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人工知能を使って「経済的平等と生産性を両立させる税制」を模索する試み - GIGAZINE
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人工知能を使って「経済的平等と生産性を両立させる税制」を模索する試み


さまざまな公共サービスや社会保障を支えているのが税金ですが、苦労して稼いだお金が税金として差し引かれることはさみしいもの。そこで、アメリカのクラウドサービス企業であるSalesforceの研究チームが、公平性と生産性を両立させる税制を生み出す「AIエコノミスト」を開発しました。

The AI Economist: Improving Equality and Productivity with AI-Driven Tax Policies
https://blog.einstein.ai/the-ai-economist/

The AI Economist - Salesforce.com
https://www.salesforce.com/company/news-press/stories/2020/4/salesforce-ai-economist/

AI devising a more equitable tax system
https://techxplore.com/news/2020-05-ai-equitable-tax.html


「経済的不平等は世界的に加速しており、経済的な機会や健康、社会福祉に悪影響を及ぼすことから、懸念が高まっています」と研究チームは述べ、税制こそが経済的な不平等を減らす重要なツールだと指摘。しかし、高い税金を課税すれば貧困層への分配が手厚くなって不平等が解消される一方で、税金が高くなりすぎると労働意欲が薄れて生産性が下がるといった問題点もあるため、公平性と生産性を両立する最適な税制を生み出すことは難しいとのこと。

経済学者らは長年にわたって税金の問題について議論してきましたが、現実世界の複雑さをモデル化する経済理論の構築は困難であり、「実際の国家を実験体にして有望そうな税制をいくつか試験する」といったことも不可能です。そこで研究チームは強化学習アルゴリズムを用いてAIを訓練し、社会経済的な目標を達成するのに理想的な税制を生み出すAIエコノミストを開発しました。


古典的な税理論は労働によって収入を得る労働者に焦点を当てており、労働者は労働というコストを支払って金銭的な利益を得ます。また、各労働者は持っている能力に差があるため、能力が低い労働者は同じ時間働いても能力が高い労働者よりも収入が少なくなり、経済的な不平等が発生します。政府は経済的不平等を改善するために課税し、収入の再分配を行おうとするかもしれませんが、税負担が重すぎると労働のコストが金銭的な利益を上回り、生産性の高い労働者が一定以上の労働をしなくなってしまうリスクがあるとのこと。

AIエコノミストは「労働者」と「税制」を再現した強化学習フレームワークを使用して、特定の税制が労働者の行動をどのように変化させるのかを学習しました。2つのフレームワークを使って学習を繰り返すことで、AIエコノミストは労働者の生産性を高く保ちつつ、公平性を損なわない税制を作り出すことができるそうです。


実際にAIエコノミストがどのようにシミュレーションを行ったのかは、以下のムービーを見るとわかります。

Introducing the AI Economist - YouTube


Salesforceが設計したAIフレームワークでは、ゲームのような平たい世界でシミュレーションを行います。


各労働者はフィールド上でさまざまな仕事に従事して収入を得ます。フィールド上に限られた割合で出現する資源を集めたり……


資源の取引を行ったり。


あるいは、資源を使って建物を建てたりして、労働者は収益を得ることができます。


フィールド全体には能力が違うさまざまな労働者が住んでおり、能力が低い労働者は主に資源の収集・販売業に従事します。


より能力が高い労働者は主に卸売業、あるいは建物の建設に従事するとのことで、能力が高い労働者ほど労働時間に対する収入は大きくなるとのこと。


政府は労働者の収入から税金を徴収し……


税金は経済的不平等を解消するための助成金として労働者に再分配します。


収入は財やサービスの消費によって得られる効用を増加させますが、労働は効用を低下させます。労働者はこれらの前提と税制を踏まえ、自身の効用を最大限に増加させる戦略を取るそうです。


以下のグラフは縦軸が限界税率、横軸が労働者の収入を示しており、紫色が「2018年のアメリカで用いられた税制」、青色が「経済学者のエマニュエル・サエズ氏が考案した税制」、緑色が「AIエコノミストが考案した税制」を表しています。AIが考案した税制はジェットコースターのように税率が上下しており、いびつな形をしています。


労働者の納税総額を収入別に示したグラフが以下。低所得者のうちは急速に課税されていますが、中間層になると納税額の上昇が減少し、高所得層になると再び納税額が上昇していることが確認できます。このグラフだけを見ると、AIが考案した税制は低所得者への課税額が高いように見えますが……


実際には政府が徴収した税金から再分配が行われます。そのため、再分配金を受け取った後で考えると、低所得層は税負担が軽くなっているとのこと。

横軸に労働者の能力、縦軸に納税額を示した以下のグラフを見ると、一番右の最も能力が高く収入も多い労働者が税を支払い、それが低所得層や中間層へ分配されているため、低所得層や中間層の実質的な税負担は軽くなっていることがわかります。


実際に研究チームはこのシミュレーションモデルを用いて、「課税や再分配のない完全な自由市場」「2018年のアメリカで用いられた税制」「経済学者のサエズ氏が考案した税制」「AIエコノミストが作り出した税制」で生産性や経済的平等性を比較しました。その結果、AIが考案した税制は生産性(左)において完全な自由市場に及ばないものの、経済的平等性(中)は最も高くなっており、生産性と平等性のバランス(右)も最高となることが判明。研究チームは、サエズ氏が考案した税制と比較して、AIが考案した税制が16%も生産性と平等性のバランスを改善したと主張しました。


研究チームはAIによるシミュレーションだけでなく、アメリカに住む100人以上の人々が参加した実験も行っています。参加者はこのシミュレーションモデルを使って、「自身が操作する『労働者』の効用を最大限に増やすゲーム」をプレイしました。125回に及ぶ試行の結果が以下のグラフ。AIによるシミュレーションとはさまざまな点で違いがあるものの、生産性と平等性の両立という観点では、AIが考案した税制が最も優れていることがわかります。


研究チームが作成したAIベースの経済シミュレーションモデルには限界があり、労働者の複雑な行動要因や労働者の相互作用がモデル化されておらず、全体の経済規模も比較的小さいものとなっています。しかし、将来的に人々の行動や社会制度に影響を及ぼすさまざまな要因についてモデルに組み込むことで、モデルを改善することができるとのこと。研究チームはAIによるシミュレーションが税制の経済的影響に関して、透明性が高く客観的な見方を提供すると主張しており、将来の経済AIモデルが現実の社会福祉を改善できることを期待していると述べました。

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in ソフトウェア,   動画, Posted by log1h_ik

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