『ローソン』ダントツ1位「ファミマ・セブンを大きく上回る」

ローソンの業績が好調だ。2025年2月期の営業収益(売上高に相当)は1兆1707億円、純利益は599億円でともに過去最高。その勢いは既存店売上高の増減率(前年同月比、カード・チケットの影響を除く)にも表れており、6月は7.7%であり、競合他社のファミリーマート(約2.7%)、セブン-イレブン(2.0%)を大きく上回る。その背景には、ローソンが数年前から進めている、商品や店舗の売り場づくり、収益力向上などに関する多面的な改革が存在する。その改革の舞台裏について、ローソンへの取材を交えて追ってみたい。
●目次
次世代発注システム「AI.CO」を全店に導入
ローソングループ大変革実行委員会
地域共生コンビニの取り組み
次世代発注システム「AI.CO」を全店に導入
ローソンの業績伸長の理由について、同社は次のように説明する。
「2020年に立ち上げた『ローソングループ大変革実行委員会』で進めてきた商品の刷新や店舗の品揃え・接客などQSCの徹底、デリバリーサービス導入店の拡大などの改革、『ハピろー!』の販促効果が出ております。22年度から『地域密着×個客・個店主義』を戦略コンセプトに掲げ、よりお客様に近い現場で、顧客価値の創造を徹底追求する体制を強化。先行エリアとして『北海道カンパニー』『近畿カンパニー』を新設してエリアの特性を把握し、お客様・マチの変化に素早く対応して地域密着を目指す形としました。23年度からはカンパニー制を全国に拡大し、『地域密着×個客・個店主義』のさらなる推進を行っております。カンパニー制により、意思決定スピードが高まり、これまで以上に地域に根差した商品開発や出店などが進んだことも奏功しました。
商品については、『定番商品』と『チャレンジ商品』の2軸で商品開発を実施。お客様の日常使いのニーズに応え、売り上げのベースとなる定番商品では、22年度から一部の定番商品に対して、お客様による試食調査を実施し、その結果をもとに発売の判断や商品改良を行っています。お客様の変化に対応し、差別化による新規顧客獲得を狙うチャレンジ商品では、人気の弁当がおにぎりになって手軽に食べられる『具!おにぎり』シリーズなど、タイパ+食べ応えある商品を発売し、ご好評いただきました。また、時間をかけずに野菜もお肉もバランスよく食べたいといった声にお応えする『振っておいしいパスタサラダ』については、発売から約4週間で300万個突破する人気商品となりました。
店内厨房で調理した『まちかど厨房』については、春には『てりたま』、夏には『おろし』など、季節に合わせた商品を発売し、季節感ある売場を演出することができました。ユニークさが話題となった商品も多数発売しております。例えば、24年11月に発売した『飲むマヨ』は商品担当者が『マヨネーズ好きの方が多いことに着目して、飲めるマヨネーズを作りたい』といった発想で開発した商品です。さまざまなご意見がありましたが、多くの方に面白いと楽しんでいただけました。24年10月に発売した具無しカップ麺『スープ激うま!シリーズ』は、具材をなくすことで、その分、スープにこだわった商品です。物価高のなかで価格を抑えてご満足いただける商品を提供したいとの想いで商品担当者が考えました。カップ麺に具材は当然必要だろうという固定概念を取っ払って、お客様が何を求めているかを考えた結果、このように尖った商品が誕生しました。その発想の面白さも好評につながったと感じています。
デリバリーサービスにおいては、24年4月から店頭在庫の有無がお客様のアプリ上で確認できるよう機能を改善したうえで、取扱商品数を約700品から約3,200品に拡大。導入店舗数は全国47都道府県で約7,400店舗となりました(25年2月末時点)。24年7月には次世代発注システム『AI.CO(AI Customized Order)』を全店に導入し、品揃え・発注数・値引きの推奨がさらに適正化され、売上・利益の拡大に貢献しています。
いずれの施策においても、お客様と直に接していただいているオーナーさんクルーさんに店舗で具現化いただけたからこその結果と考えております」(ローソン)
ローソングループ大変革実行委員会
前述の「ローソングループ大変革実行委員会」では、具体的にどのような改革に取り組んできたのか。
「『ローソングループ大変革実行委員会』は新型コロナウイルス感染症により、お客様や社会の価値観が大きく変化したことにいち早く対応していくため、『商品』『店舗改装』『売場作り』『マーケティング』『SDGs』『データ活用』『収益力向上』『ブランディング』などに取り組む12のプロジェクトを立ち上げました(随時アップデートを行っており、25年度については14のプロジェクトを実施中)。
『商品面』では『まちかど厨房』導入店舗の拡大や無印良品の全国展開、『売場作り』では冷凍食品売り場の拡大や揚げ物商品のセルフ販売などを実施。『収益力向上』ではAIを活用した次世代発注システム『AI.CO』を24年7月には全店に導入。品揃え・発注数など発注にかかわる業務の推奨に加えて、値引きの推奨をする機能も実装されており、オペレーションの削減や利益向上につながっています。実際に使用している加盟店からはオペレーションが改善され、店舗運営が効率的になったという声が多く寄せられています。また、サステナブルな食の循環を目指し、冷凍おにぎりの販売についても拡大しております。
商品事例としては、冷凍商品の強化として21年度に冷凍スイーツや冷凍刺身を発売。これまでストック需要の高かった冷凍食品が即食用としても選ばれる一品となりました。24年度の具体的な商品事例では、新機軸のスイーツ『ふわ濃チーズケーキ』や『ご褒美スティックケーキ』などがご好評いただきました」(ローソン)
地域共生コンビニの取り組み
今年度に展開を計画している“チャレンジ”についても聞いた。
「今年は1975年6月14日に大阪府豊中市にローソン1号店の桜塚店がオープンして50周年を迎えました。これからの50年は圧倒的な成長を実現して、少子高齢化・人口減・災害対策など日本が抱えるさまざまな社会課題の解決にチャレンジしていきたいと考えております。今年、6月3日がローソンの日に認定されました。この日を皮切りにお客様、マチ、地球すべてをハッピーにしていく『マチのハッピー大作戦』を開始しました。6月に実施のさらにパワーアップした『盛りすぎチャレンジ』や、記念商品の発売をはじめとしたプロモーションに加え、未来のコンビニのお披露目や新たな環境対策施策等、サステナブルな社会を構築するための取り組みにもチャレンジしてまいります。
8月には食品ロス削減と寄付によってサステナブルな『食』の循環を築く『FOOD GOOD SMILE』を開始します。値引きシールが貼ってあるおにぎりを買うと1個当たり1円が食を提供する福祉施設(法人)へ食材費として寄付される取り組みです。コンビニの日配商品はほとんどが即食需要であり、賞味期限の迫ったお値引き品をお得に買っていただくことで、食品ロスの削減につながることを広くお伝えしていきたいです。デリバリーでは、導入店舗数を8,200店舗まで拡大予定であり、あわせてゴーストレストランを1,400店舗に拡大していきます。
地域共生コンビニについて、昨年度に続き、誰もが便利に楽しくお買物を続けることができる買い場の維持を目指し、地元企業や地域の皆さまと連携した“地域共生コンビニ”の出店を進めていきます(25年6月の出店事例:ローソン道志店 その他の出店事例:ローソン マルショク長浜店、ローソン龍神村西店、ローソン由利本荘鳥海町店)」(ローソン)
プライベートブランド(PB)の刷新も進める。
「刷新前のPBの約95%にあたる商品を10月までに順次、『3つ星ローソン』のブランド名に統一します。PBの刷新は2020年以来5年ぶりとなります。『3つ星ローソン』では、ローソンが宣言している“3つの約束”を指針として、商品のリニューアルを行っていきます。
1.圧倒的な美味しさ
お客様の声を具現化することを第一に、商品開発プロセスを変更
2.人への優しさ
お客様の関心が高い添加物について独自の使用基準を設ける
3.地球(マチ)への優しさ
25年度中に容器包装における環境配慮素材を使用する商品の比率を80%まで拡大
また、近年の『タイパ』を重視するトレンドのなかでお買い物に時間をかけたくないという意識が高まっていることから、『わかりやすい』を意識し、商品名は見やすい大きさと濃さの文字に変更。パッケージカラーは商品に合わせた識別しやすい色を使用。アレルゲン表示記載に関しては、パッケージ前面での記載に変更します」(ローソン)
ビジネスジャーナルが報じた。
編集者:いまトピ編集部