のような感動を届けられると良いなと思います。
また、私が所属しているアンサー・スタジオではキャラクターの柔らかく細やかな動きを描くことを得意としているので、その点にも力を入れました。たとえば、煌が顔を覗き込む仕草や、手の動き、ポニーテールの揺れ方など細部にわたってこだわってもらい、より可愛く、美しく見えるように表現できたかなと思います。
「夜の色」にも注目
――映画化にあたって、原作からの脚色の塩梅で意識したポイントについても伺いたいです。
原作は誠と煌が神社で出会うところから始まりますが、映画ではハルが太平洋戦争末期の「長岡空襲」に巻き込まれるシーンから始まります。ハルを先に登場させることで、その後の煌につながるような位置付けのキャラクターとして、展開を予感させるような導入になっています。
長岡空襲は、実際に戦争で起きた悲しい出来事です。本作は青春映画でありながらも、長岡の人たちが、戦争の追悼や慰霊の想いを込めた花火をずっと大切にしながら繋いでいたという背景も大切にしたいという想いで制作しました。
また、追加要素として葉山家に登場する「ウサギの祠」や「柿の木から飛び立つカッコウ」といった、時にまつわる小ネタを各所にちりばめています。各シーンで、どうしてその表現をしているのか考察しながら見るのもまた面白いポイントだと思います。
――本作を作るにあたり、特に苦心した点はどこでしょうか。
「夜の色」をなるべく実際の夜に近づける表現にチャレンジしました。
アニメの制作では、夜のシーンでも青色が強めの色合いになっていることが多いのですが、本作ではかなり暗めの色合いで表現しています。「花火」がとても重要な要素である本作ですが、夜に明るすぎる色を使うと、花火が背景に溶けてしまう可能性があります。そういった意味で、夜の色を現実に近づける必要があったのです。
特に冒頭では、真っ暗で何も見えないところから徐々に人がいると分かるような明るさになっていく塩梅にしているのですが、この時の暗さのバランス調整が大変でした。
暗さの表現は、劇場で観た時に際立つポイントかと思うので、ぜひその辺りにも注目していただきたいです。
また、キャラクターの表情変化の表現にかなり苦戦しました。例えば、誠がセリフでは優しい言葉を伝えつつも、表情はすこし苦いものになっている、といった描写ですね。
キャラクターどうしの会話が多い作品なので、お互いの心の距離感などを表情でもしっかり伝えられるように「このシーンではもう少し眉を傾けてください」「少し口を開けてください」といった細かなやり取りをかなり重ねて作りました。
隠し要素も楽しめる作品になっている
――本作で映画作品として初の監督を務めて、これまで手掛けてきた仕事との違いや、手ごたえを感じた部分はありましたか。
今回のような映画作品ですと、約90分という限られた時間の中で表現しなければなりません。ひとつの物語を、短い時間の中で観てくださる方に満足してもらえる作品に仕上げる、という点にこれまでとの大きな違いを感じました。
また、長岡空襲もひとつのテーマですので、誠たちの青春群像劇とのバランスに苦労しました。
制作工程は今までと大きく変わらない部分もありましたので、いつも通り丁寧に制作し、自信をもってみなさまにお渡しできたのかなと思います。
――『君と花火と約束と』をこれから観る人に、作中のどんな点に注目してほしいか、監督の一押しポイントを教えてください。
本作は、誠の成長物語でもあります。誠が気弱な青年であったところから、いろいろな人と出会って成長して最終的に煌に辿り着くという、誠の青春群像劇を味わっていただきたいですね。
また、長岡の花火大会では、毎年「復興祈願花火フェニックス」のどこかのタイミングで「青色のフェニックス」の形をした花火が立ち上がり、それに気づいた人は幸せになれるというジンクスがあります。映画の中にもその点をオマージュしたシーンを入れているので、そういった隠し要素的な部分も楽しんでいただけると嬉しいです。
――最後に、アニメ監督として、今後新たに挑戦したいことや、展望について伺えればと思います。
私は「一歩踏み出す勇気」という言葉が好きです。たった一歩だけでも、踏み出すには大きなエネルギーや力が必要だと思います。作品を観てくれた人の背中を押せるような、観たことで「人生の中でいい経験になったな」と思ってもらえるような作品を今後も作っていきたいですね。
アニメーション映画『君と花火と約束と』
公開日:2026年7月17日
監督:鈴木慧
原作:真戸香『君と花火と約束と』(小学館「ガガガ文庫」刊)
キャラクター原案:あかもく
企画プロデュース:梅澤道彦
企画制作:シンエイ動画
アニメーション制作:SynergySP/アンサー・スタジオ
キャスト:佐藤勝利(timelesz)、原菜乃華、高橋李依/横澤夏子 ほか
主題歌:timelesz『消えない花火』(Over The Top)



