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note.com/nkay
【要約】「馬」という漢字について、下部の4つの点(「灬」)は「四本の脚」を象ったものだという誤解があります。これは『説文解字』などの古典的字書にも見られますが、小篆や隷書・楷書など後代の字形の見た目から推測したものであり、漢字の歴史に沿った正しい分析ではありません。甲骨文や金文といった初期の文字資料を確認すると、「馬」字のウマの脚は二本だけが描かれ、それとは別に三叉の尾が描かれています。これらの筆画が非常に長い間絶えず変化しつづけた結果、後の字形では4つの点に簡略化されました。現代の字形の見かけから成り立ちを想像するのではなく、初期資料に基づいて連続的な変化の過程をたどることが重要です。 1. 「馬」字の筆画に関する誤解漢字の「馬」は、動物のウマを象ってできた文字だというのは、よく知られていることだと思います。しかし世間では、この「馬」字について現在の字形から想像したことによる、ある誤まっ
【要約】「旦」という漢字は、「日」の下に横棒を書いた形であることから「太陽が地平線から昇る情景を描いた象形文字」だと説明されることが多くあります。しかし、この説明は、実際に残されている古い文字資料に基づくものではなく、正確とは言えません。「旦」の下にある横線は、もともとは“□”や“●”のような形に書かれていたものが時代を経て簡略化されていった結果です。このことは19世紀末頃から古代漢字の研究者たちにとってはよく知られたことでしたが、漢和辞典はこうした誤った説明が繰り返し行われています。最も重要なのは、漢和辞典の「漢字の成り立ち」の項目の著者は古代漢字研究の専門家ではなく信頼できないということ、読者は情報を確認する必要があるということです。 1. はじめに「旦」という漢字の成り立ちは「太陽が地平線から昇る情景を描いた象形文字」だと説明されることがあります。以下のように、現在市販されている漢和
「𪚥」という漢字の音読みは「ショウ」ですが、現在は「テツ」と読む人が多くなっています。これは『大漢和辞典』という有名な辞典が「テツ」と記載したためです。この読みは、昔の中国の辞書『字彙補』に書かれた「𪚥」の説明を誤って解釈したことに由来します。それが『大漢和辞典』に掲載された結果、本来の読みとは違う「テツ」が広まったのです。さらに、この辞典には他にも同じような読み間違いがいくつもあり、それらは二次的な資料をそのまま使って確認を怠ったことが原因と考えられます。この記事では、こうした読みの誤りがどのようにして起こったのかを、音の変化や漢字の歴史をもとにわかりやすく説明しています。 (記事公開後の修正:ヘッダ画像を変更、第1章に一文追加、第6章の誤字三箇所を修正しました。) 1. はじめに漢字の中には、画数が非常に多い、普段目にすることがほとんどないような文字もあります。そのひとつに「𪚥」
楷書の「龍」という形は殷墟甲骨文に見られる文字を継承したもので、「竜」という形は早くとも漢代以降に作られたものだが、「竜」が「龍」より古くから存在するというトンデモが存在する。 「竜」が「龍」より古いというトンデモには全く根拠がないが、ほとんどの人は漢字の歴史について無知なのと、このトンデモが本当なら意外なので(逆に)、一定数の人が信じているようである。 実際には、「竜」が「龍」より古いなどということは無い。これは「最終的には「龍」も「竜」も同じ甲骨文字に由来するのだからどちらかが古いと言うことはできない」というような表現的問題ではなく(それも一理あるかもしれないが、ここではどちらかが古いという表現を受け入れよう)、「竜」が「龍」より古いというトンデモが描いている歴史が決定的に間違っているという意味である。 この記事で「竜」「龍」の歴史を再確認することで、トンデモの歯止めになれば幸いである
テレビ朝日の『林修のことば検定』という番組(正確には『グッド!モーニング』という番組の1コーナー)では、毎日言葉にまつわる三択クイズが出題される。 2024年7月16日放送分では、「虹」という漢字の由来を問うクイズが出題されたが、その解説では『「虹」という漢字の右部分の「工」は「貫く」という意味を持ち、「虹」という字は「空を貫く竜」を表す』というトンデモがクイズの正解として紹介された。 しかし実際には、「虹」という字は表音文字「工」に意味分類符「虫」を付加してできた文字で、「工」に「貫く」という意味は無いし、「虹」に「空を貫く竜」という意味は無い。番組で紹介された解説は全くのデタラメだ。
科学者が世の謎を解き明かすために奮闘している傍らで、雑学屋が非科学的言説をさかんに拡散しているということは珍しくない。これはその一例を示したものである。 原則一つの著書から一つだけを紹介するが、氏の雑学本の最新作である『そんな理由!! アレにもコレにも! モノのなまえ事典』(2023)には多数のフェイク字源が含まれているため複数(全てではない)を引用した。 苺【いちご:苺】 漢字では「母の上に草冠」。これには諸説あり、古来イチゴは日本では野イチゴのことでこれが乳首に似ているからという説、野イチゴは小さな実が寄せ集まっている事から沢山のコドモを生み出す母であるという意味からという説がある。 雑学庫 知泉蔵(1)「諸説」挙げられているが、どちらもフェイクである。多くの漢字は中国で生まれたものであるため、それが日本特有の文化に由来することはほとんどない。漢字は漢語話者によって漢語を表記するために
英語の動詞 $${swallow}$$ 「飲み込む」と名詞 $${swallow}$$ 「ツバメ」は語源的にも字源的にも関係がない。この2つの単語はもともと異なる発音と異なる綴りを持っていたが、歴史的変化によって偶然同じ発音と同じ綴りになった。 漢語の 嚥 $${yàn}$$ 「飲み込む」と 燕 $${yàn}$$ 「ツバメ」は語源的にも字源的にも関係がない。この2つの単語はもともと異なる発音と異なる綴りを持っていたが、歴史的変化によって偶然同じ発音と(部分的に)同じ綴りになった。 英語の動詞 $${swallow}$$ 「飲み込む」は名詞 $${swallow}$$ 「ツバメ」に由来するとか、漢語の 嚥 $${yàn}$$ 「飲み込む」は 燕 $${yàn}$$ 「ツバメ」に由来するとかいった誤った語源・字源説が存在する。このフェイク語源は特に医療関係者によって拡散されている。 フェイク
※この記事は https://note.com/nkay/n/n52fb6d7c6fd3 のつづきです。 ※2021/06/18:誤字を修正しました。 ※2021/07/08:誤字を修正し、ついでに一部の文章をわずかに変更しました。 概要をいうと、『ゆる言語学ラジオ』というYouTubeチャンネルにおいて、漢字に関して学術的に誤った理解に基づいた動画が作成され、(それが言語学的に正しいものとして)拡散されている。そこで、それを訂正する記事を書いたというわけである。 前文この記事では、「鯨」字に対する誤った説明に対していろいろな角度からツッコミを入れていく。 誤った説明とは以下のものである。これを[説A]と呼ぶことにする。 [説A] 「鯨」字に「京」が含まれるのは、「京」が大きいことを意味するからである。 なお、正しい説明は以下の通りである。その説明は前回記事を参照いただきたい。これを[説B
※この記事は https://note.com/nkay/n/nf9a24b8795bc のつづきです。 概要をいうと、『ゆる言語学ラジオ』というYouTubeチャンネルにおいて、漢字に関して学術的に誤った理解に基づいた動画が作成され、(それが言語学的に正しいものとして)拡散されている。そこで、それを訂正する記事を書いたというわけである。 1. 前文この一連の記事のメインターゲットが誰なのか再考すると、やはり「件の動画を視聴していて、漢字に興味があって、学術的正確性を気にする人あるいは文字学に興味がある人」という、非常に狭い範囲の人にとってしか意味のある文章にはなっていないなと考えるようになった。より専門的な話になっていくだろうし、それにつれてこの範囲にかからない人は文章を読む気があったとしても長文乙以外の感想を持つことができずどんどんふるい落とされていくだろう。 ちなみに僕の考えでは、「
ゆる言語学ラジオ#4の内容を訂正しようと思ったけども、その前に「部首」の誤解を解きたいと思いました~もうこの単語を学問の場で使わないでください~ この記事のモチベーション最近以下の動画が話題(のよう)だ。正確にはこの動画の投稿集団が話題で、この動画はその中では比較的地味な方である。 悶・聞・関、部首が「門」なのはどれ? #4 https://www.youtube.com/watch?v=v2vY-H1FAHM ただ、しかし、この動画で語られることは、漢字に関する誤解に満ちている。正直、どこから突っ込んでいいのやらという感じで、語られる結論が間違っているとかではなく、おそらく話し手たちが根本的に漢字・漢語と文字学(それは知識だけでなく研究伝統・研究史や方法論・考え方を含む)を誤解している。コメント欄も含めて目を覆いたくなる。 例えば、架空の人物が「“人”という字は人と人とが支え合ってるよう
「漢字の成り立ち」を語る際は、微細な筆画にも注意して字の構造を明確にしなければならない――「比・真・豊・般」字の字源を例として こんにちは、みなさん。 近年、多くの場所で「漢字の成り立ち」が語られる場面に遭遇します。テレビ番組や新聞雑誌、書籍や漫画、インターネット上のサイト・ブログ・SNSなどなど。しかしそこで見聞きする「漢字の成り立ち」説というのは、科学的根拠に欠けた信用できない説であることが少なくありません。 多くの場合、語り手が実際には文字学の知識に欠けた者であることが、その直接の原因となっています。こうした語り手達の間で、不可信で不正確な説明が伝播されていきます。 説得力の低いものと聞いて、テレビのバラエティ番組で芸能人が話す説や、あらさまな広告収入目的のインターネットサイトの説、書店に並ぶ泡沫雑学本に掲載されている説などが思い浮かぶかもしれません。しかし驚くべきことに、残念ながら
「漢字の成り立ち」を語る際は、最も初期の字形を根拠にしなければならない――「丁・正・以・亡・家・安」の字源を例として こんにちは、みなさん。 近年、多くの場所で「漢字の成り立ち」が語られる場面に遭遇します。テレビ番組や新聞雑誌、書籍や漫画、インターネット上のサイト・ブログ・SNSなどなど。しかしそこで見聞きする「漢字の成り立ち」説というのは、科学的根拠に欠けた信用できない説であることが少なくありません。 多くの場合、語り手が実際には文字学の知識に欠けた者であることが、その直接の原因となっています。こうした語り手達の間で、不可信で不正確な説明が伝播されていきます。 説得力の低いものと聞いて、テレビのバラエティ番組で芸能人が話す説や、あらさまな広告収入目的のインターネットサイトの説、書店に並ぶ泡沫雑学本に掲載されている説などが思い浮かぶかもしれません。しかし驚くべきことに、残念ながら、漢和辞典
「漢字の成り立ち」を語る際、まず第一に『ある漢字の意味は、必ずしもその字の字形と関係があるわけではない』ことを明確に認識しなければならない いわゆる「漢字の成り立ち」を語る場面や語られる場面に遭遇したとき、必ず認識しておかなければならないことがあります。 ……字形與常用義或基本義之間本來就不一定有必然的聯係。……某詞的意義,實際上可能與其所使用的字形本來完全無關。 (字形と常用義ないし基本義の間には、必ずしも関連があるわけではありません。 ある単語の意味は、その単語に使われている漢字の字形とは、実のところ何の関係もないかもしれません。) ――陳劍(復旦大學 出土文獻與古文字研究中心 教授) これは、仮借・通仮という現象を踏まえての発言です。すなわちまず「仮借」という現象について知っておく必要があります。 はじめに(1):仮借とは漢字には、「仮借」あるいは「通仮」と呼ばれる現象が存在します。
こんにちは、みなさん。 前回、漢字の成り立ちについて述べたところ、多くの反響をいただきました。見返してみると、別に漢字の成り立ちにかかわらず学術として当たり前のことを言っているだけで、温めた牛乳に張った膜だけを提供したような、表層部分だけのごく薄い話でしたが、皆様ありがとうございます。 本日は、より具体的で細かい話、私達が漢字の成り立ちを語る上で或いはもっと広く古文字学(古代の漢字を研究する学問のことです)上で気をつけているポイント、つまり誤りやすいポイントであり、それは裏を返せばあなたがフェイクに直面した時に目を皿にしてほしいポイントですが、そうしたことを紹介できたらよいなと思っております。 とはいえ、こうした事項は簡単に語り尽くすことはできません。そういうわけで、それらの一側面を取り出すことで、何回かに分けて述べたいと思います。といいつつも私は飽きやすいのでこれが人生最後の記事になるか
こんにちは、みなさん。 今回は「漢字の成り立ち」について小話したいと思います。 一【この章の要旨:本やインターネットで扱われている「漢字の成り立ち」は残念ながら誤りがほとんどってハナシ】 みなさんは日本語を綴るとき必ず漢字をつかっていることでしょう。漢字は日本の生活上欠かすことのできない存在であり、したがって人々の漢字に対する関心もそれなりに高いと思われます。 中型以上の規模の書店であれば漢字関連書籍をまとめた棚があり、漢字字典・漢和辞典だけでなく四字熟語がどうとか、難読漢字がどうとか、使い分けがどうとか、漢検がどうとか、まあいろんなジャンルのいろんな本を見ることができます。その中でいわゆる「漢字の成り立ち」的なことに関連した本もまた一定以上見られます。 こうした本において、作者の自己紹介や序文・後記を見てみると、過去に漢字を研究したことはなく、漢字に関連した仕事もしたことがないということ
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