
作画監督の近藤勝也さんが明かす「ポニョのモデルはうちの娘なんです」
『崖の上のポニョ』の作画監督は近藤勝也さんです。ジブリ作品では『魔女の宅急便』や『コクリコ坂から』を手掛けたことでも知られています。
その近藤さんが『ジブリの教科書15 崖の上のポニョ』(文春ジブリ文庫)の中で、キャラクター設定の裏事情について明かしています。それによると、ポニョの父であるフジモトのモデルは近藤さん自身だったそうです。

🗣️ 「宮﨑さんが僕の家庭を見て、かなりインスパイアされたみたいですよ(笑)」
🗣️「(宮﨑監督によると)僕はフジモトなんだそうです。アフレコでも、フジモトの件で指示出しする時に『近藤君はこうなんだ』なんて言っていたらしいですから、かなりモチーフになっているんですよ」
続けて、ポニョのモデルについても明かしています。なんと、近藤さんの幼い娘さんだったそうです。
🗣️「ポニョのモデルはうちの娘なんです。実際、仕事で説明する時にも宮﨑さんは『ポニョ』とは言わないで、うちの娘の名前で呼ぶんですよ」
「ポニョだよ、まさに!」アルバムを見た宮﨑監督が感激
NHKが制作したDVD5枚組のドキュメンタリー『ポニョはこうして生まれた。 宮崎駿の思考過程』。12時間半にも及ぶ長大な内容ですが、その中に宮﨑監督がポニョのキャラクターを生み出すまでが如実に描かれています。
2006年5月9日に収録された映像では「宮﨑さんは作画監督の近藤さんに娘を手がかりにしてポニョを描くように勧めました」というナレーションがありました。近藤さんが「最近の写真も持ってきたんですけど、可愛いでしょ」と、当時1歳ごろの娘さんのアルバムを宮﨑監督に見せる様子が写っていました。
表情豊かなその姿を見た宮﨑監督。「ポニョだよ、まさに!ポニョだよ、ポニョだ。半魚人だ」と感激した様子で笑っていました。
その約2週間後の5月25日、宮﨑監督はキャラクター達のイメージボードを描きあげています。主人公のポニョをどんなキャラクターにするか。大きなヒントとなったのは、やはり近藤さんの娘でした。
近藤さんのぼやきがヒントに! 宮﨑監督がめざした「わがままなヒロイン像」とは?
近藤さんは「うちは未だにダメなんですよ。持たないんですよ。遊びの物は持つんですけどね」と、娘が1歳になったのにも関わらず、親が哺乳瓶で飲ませてくれないと怒るのだとぼやきました。
すると、宮﨑監督は「そういう子なんですよ。そんなハンパな子じゃないんだって。大変な子なんですよ」と応答。近藤さんの発した何気ない言葉が後にポニョのキャラクター像を決定づけることになります。

宮﨑監督は作中でも流れるワーグナーの楽曲『ワルキューレの騎行』をかけながら、クラゲに囲まれた魚の姿をしたポニョを描いていきますが、ポニョの目がつり上がっています。宮﨑監督は描きながら、こう話します。
🗣️「さっきの近藤君の話で、顔がやばいことになった。哺乳瓶を持たないって。全くこしゃくな娘」
🗣️「お姫様として生まれたみたいだね」
ナレーションでは「ただ可愛いだけではなく、気が強く、欲しいものは『何でも欲しい』と言うわがままなヒロイン像が見えてきました」と分析していました。
「宗介に会いたい」という気持ちで大波の上を走り抜ける活発な少女像。ポニョのキャラクター設定は、作画監督の近藤さんの一言がヒントになったのでした。