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ブラックフライデー
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メラノーマ細胞の3次元微細構造スキャンの着色画像。最新の研究により、フェロトーシス制御タンパク質1(FSP1)を阻害すると、マウスの転移性メラノーマ細胞が細胞死しやすくなることが示された。(SRIRAM SUBRAMANIAM, NATIONAL INSTITUTES OF HEALTH/SCIENCE PHOTO LIBRARY) がんの広がりを遅らせる新たな標的が見つかったかもしれない。がん細胞を自滅させるように操作できるタンパク質だ。 2025年11月5日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された2つの論文によれば、研究者らは「フェロトーシス抑制タンパク質1(FSP1)」に注目している。「フェロトーシス」は、細胞を内側から破壊する細胞死の一つだ。FSP1は、この細胞死を防ぐ最も強力なメカニズムの一つを担っている。 FSP1の機能を無効化すると、細胞は死滅しやすくなる。がん細胞で無効化でき
ソテツの雌花(種子錐)に授粉するゾウムシの仲間ロパロトリア・フルフラケア(Rhopalotria furfuracea)。最新の研究で、ソテツの雄花(花粉錐)や雌花は自ら発熱して赤外線を放ち、赤外線を感知できる花粉媒介者を誘引していることが分かった。(LILIAN SOUCEY) アマゾンに夜のとばりが下りると、ソテツはとうもろこしの芯のように突き出た雄花から、近くにいるゾウムシたちに花粉を届けてくれと呼びかける。その“呼び声”は、植物たちが自らの温度を上げて放射する赤外線だ。ソテツは自らの温度を周囲より最大15℃も高くできる「発熱植物」として知られている。この発熱によって放射される赤外線が花粉媒介者のゾウムシを引き付けることと、これが最古の花粉媒介シグナルの1つであることを科学者が初めて明らかにし、論文が12月11日付けで学術誌「サイエンス」に発表された。 「間違いなく驚くべき発見です」
透過型電子顕微鏡で撮影されたヒトパピローマウイルス(HPV)の着色画像。HPVは、ほとんどの子宮頸がんの原因となるウイルスだ。(JAMES CAVALLINI, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 2025年、科学はいくつかの驚くべき成果をもたらした。医学界でも、人間の健康への理解や、医療の提供のあり方を変える画期的な発見が相次いだ。 以下では、アナフィラキシーを治療する鼻スプレーから、更年期障害の新しい薬、再生医療の躍進、続々と明らかになるワクチンの「一石二鳥」効果まで、とりわけ印象的な9つの発見を紹介しよう。 1. 注射針のいらない緊急用アレルギー薬 重度のアレルギーを持つ子どもにとって、簡単ですぐに効くエピネフリンはなくてはならない存在だ。1回の投与でアナフィラキシーショックによる炎症の連鎖反応を止め、入院や死を避けられる可能性もある。しかし、子ども本人も大人も、エピネフリ
ロシアのヤクーツクにある永久凍土王国博物館に展示されていたケナガマンモスのユカ。(ALBERT PROTOPOPOV) シベリアの凍土に眠っていた約4万年前のケナガマンモス(Mammuthus primigenius)の「ユカ」からRNAが抽出された。2025年11月14日付けで学術誌「Cell」に掲載されたこの成果は、史上最古のRNA配列であり、ケナガマンモスのRNAが抽出された初の事例となる。 科学者たちは数十年にわたり、ユカのような保存状態の良いケナガマンモスの標本の古いDNAについて研究してきた。これらの遺伝物質の断片は、ケナガマンモスのゲノム(全遺伝情報)を特定するのに役立ち、マンモスが現生のゾウとどれほど近いかを明らかにしてきた。(参考記事:「100万年前のマンモスのDNAを解読、史上最古、定説白紙に」) 対して、RNAについては困難を極めていた。特定の遺伝子を活性化させ、重要
さて、今度はもう一つ、別の図表を見てほしい。 さきほどの図表が「歴史」だとすれば、今度は「地理」だ。地球生命圏と岩石圏の相互作用の中で絶えず変化し、形作られてきた土には、今どんな種類のものがあるのだろうか。 土壌学的には12の類型がよく使われるという(アメリカ農務省の土壌分類体系)。図表は、世界地図を色分けしてそれらを示したものだ。 ユーラシア大陸のウクライナやロシア南部に広がる穀倉地帯の土、チェルノーゼムは、中学高校の地理で習った懐かしい名前だ。北米や南米の草原地帯にもチェルノーゼムはあるらしい。熱帯に見られる真っ赤なフェラルソル(ラトソル)は、かつてラテライトと教わったものを含むもののようだ。砂漠土、凍土、泥炭土といったふうに言葉から想像しやすいものがある半面、見慣れないものも多い。 ちなみに日本には黒(くろ)ぼく土という火山灰由来の黒い土があり、また、未熟土、褐色森林土も多いという。
2017年にグリーンランドのタシーラク・フィヨルドで撮影したオーロラ。オーロラは畏敬の念を引き起こすことがある。科学者によれば、畏敬の念は心拍数を下げ、ストレスを和らげるほか、脳や体にさまざまな変化を起こす。(PHOTOGRAPH BY RALPH LEE HOPKINS, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 畏敬の念は、私たちをはっと立ち止まらせる力を持つ。それは静かに忍び寄ることもある。裏庭を横切るシカの足音のように。あるいは、突然訪れることもある。胸を打つ音楽のうねりや、目の前に現れた広大な星空のように。 「畏敬の念は、平凡の下に無限が潜んでいることを思い出させてくれます」と米バンダービルト大学の神経科学博士研究員ハリ・スリニバサン氏は言う。 こうした瞬間はつかの間のように感じられるかもしれないが、心と体に永続的な痕跡を残すと科学者は言う。米スタンフォード大学などの2
土、というのは、とても日常的で、ほとんどの人にとって、すぐそこにあるものだ。都市生活者ですら、ひとたび外出すれば、土を見ないで一日を終えることは難しいし、そもそも、わたしたちが住んでいる家屋の下は、まず間違いなく土だ。 しかし、「土とはなにか」と聞かれると、とたんに言葉に詰まる。「粘り気がある土」「さらさらした土」「赤い土」「黒い土」といったふうに、性状を表現する言葉ならいくらでも思いつくけれど、土の土たる所以というのは、捉えがたい。 そんな中、土の研究者である藤井一至さん(福島国際研究教育機構・土壌ホメオスタシス研究ユニットリーダー)が、土をめぐるスケールの大きな一般書を連続して出版し、その都度、楽しく読んだ。いや、それどころか、読む前と後では、世界の見え方が変わるほどの衝撃をおぼえた。
プロジェクトCETIの研究者たちは、ゾウの音声コミュニケーションをヒントにしてマッコウクジラがヒトの母音に似た音を発していることを発見した。クジラの「会話」を再現した音声は0:57前後~。(解説は英語です)(VIDEO BY PROJECT CETI) ザトウクジラの美しい歌声と比べると、マッコウクジラが発する音は音楽とは程遠い。金属のくしの歯を爪で引っかくような、あるいは水中削岩機のような、力強いスタッカートのクリック音を放つ。しかし、科学者たちはいま、マッコウクジラが動物界で最も洗練されたコミュニケーションシステムのひとつを持っていることに気づき始めている。 2025年11月2日付で学術誌「Open Mind」に発表された最新の研究成果は、マッコウクジラ(Physeter macrocephalus)の声にヒトの母音に相当する働きがあることを明らかにした。これにより、マッコウクジラのコ
三重県伊勢市のかんこ踊り(左)とベナン共和国のエグングン(右)。(PHOTOGRAPH BY URUMA TAKEZAWA) 2025 写真が記録した1年 旅する写真家、竹沢うるまさんの写真展「Boundary|中心」開催に合わせて、作品10点とともに撮影ストーリーを紹介します。 これまで多くの国と地域を旅してきた。その大半が、いわゆる“僻地(へきち)”と呼ばれる場所だった。薄い空気に喘ぎながら山脈を越え、広大な草原を馬で走り、荒涼とした礫砂漠を進む。その先で暮らす人々に出会うとき、私はいつも世界の中心にたどり着いたよう気になる。 “僻地”とは相対的な概念である。自分がいるところを軸として、そこから遠く離れた場所。それは地理的、概念的、どちらでも構わないが、とにかく自身の領域外に存在する未知の世界である。しかし、どれだけ遠いところまで行こうとも、そこにはいつも人が住み、彼ら独自の価値観と伝
最近の研究で、ハーブ系を含むサプリメントの中から、うつに対する効果が実際に見られたサプリとそうでないものが明らかになってきた。(MATT PROPERT, NATIONAL GEOGRAPHIC IMAGE COLLECTION) 本来は栄養の不足を補うためのものだったサプリメントが、今やメンタルヘルス市場で注目を集めている。 世界保健機関(WHO)によれば、世界では成人の5.7%がうつを抱えていると推定されるなか、少しでも症状を軽くできればとの思いから、ビタミンやミネラル、ハーブエキス、アミノ酸、プロバイオティクス(健康に良い影響を与える微生物)など、市販のサプリメントに頼る人が増えている。その背景には、入手しやすさだけではなく、イメージもある。 「メンタルヘルスには依然として強い偏見があり、とりわけ薬による治療となると、人からどう見られるかに不安や恐れを感じる人も少なくありません」と、
恐竜時代の海で大繁栄していたアンモナイトは誰もが名前を知る古生物ですが、実はその生態や「殻の外」の姿は今もよく分かっていません。NHK「ダーウィンが来た!」が最新の研究を踏まえてそれらの謎に迫ります。同番組ディレクターの植田和貴氏(NHKエンタープライズ 自然科学部)に見どころを語っていただきます。(編集部) 皆さんはアンモナイトをご存じだろうか? 古生物、絶滅動物に興味がない人でさえ、その名前は聞いたことがあるに違いない、「恐竜の王者ティラノサウルス並みに有名」と言っても過言ではない古生物だ。今回の「ダーウィンが来た!」(2025年12月7日放送予定)では、そんな有名古生物・アンモナイトを私が番組ディレクターとして取り上げる機会を得た。 取材を進めると実はアンモナイト、その名前は有名でありながら、その正体、生態はいまだ多くの謎に包まれていることが分かってきた。今回の記事では番組内容の一部
脳の白質を走る神経線維に色を付けた拡散テンソル画像。この線維に沿った水の移動を追跡することで、年齢とともに脳の配線がどのように強化、変化、劣化するかを地図化できる。(MARK AND MARY STEVENS NEUROIMAGING AND INFORMATICS INSTITUTE/SCIENCE PHOTO LIBRARY) 加齢とともに私たちの脳が変化することはよく知られている。言語を学ぶにしても、新しい技術を習得するにしても、脳神経回路の新たなつながりの築きやすさは、一生の間に変化する。しかし最新の研究で、その変化がどれほど劇的で法則性があるかが明らかにされた。 英ケンブリッジ大学が発表した論文によると、人間の脳の発達は一生のうちに5つのはっきりと異なる段階を経るという。そして、各段階を区切る4つの転換点が、9、32、66、83歳頃に訪れる。つまり、これら4つの時期が節目となり、
母親である女王アリを殺したのち、寄生性のテラニシクサアリ (Lasius orientalis)を女王として受け入れるキイロケアリ(Lasius flavus)の働きアリ。(TAKU SHIMADA) アリの巣の中では、『ゲーム・オブ・スローンズ』も顔負けのドラマが繰り広げられている。敵の軍勢を操って指導者を攻撃させ、王国をまるごと乗っ取るアリが存在するのだ。11月17日付けで学術誌「Current Biology」に掲載された新たな研究によると、ある種の女王アリは、まるでドラマに出てくるような策略を駆使して、別の種の女王アリをその王座から追い落とすという。このアリは、働きアリを騙してそのアリたちの母である女王を殺害させたうえ、自らが新たな女王の座に収まって働きアリを使役する。 このゾッとするような習性を最初に発見したのは、専門の研究者ではなく、あるアリ愛好家だ。2021年、普段からアリを
南アフリカ、クルーガー国立公園の岩の上でくつろぐヤマネコ(Felis lybica)。(RICHARD FLACK, NATURE PICTURE LIBRARY) 街の雑貨屋でも離島でも、あらゆる場所で見かけるネコ。しかし、人はいつ、どこで野生のネコを飼うようになったのだろうか? この謎解きは簡単ではないが、古いネコの骨のDNAを広く分析した研究の結果から、従来の説とは異なり、現在のイエネコ(Felis catus)の起源は北アフリカで、ヨーロッパにやってきたのはわずか2000年ほど前であることがわかった。論文は11月27日付けで学術誌「Science」で発表された。 考古学や古い遺伝子の研究に基づいた従来の説によると、イエネコを飼い始めたのは1万年ほど前の中東で農業をしていた人々で、ネズミの駆除に役立つことから、ヨーロッパに移住する際に連れていったとされていた。(参考記事:「イエネコの
生物が多様化した顕生代を通して、地球の気候は温暖なときもあり寒冷なときもあった。その中で幾度となく、急激な気候変動も起こってきた。 過去5回の大量絶滅では、気候変動が必ず起こってきたことがわかってきた。その究極の原因は,火山活動や小惑星の衝突(白亜紀末)にあるとされている。しかし、こうした究極の原因がどのように気候を変化させ、生物の絶滅につながったかは、連載の第1回でも語られたように時代ごとに様相が異なっている。 第6の絶滅が起こっているまさに今、過去と比べて現在はどんな点が共通していて、どんなところが異なっているのだろうか。気候変動と大量絶滅の関係は、将来の地球温暖化と生態系の変化を予測することにも深く関わってくる問題なのでこれまで多くの研究で調べられてきたのである。 そこで今回は、火山活動が気候変動につながり、大量絶滅が引き起こされる条件について、気候の重要な要素の一つである温度(気温
トリケラトプスやアンキロサウルス、ステゴサウルスの恐竜型メカニカルスーツが観客の目の前を歩く(ON-ART提供) 「こんなにすごい生き物がいたんだ」と感じてほしい――。そうした思いから、東京都立川市の株式会社ON-ART(オンアート)の金丸賀也(かずや)社長は、見た目も動きもリアルな「恐竜型メカニカルスーツ」のライブイベントを各地で開いている。 金丸さんは東京芸術大学の出身で、博物館の展示物制作に携わっていたとき、硬い強化プラスチックを用いることに違和感があった。試行錯誤する中で、軟らかい樹脂に色を塗り重ねることで動物の皮膚の透明感や、皮膚の下の脂肪や血液の質感を再現できると気づいた。 2005年、人が中に入って操縦する恐竜型メカニカルスーツの制作を始めた。現在はティラノサウルスやステゴサウルスなど37体。最新の研究を参考にしながら作っており、例えばトリケラトプスは、化石の知見をもとに棘(
Y染色体をもたないのに雄が生まれてくる不思議。その長年の謎が少しずつ解き明かされつつある。 哺乳類の染色体は雌が「XX型」、雄が「XY型」と学校で習った。だが、1977年にY染色体をもたない生物がいることが判明。しかも、生まれるはずのない雄がいるという。そんな常識外れの生物が、奄美大島だけにすむアマミトゲネズミだ。 Y染色体はどこへ行ったのか? この報告に衝撃を受けたのが、当時まだ博士課程の学生だった北海道大学の教授、黒岩麻里さんだ。そして、約20年にわたってトゲネズミの性染色体を研究し、今回、東京科学大学や久留米大学の研究者らと共同で、より詳細なゲノム解読に成功した。 Y染色体のないトゲネズミは、性を決定する役割をもつ「Sry遺伝子」を失っているが、解読の結果、本来Y染色体にあるはずの遺伝子が7個、X染色体にあることを確認。現在のゲノム構造になった過程についても一定の仮説を導くことができ
進化によって獲得したとても重要な機能なのに、少々厄介な性質ももつ「記憶」。それは、私たちの心の最も不思議な謎の一つだ。必死で覚えようとしても忘れることがあるのに、特に努力しなくても覚えていることがあるのはなぜだろう? 記憶力を高める方法はあるのだろうか? 答えを求めて、私たちは記憶の科学の最前線にいる研究者たちに話を聞いた。最新の技術が記憶の回路を“ショート”させかねないことや、自分の弱点を認識することができる新しい記憶力テストの方法、さらには脳の潜在的な能力を最大限に生かすための科学的根拠に基づく秘訣を紹介しよう。 <記憶の変容> 「スマホで撮った大量の写真」が私たちの記憶を変える? スマートフォンで撮った膨大な写真をいつでも見られたら大切な思い出を失う心配はない。ただし、その便利さが記憶の形成に及ぼす影響も見落とせない。 英国バーミンガムに住む38歳のラバニア・オルバンは、子どもの頃の
現在のギザのピラミッドは砂漠の真ん中にあるが、4600年前、この地は特定の季節だけ利用される港だった。(PHOTOGRAPH BY ALEX SABERI) 古代の日誌と失われた川の発見により、ギザの起源にまつわる驚くべき新説が浮かび上がってきた。 ピラミッドの謎を追い続ける人類 ギザのピラミッドほど、私たちの好奇心をかき立ててきたものはない。 4600年前、エジプトの古王国時代に建造された三つのピラミッドは、クフ王、その息子のカフラー王、孫のメンカウラー王の3人のファラオの亡きがらを納め、祭るためのものだった。クフ王の大ピラミッドの建造当初の高さは147メートル。その後、数千年にわたり、世界一高い人工の構造物として君臨した。人類の創意工夫と想像力を象徴するピラミッドだが、建造されてまもない頃から、多くの謎に包まれている。 特に注目されてきた最大の謎は、そもそもどうやって建造されたのかとい
【動画】ホホジロザメを狩って分け合うシャチの群れ、カリフォルニア湾 肝臓を含めホホジロザメを狩って分け合う様子は1分22秒前後~。※動画を拡大して表示させるにはピンチアウトまたはダブルクリックしてください。(Video credit: Erick Higuera & Marco Villegas) シャチの群れが若いホホジロザメを追い詰め、動けなくした後、体にかみついて肝臓を取り出した。研究者らはこの珍しい行動を2025年11月3日付けで学術誌「Frontiers in Marine Science」で報告した。シャチが若いホホジロザメを狩る事例は、カリフォルニア湾では初めての報告であり、世界でも2例目だという。(参考記事:「【動画】ホホジロザメをソロで狩るシャチ、初の報告、2分の早業」) シャチがホホジロザメを狩る行動については、現在、世界中で研究が進められている。 「信じられない映像で
カニを取るために仕掛けられたかごを引き上げるオオカミ。(VIDEO BY HAÍⱢZAQV WOLF AND BIODIVERSITY PROJECT) カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州の海岸で、侵略的外来種のヨーロッパミドリガニ(Carcinus maenas)を取るために、先住民のヘイルツク族が仕掛けたカニかごが何者かによって壊される事件が2023年から相次いだ。犯人を突き止めるため、ヘイルツク族と協力して科学者たちが現場にカメラを設置したところ、かごのなかの餌を盗んで食べるオオカミ(Canis lupus)の姿がとらえられた。これは野生のオオカミによる道具の使用が報告された初の事例ではないかと、2025年11月17日付で学術誌「Ecology and Evolution」に発表された論文の著者らが主張している。 「すべての動きは完全に効率的」 かごのなかには、カニをおびき寄せる
脳卒中患者の頭部CT画像をカラー表示したもの。右側頭葉に大量の出血が見える。最新の研究により、過度の飲酒と大規模な脳出血との関連が示唆された。(LIVING ART ENTERPRISES/SCIENCE PHOTO LIBRARY) 酒を飲み過ぎると血圧が上昇し、肝臓が傷つくことは以前から知られていたが、新たな研究により、脳にも大きな打撃を与える恐れが示唆された。命にかかわる脳出血を引き起こす可能性だ。 米マサチューセッツ総合病院出血リスク・脳卒中予防クリニックのディレクターであるエディプ・グーロル氏のチームが発表した最新の研究結果によると、過度の飲酒をする人は、あまり飲まない人や全然飲まない人に比べて脳出血をより早く発症し、出血量の多さ、脳の損傷の大きさ、致死率の高さなどの点で、より悪い結果になっていたという。 この研究は観察研究であり、因果関係を証明するものではない。また、飲酒の量に
マントノン女侯爵フランソワーズ・ドービニエ(1635~1719年)の肖像画。1694 年頃、ピエール・ミニャール(1612~1695年)による油彩画。フランス、ベルサイユ宮殿所蔵。(PHOTOGRAPH BY BRIDGEMAN IMAGES) 1683年秋のある晩、ろうそくの明かりに照らされたベルサイユ宮殿の教会で、密かに結婚の儀が執り行われた。 花婿は、ほかでもない、「太陽王」と呼ばれたフランス国王ルイ14世(45歳)。花嫁は、貧しい家の出身で、国王の子どもたちの教育係をしていたマントノン女侯爵(マントノン侯爵夫人)(48歳)だった。参列者は王の聴罪司祭とパリ大司教のみで、結婚が正式に登録されることはなかった。 こうして、ベルサイユ宮殿内部にも外の世界にも知られることなく、マントノンは無冠のフランス王妃となった。 ルイ14世(1638~1715年)とマントノン女侯爵フランソワーズ・ドー
地中海食は世界で最も健康的な食事法のひとつだ。積極的に取るべき食品と避けるべき食品の基本原則はあるが、それをベースに、健康状態や味の好みに合わせたアレンジもできると専門家らは言う。(ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC IMAGE COLLECTION) 地中海食は世界で最も健康的な食事法のひとつだと聞いたことがあるだろう。実際、さまざまな健康効果や長寿との関連が示されている。こうした利点や、十分に研究されているという事実が、この食事法を信頼できるものにしている。しかし、地中海食には厳格な基準があるわけではないという点は、あまり知られていないかもしれない。 「地中海食は本質的にフレキシタリアン(柔軟なベジタリアン)です。基本原則を取り入れた上で、自分に合う方法で食事と関連する病気に応用できます」と予防医学の専門家デイビッド・L・カッツ氏は話す。「基本テ
地球の月とは異なり、準衛星は地球の重力に捕らえられておらず、実際には太陽の周りを回っている。しかし地球とほぼ同じ軌道と公転周期を持つため、地球からは、あたかも地球の周りを回っているように見える。(DETLEV VAN RAVENSWAAY, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 太陽系にわくわくするようなニュースが飛び込んできた。学術誌「Research Notes of the AAS」に先ごろ発表された論文によると、ビルほどの大きさの謎の小惑星が、地球と並走して太陽の周りを回っていることが分かったのだ。PN7と名付けられたこの天体は、2025年の夏まで天文学者も知らなかったが、60年ほど前から「準衛星」としてひそかに地球に寄り添っていた。 米メリーランド大学の天文学者であるベン・シャーキー氏がPN7について最初に聞いたときに思ったのは「また見つかったか、クールだな」。というのも
エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)のカラー化透過型電子顕微鏡画像。新たな研究によると、ほぼすべての人が保有しているこのウイルスは、重要な免疫細胞を変化させて、全身性エリテマトーデスの引き金となる可能性があるという。(James Cavallini, Science Photo Library) 科学者は何十年も前から、大半の人が子どものときに感染する一般的なウイルスが後年、「全身性エリテマトーデス(SLE)」と呼ばれる、体じゅうのほぼすべての臓器を損傷しうる慢性的な自己免疫疾患を引き起こすと考えてきた。しかし、このウイルスがなぜSLEを引き起こすのか、その正確な関連性について、はっきりとしたことはわかっていなかった。 今回、米スタンフォード大学の新たな研究により、その「なぜ」を説明するこれまでで最も明確な手がかりが示された。 「世界の成人のおよそ95%はEBウイルス(エプスタイン・バ
大腸内視鏡検査は命を救う検査だが、不快さから受けたがらない人は少なくない。(PHOTOGRAPH BY ELENA KHARCHENKO, GETTY IMAGES) 医師が肛門からカメラを挿入し、がん細胞やがんになる可能性のある細胞を探す検査は、決して楽しいものではない。それでも、大腸がんの検査ではこれ以上に効果的な方法は存在しない。2025年4月に発表された、ヨーロッパで数万人を追跡した研究によると、定期的な大腸内視鏡検査によって、大腸がんの発症率は最大41%減少し、大腸がんの死亡率は最大29%減るという。 それでもなお、米疾病対策センター(CDC)によると、50~75歳の米国人の30%近くが大腸がん検査(便潜血検査などを含む)を受けていない(編注:日本の国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」によれば、40~69歳の日本人の50%超が大腸がん検診を受けていない)。 中に
米ワシントンDCで、「モンキー裁判」の評決を伝えるラジオ放送を聞くサル。(Photograph by Underwood Archives/Getty Images) チャールズ・ダーウィンの進化論は科学的事実か、またはキリスト教に反する危険な異端思想なのか。1925年、米国テネシー州の24歳の代行教員だったジョン・T・スコープスは、高校で進化論を「教えた」と自ら告白して逮捕され、歴史的裁判の被告人となった。テネシー州が公立学校で進化論を教えることを禁じる法律を制定したからだ。 法曹界の伝説として今も語り継がれるスコープス裁判、通称「モンキー裁判」では、進化論という科学的信念と、地球も人類も神によって創造されたとするキリスト教プロテスタントの信仰が真っ向から衝突し、教育の自由、科学的探究、証拠に基づく科学など、現代にも通じる疑問を投げかけることとなった。(参考記事:「進化論論争は終わらない
2025年の秋から東京・上野の国立科学博物館で開催される特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」。40億年の生命の歴史の中でも特に大規模だった5回の絶滅はなぜ、どのように起こったのか。そして、生命はどうやって乗り越えてきたのか。同展の監修者5人が展示の見どころとともに選りすぐりのトピックスを解説します(編集部)。
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