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ゴビ盆地東部に位置するティール・ウラーン・チャルツァイで見つかった恐竜の卵殻の欠片。(LINDSAY ZANNO) 恐竜の卵を手がかりに年代を測定する新たな方法が見つかった。はるか昔に卵の殻に取り込まれた放射性鉱物から、その卵がいつ産み落とされたものなのかを判断できるという。この手法を使えば、古代の生態系の年代をこれまでよりも正確に特定できる可能性がある。 11月10日付けで学術誌「Communications Earth & Environment」に発表された研究は、化石化した卵の殻には年代を直接測定する手がかりとなる鉱物が含まれているという、近年注目されているこの説をさらに補強するものだ(2025年9月には中国の研究チームが、化石に含まれる方解石を手がかりとして卵の年代を測定した研究結果を発表している)。 「古生物学者は、化石を掘って研究することで地球上にいた生命の歴史の再構築を試み
インドのカルナータカ州で交尾するヘリグロヒキガエル。黄色いカエルはオスで、茶色いカエルはメスだ。(SUSANNE STÜCKLER) 毎年、インドと東南アジアでモンスーンの雨が降り始めると、文字通り輝きを増すヒキガエルがいる。ヘリグロヒキガエル(Duttaphrynus melanostictus)のオスがわずか10分ほどで茶色からレモンイエローに変わるのだ。この変化が2日間にわたる狂乱の繁殖行動と一致することは長く知られていたが、2025年9月2日付けで学術誌「Ichthyology & Herpetology」に発表された論文で、具体的な役割が解明された。(参考記事:「トゲ肌からツル肌に早変わりする新種カエルを発見」) オーストリアの首都ウィーンにあるシェーンブルン動物園の研究者たちは調査のため、3Dプリンターでカエルをつくった。茶色いものと黄色いものを用意し、交尾(抱接)のために集ま
ペルーの岩がちな尾根に沿って、5200個ほどの穴がびっしりと細長い帯状に並ぶ場所がある。まるで、巨大なヘビが山を登っているかのように見えるため、「モンテ・シエルペ(蛇の山)」と呼ばれるこの穴の集まりは、1931年にペルーを訪れた米国の調査団によって再発見されたものだが、長年考古学者や陰謀論者らを当惑させてきた。 約1000年前の人々がなぜこのような穴を掘ったのか、誰も知らなかった。10年以上前に初めてこれを目にしたとき、他では見たことのない光景に考古学者のチャールズ・スタニッシュ氏は「非常に興味をそそられました」と話す。 現代になってこの場所が広く知られるようになったきっかけは、1933年にナショナル ジオグラフィックが初めて穴の空撮写真を公開したことだった。(参考記事:「古代インカ都市マチュピチュ、知られざる10の秘密」) スタニッシュ氏によると、それ以来この奇妙な構造物の正体について、
【動画】頭上を飛ぶコウモリをわしづかみにするネズミ。(VIDEO BY KNÖRNSCHILD LAB, MUSEUM FÜR NATURKUNDE BERLIN) 都会で冬を越す在来種のコウモリにとって、外来種のドブネズミ(Rattus norvegicus)がどの程度危険な存在かを調べたところ、ネズミの恐るべき能力と大きな影響が明らかになった。ネズミたちは飛ぶコウモリを巧みに捕らえ、越冬場所の群れを組織的に襲っていた。論文は10月10日付けで学術誌「Global Ecology and Conservation」に発表された。 ドイツ北部の暗い洞窟の中、1匹のドブネズミが、尾でバランスを取りながら後ろ脚で立ち上がる。ネズミはふいに上に向かって手を伸ばしたかと思うと、空中を飛んでいるコウモリをわしづかみにし、その体に噛みついた。赤外線監視カメラに記録されたその映像を初めて見たときに、論文
2019年夏、生態学者のパトリック・サリバン氏は軽飛行機スーパーカブで、米国アラスカ州北部ブルックス山脈の峡谷を飛行し、サーモン川の源流へと向かっていた。目的は、急速な気候変動の証拠であるツンドラ地帯への樹木の侵入を調べることだった。そのとき、驚くべき光景を目にした。澄んだ冷たい川とブルーグリーンの淵を期待し、釣り竿まで持ってきていたのに、水は濁り、川岸が鮮やかなオレンジ色に染まっていたのだ。「まるで汚水のようでした」とサリバン氏は振り返る。 サンプルの採取を終え、パックラフト(可搬型ゴムボート)で下流へ向かう間も、濁ったオレンジ色の水は続いた。川沿いでは、痩せ細ったクマを何頭も見た。 ある静かなよどみで、特に痩せたクマが近づいてきた。その暗い瞳にじっと見つめられ、サリバン氏は不安を覚えた。川の劣化が魚を減らし、クマの食料を脅かしているのではないだろうか。「私たちは生態系の崩壊を目の当たり
ほぼ100年ぶりにカリフォルニアに戻ってきたタイリクオオカミ。しかし、共存の道のりは平坦ではない。(MALIA BYRTUS, NATIONAL GEOGRAPHIC) 米国カリフォルニア州魚類野生生物局は、地元の牧場主たちからの切実な苦情を受け、4頭のタイリクオオカミを法律に基づいて殺処分するという異例の措置を取った。実に100年以上行われてこなかった対応だ。 同局は2025年10月初め、カリフォルニア州のシエラネバダ山脈にあるシエラバレーと呼ばれる地区で、タイリクオオカミのつがいを捕獲して安楽死させた。この地域の牧場主たちからは、多くの家畜に被害が出ていると繰り返し苦情が寄せられていた。(参考記事:「シエラネバダ山脈 火災の爪痕を記録する」) 同局によると、最終的には「ベイエム・セヨ」と呼ばれる群れの完全な駆除を目指している。カリフォルニア州には、このようなオオカミの群れが合わせて10
幼いTレックスを襲うナノティラヌスの集団。ナノティラヌスは幼いTレックスとする説もあったが、新たな証拠により別の種の恐竜であることが明らかになった。(ANTHONY HUTCHINGS) 小型でスリムなティラノサウルス類の化石は、はたして幼いティラノサウルス・レックスなのか、それとも別種の恐竜ナノティラヌス・ランケンシス(Nanotyrannus lancensis)なのか。40年にわたる激しい論争がついに決着するかもしれない。ティラノサウルス類の化石を200以上分析した研究結果が10月30日付けで学術誌「ネイチャー」に発表され、Tレックスとは別種の敏捷でスリムな恐竜ナノティラヌスであると著者らは宣言した。 「論争を終わりにするため、私たちはこの問題をあらゆる角度から検証することにしました」と言うのは論文の筆頭著者で、米ノースカロライナ自然科学博物館の古生物学者であるリンジー・ザンノ氏だ。
ロシア、サハ共和国で解けた永久凍土から発見された1万9700年前のケブカサイの角。長さは約165センチ。サイの角としては、これまで見つかっているものの中で最長だ。写真は1本の角を両サイドから撮影したもの。(RUSLAN BELYAEV) 2024年の夏、地球上で最も寒い定住地として知られるロシア、サハ共和国(ヤクーチア)の奥地で、地元のハンターで化石収集家のロマン・ロマノフ氏が解けた永久凍土から頭骨と湾曲した巨大な角を発見した。首都ヤクーツクにあるマンモス博物館は1万9700年前のケブカサイ(Coelodonta antiquitatis)と特定し、現生種、絶滅種を問わず記録が残る全てのサイの角を調べたところ、約165センチの長さはこれまでで最長と結論した。論文は2025年9月12日付の学術誌「Journal of Zoology」で発表された。 今回報告された角は、過去に最長とされていた
政府の地震調査委員会が、南海トラフ巨大地震の今後30年以内の発生確率を、これまでの「80%程度」から「60~90%程度以上」に見直した。過去の地盤隆起データの誤差などを考慮し、新たな計算方法によってはじき出した。また、他の地域の地震に使われている別のモデルで計算した「20~50%」という数値も併記した。いずれも「3段階ある発生確率ランクで最も高い」という。 一つの地震について二つの発生確率が併記されるのは初めてで、地震の発生確率をめぐる科学の限界を示した形だ。各地の防災の現場には戸惑いの声もあるが、南海トラフ巨大地震の危険度が変わったわけではなく、調査委は「いつ起きてもおかしくない状況に変わりない」(平田直委員長)と強調している。幅のある数値に振り回されることなく、巨大地震の被害を少しでも減らすための警戒と備えが求められる。 赤い線は南海トラフ巨大地震の想定震源域。オレンジ色の線は震源域を
2025年の秋から東京・上野の国立科学博物館で開催される特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」。40億年の生命の歴史の中でも特に大規模だった5回の絶滅はなぜ、どのように起こったのか。そして、生命はどうやって乗り越えてきたのか。同展の監修者5人が展示の見どころとともに選りすぐりのトピックスを解説します(編集部)。
集団墓地に埋葬された兵士たちのDNAを分析したところ、モスクワからの撤退中に死亡したナポレオン軍の兵士たちの一部は、これまで見つかっていなかった病気に苦しんでいた可能性を示す証拠が発見された。(Adolph Northen (1828-1876), Barbieri et al., Current Biology) 1812年、フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトがロシア遠征から撤退する中、およそ30万人もの兵士が命を落とし、軍はほぼ全滅した。その多くが強制的に集められた兵で、「冬将軍」と言われるひどい寒さや疲労、飢餓、そして病気という数々の苦難が重なった末にこの世を去った。これまでの記録によると、兵士たちの死因とされた主な病は「野営熱」(今日で言う発疹チフス、Rickettsia prowazekii)と「塹壕熱」(Bartonella quintana)だった。 ところが最近、リトアニア
エリン・ベルバックは、米航空宇宙局(NASA)が支援する実験に参加している。実験の目的は、冬眠の効果を人体で再現することだ。米ピッツバーグ大学の研究者たちは、ベルバックの呼吸と体温を測定し、その代謝率を調べようとしている。(PHOTOGRAPH BY REBECCA HALE, NGM STAFF) 人間を冬眠させるというSF的な発想によって、医療に革命がもたらされ、また宇宙旅行が可能になるかもしれない。そしてその実現は、私たちが考えるよりもずっと間近に迫っているようだ。 生理的な体の震えを抑制する鎮静剤を投与した18時間後、37℃あった被験者の深部体温は、35℃まで低下。心拍数と血圧も下がった。基礎代謝は20%低下した。 ここは、米ピッツバーグ大学応用生理学研究室。被験者は、医師のクリフトン・キャラウェイが「トワイライト・スリープ」と呼ぶ状態に入っていた。それでもベッドから起き上がり、ゆ
発見された照月の残骸。(VIDEO BY OCEAN EXPLORATION TRUST, NOAA) 第二次世界大戦中の1942年8月から1943年2月まで、南太平洋ソロモン諸島のガダルカナル島沖では、米国を中心とする連合国軍と旧日本軍の海軍との間で激しい戦いが繰り広げられた。太平洋戦争における転換点となった「ガダルカナル島の戦い」は、7回の海戦と、3回の陸上での大規模な衝突により、両軍合わせて2万7000人を超える死者を出した。 戦場となったガダルカナル島沖のサボ海峡は、「アイアン・ボトム・サウンド(鉄底(てってい)海峡)」と呼ばれるようになった。100隻を超える鉄でできた軍艦が海底に沈んだためだ。船の残骸は、残酷な戦争の歴史を後世に伝える証拠として、今も海底に横たわっている。とはいえ、水深600メートルの海底は、人間のダイバーが簡単にたどり着けるような場所ではない。 旧日本軍の駆逐艦
ポール・セレノ氏らが何年もかけて準備したエドモントサウルス・アネクテンスの「ミイラ」。米国ワイオミング州で発掘。これは子どもの恐竜だったため、「エド・ジュニア」と呼ばれている。同じ種の成体のミイラも見つかっており、そちらは「エド・シニア」と呼ばれている。(Rebecca Hale, National Geographic) 米国ワイオミング州で新たに見つかった2体のエドモントサウルス・アネクテンス(Edmontosaurus annectens)の「ミイラ」についての論文が、10月23日付けで学術誌「サイエンス」に発表された。後足の蹄(ひづめ)や背中の肉質の突起(クレスト)などの痕跡がよく保存されており、このような化石ができる謎を解く鍵になりそうだ。 ミイラといっても、化学的に防腐処理をしたものではない。皮膚の痕跡が岩石の中の薄い層として残された化石を指している。こうしたミイラ化石を綿密に
年齢を重ねても脳をさえた状態に保てるかどうかにかかわる要素が、新たな研究で明らかになってきた。(Photograph by Britt Erlanson, Getty Images) 高齢になっても頭がさえた状態に保つにはどうしたらいいのだろうか。80歳を超えてもなお数十歳若い人と同じくらいの認知機能を持つ「スーパーエイジャー」がいるのはなぜなのか、その秘密が徐々に解き明かされつつある。 2025年8月、米ノースウェスタン大学の研究者らが、過去25年間にわたって行われたスーパーエイジャー100人以上を対象とした調査と、スーパーエイジャー77人の死後の脳の分析から得られた知見について論文を発表した。 この研究は、スーパーエイジャーたちの脳には多くの共通点があり、それらが認知機能を維持するうえで役立っている可能性があると推測している。 また、生活習慣の違いがどの程度の差を生むのかはまだ解明すべ
最新の研究によると、一部のイヌはおもちゃに対して、人間のギャンブル依存症などの行動嗜癖に似た行動を見せるという。「イヌの福祉の非常に重要な側面に着目した研究」だ。(PHOTOGRAPH BY KSENIA RAYKOVA) あなたはカジノでスロットマシンにはまるイヌを見たことがあるだろうか? おそらくないだろう。では、おもちゃ遊びが好きすぎるイヌは? おそらくあるだろう。新しい研究によると、両者にそれほど大きな違いはないのかもしれない。学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に10月9日付けで掲載された論文の著者らは、一部のイヌがおもちゃに対してとる行動は、ギャンブル依存症やインターネットゲーム依存症といった人間の行動嗜癖(しへき)と類似点があると主張する。 論文の最終著者でオーストリア、ウィーン獣医大学の行動生物学者のステファニー・リーマー氏は、おもちゃのボールが好きすぎる愛犬を「ボール
アラモサウルスは北米南部で生息していた最後の恐竜の1種だ。この恐竜の化石が発見された米国ニューメキシコ州の岩層の年代を測定した結果、小惑星衝突の直前の34万年前と判明した。(NATALIA JAGIELSKA) 今から約6600万年前の春、今日のメキシコのユカタン半島に、直径約10キロメートルの小惑星が衝突した。この衝突による大災害で、鳥類以外のほとんどすべての恐竜の系統をはじめ、地球上の生物種の75%が絶滅に追いやられた。(参考記事:「恐竜絶滅は春に始まった、小惑星衝突の季節をついに特定、研究」) とはいえ、小惑星が衝突したときに恐竜がどんな状況に置かれていたのかはわからない。恐竜はすでに衰退していたのか、それとも繁栄を続けていたのか。古生物学者たちは長年にわたって議論してきたが、直前まで現在の米国ニューメキシコ州で恐竜が繁栄したことを鮮明に示す論文が学術誌「サイエンス」に発表された。こ
2025年10月11日と12日、米国オハイオ州クリーブランドの国際展示場で、世界最大の純血種登録団体「キャットファンシアーズ協会(CFA)」主催の「インターナショナル・キャットショー・アンド・エキスポ」が開かれ、550匹のネコと1万人近い来場者が集まった。(参考記事:「ネコの表情は276種類あると判明、なぜそんなに多いのか?」) 展示場の奥半分を使用した会場には、ネコたちを目当てに、フィンランド、香港、日本、そしてロシアからも人々がやってきた。また、キャットショーに出場するネコたちの飼い主やブリーダーがずらりと列をなし、ネコ用のベッド、キャリーバッグ、キャリーカートなどが並んだ。 頭上には、サイベリアン、シャム、スフィンクス、マンクス、メインクーンなど、ネコの品種が書かれた巨大な垂れ幕がアルファベット順に並んでいる。そのすぐ後ろには12カ所の「リング」が設置され、同時進行で審査が行われる。
宇宙の物理学とブラックホールの物理学には類似点がある。このことから、一部の宇宙論研究者は、私たちの宇宙はブラックホールの中で生まれたのではないかと考えている。(PHOTOGRAPH BY NASA GODDARD) 星空を見上げると、宇宙が無限に広がっているように思えるものだ。しかし、宇宙論研究者は、宇宙は有限だと知っている。第一に、宇宙論の最良のモデルは、空間と時間に始まりがあったことを示している。「特異点」と呼ばれる原子以下の点だ。この高温高密度の点は、ビッグバンが起きたとき、急速に外側へと膨張した。 第二に、観測可能な宇宙は「事象の地平面」と呼ばれる境界に囲まれている。宇宙は超光速で膨張しているため、その先は観測不能な断崖絶壁だ。最良の望遠鏡でさえ到達できないほど遠すぎる領域がある。(参考記事:「最新望遠鏡で原始の宇宙へ」) 特異点と事象の地平面という2つの要素は、ブラックホールの重
上空から見た2つのチャクという石造構造物。長い石壁は、多くが長さ約150メートル、高さ約1.5メートルで、急な山の斜面に築かれていた。(ADRIÁN OYANEDER) アンデス山脈のはるか上空から撮られた画像を見ていたアドリアン・オヤネデル氏は、山岳地帯に奇妙な配置で点在する76基の石壁の建造物を発見した。2025年10月13日付けで学術誌「Antiquity」に掲載された研究で、氏はこれらの建造物の正体や、今回の発見がもつ意味について報告している。 氏はチリ北部のカマロネス川流域と呼ばれる人里離れた山岳地帯の衛星写真を丹念に調べていた。しかし、自分が見ているものが何なのか説明できなかった。 「最初はたくさんの壁、それも非常に長い壁を見つけました」と、オヤネデル氏は語る。チリで育った氏は、英エクセター大学で古代南米文明を専門とする考古学者だ。「新しい眼鏡かパソコンが必要なんじゃないかと考
腰痛は姿勢や寝違えのせいにされがちだが、本当の原因はもっとからだの深いところにあるかもしれない。(PHOTOGRAPH BY SOLSTOCK/GETTY IMAGES) 刺すような痛み、うずくような痛み、鈍い痛み。腰痛は前触れもなくやってくる。姿勢や寝違えのせいで片づけるのは簡単だ。だが、真犯人はからだのもっと奥深くに潜んでいるかもしれない。それは股関節屈筋、なかでも特に腰筋(ようきん)だ。 腰筋は、大腿骨の上部から骨盤の前面を通り、腰椎と下部肋骨まで伸びる帯状の筋肉だ。「腸腰筋(大腰筋・小腰筋・腸骨筋の総称)という複合筋の一部です」と、米ニューヨーク大学グロスマン医学部リハビリテーション科臨床助教であるリチャード・ラウ氏は説明する。 人は30歳を過ぎると腰筋の筋肉量が10年ごとに4~6%ずつ減っていくことが日本の研究で示されている。男性は60歳を過ぎると筋肉量の減少はさらに加速する。し
2025年10月2日、ポルトガルのダークスカイ・アルケバ天文台で観測されたC/2025 A6(レモン彗星)。緑の光を放ちながら、地球に近づいていく。(PHOTOGRAPH BY MIGUEL CLARO) 10月21日、レモン彗星「C/2025 A6」が地球に最接近する。今回の接近後、この彗星を見られるのは1000年以上先だ。 「彗星はごく普通に見られるものですが、今年地球から観測できる中で最も見ごたえがあるのは、間違いなくレモン彗星です」と、米アリゾナ州立大学隕石研究センター所長のロンダ・ストラウド氏は言う。 レモン彗星はどこから来るのか、夜空のどこを探せば見られるのか、いつまで見られるのかなど、この彗星について知っておきたいことを紹介する。 レモン彗星はどこからやってきたのか 宇宙空間には何もないわけではない。われわれの太陽系の周辺には、氷や塵(ちり)の粒子が散りばめられており、それら
自然の中で遊ぶことで、子どもはリスクと向き合い、問題を解決することを学び、より回復力のある大人へと成長する。(PHOTOGRAPH BY JONATHAN KIRN, GETTY IMAGES) 子どもたちが丸太と格闘しながら、どこへ置こうと言い合っている。1人が木に登り、枝にシャツを引っ掛けてしまった。別の子は水たまりの近くに膝をつき、ぬかるみに宝の地図を描いている。子どもに付きまとって「気を付けて」と叫び、あれはダメこれはダメと干渉する親たちのいないこうした子どもたちだけの冒険が、過密なスケジュールや画面を見てばかりの日々に抵抗感を抱く家族たちの間で注目を集めている。 背景にあるのは昔を懐かしむ感情ばかりではない。ある2018年の調査によると、米国の子どもたちが外で自由に遊ぶ時間は、親たちが子どもだったころに比べ35%も短くなっている。 子どもたちの外遊びの時間が減っていることは問題だ
英ロンドン自然史博物館が毎年開催している野生生物写真コンテスト「ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」の最優秀賞に輝いたのは、南アフリカの写真家ウィム・ファン・デン・ヒーバー氏。めったに見られない近危急種(near threatened)のカッショクハイエナ(Parahyaena brunnea)が、かつてダイヤモンドの採掘が行われていたナミビアのゴーストタウンをうろつく姿を撮影することに成功した。(WIM VAN DEN HEEVER, WILDLIFE PHOTOGRAPHER OF THE YEAR) 太っちょクマのコンテストが大人気、野生ならではの悲惨なハプニングも 写真7点 ミクロの世界が描く壮大さと繊細さ 顕微鏡写真コンテスト2025 その完璧な一枚を撮るのに10年かかった。ナミビア南部の海岸沿いにある廃鉱山の町で、ウィム・ファン・デン・ヒーバー氏は足跡とふん
紅海中央部で、共生するイソギンチャクの白化した触手の間から、クマノミの一種であるレッドシーアネモネフィッシュ(Amphiprion bicinctus)の幼魚が顔をのぞかせている。(PHOTOGRAPH BY MORGAN BENNETT-SMITH) 健康なイソギンチャクは、岩やサンゴに咲くピンクの花のように見え、映画『ファインディング・ニモ』で有名になったクマノミのすみかとなる。しかし2023年、生物学者たちは紅海で、白化現象で幽霊のように真っ白になったイソギンチャクの群落を発見した。この現象は、そこにすんでいたクマノミの大半も死滅させた。論文は9月12日付けで学術誌「npj biodiversity」に発表された。 研究チームは、サウジアラビアの紅海の中央部にある3つのサンゴ礁で、すべてのセンジュイソギンチャク(Radianthus magnifica)を白化させた海洋熱波を記録した
ヨーロッパハムスターは、ペットショップで見かけるハムスターよりも大きく、気性が激しい。国際自然保護連合(IUCN)から近絶滅種(critically endangered)に指定されている。(Photograph By Mikhail Rusin) 2023年2月、ウクライナの都市ヘルソンやキーウが巡航ミサイルによる攻撃を受ける中、首都キーウに暮らすミハイル・ルーシン氏は、ほぼ1週間にわたって暖房も電気も使えない状態で過ごすことになった。夜間の最低気温は約マイナス10℃。これも戦争がもたらす苦難のひとつだったが、ルーシン氏には自分や家族のほかにも心配なことがあった。キーウ動物園のハムスターたちだ。ハムスターは暗い部屋に置かれた広いカゴの中で冬眠しており、一般的に寒さには強いが、体温が下がりすぎると回復できなくなる恐れがある。(参考記事:「ハムスターの爪、冬眠中は伸びが止まると判明、でも綺麗
「日本人の睡眠時間は世界で最も短い」 「睡眠不足は高血圧や糖尿病など病気のリスクを高める」 「長く眠りすぎるのも体に悪いらしい」 いずれも過去の数多くの研究で明らかにされてきた睡眠習慣と健康との関係についての“常識”だが、最近の研究により、従来の調査で用いられてきた「睡眠」の定義に問題点があることが示唆されている。 睡眠時間と健康リスクの関連を解き明かした多くの疫学調査や臨床研究では、睡眠ポリグラフ検査で客観的な睡眠時間(脳波上の睡眠)を測定したものはごく少数で、大部分は調査紙などで調べた主観的(自覚的)な睡眠時間を指標にしている。時には数万〜数十万人という膨大な人数を対象として行う調査研究では、簡便さやコスト面から主観的睡眠時間を採用せざるを得ないという事情もある。 例えば、日本人の睡眠時間の実態を表すデータとしてしばしば引用されるものに、総務省が実施している「社会生活基本調査」とNHK
野生でのトラフザメの交尾自体、初めて記録された。2024年7月12日撮影。(Video by Dr Hugo Lassauce | Aquarium des Lagons | Zebra Shark Project | StAR Project | University of the Sunshine Coast) 交尾の映像が残されているサメは、ごくわずかな種にとどまる。だからこそ、南太平洋のニューカレドニア本島沖で、交代で交尾を行う3匹のトラフザメ(Stegostoma tigrinum)に出くわした際、それが貴重な記録をものにする機会であることを海洋生物学者のヒューゴ・ラソース氏は自覚していた。 これまでに目撃されてきたサメの交尾には、激しく暴力的な行動を伴うものが多かった。オスがメスに噛みついたり、より有利な位置を確保しようと互いに争い合ったりするのだ。しかし、ラソース氏が目撃した
アラビア砂漠のジェベル・ミスマで発見されたラクダの岩絵。丸い目、丸い鼻面、強調された顎の輪郭を持つ、様式化されたラクダが描かれている。自然に近い描写の岩刻画(白線でなぞったもの)と、より様式化された岩刻画(青線でなぞったもの)が重なっている。(PHOTOGRAPH BY SAHOUT ROCK ART AND ARCHAEOLOGY PROJECT) アラビア半島北部のネフド砂漠で発掘調査を行っていた考古学者、マリア・グアニン氏のチームは、人間、ラクダ、野生のロバ、アイベックス、ガゼル、オーロックス(絶滅した野生のウシ)の岩絵を約130点発見した。なかには高さが2mを超えるものもあった。制作年代は1万2800年〜1万1400年前と推定され、グアニン氏らが2025年9月30日付けで学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表した論文によると、年代がわかっているものとしては、アラビア半島で
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