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ブラックフライデー
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2025年11月21日(金)より4Kデジタルリマスター版が劇場公開となる映画『落下の王国』。 デザイナー / アートディレクターの石岡瑛子が衣装を手がけたことでも知られる、この壮大で幻想的な自主制作映画は、2008年に日本公開されて以来シネフィルからの熱烈な支持を集め、廃盤となったDVDは中古価格が高騰するなど、約20年が経った現在も人々を魅了し続けている。 社会学者の中井治郎も、本作に魅せられた一人だ。『落下の王国』はなにがそんなに特別なのか。中井にその魅力を論じてもらった。 ※本記事には映画の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。 映画を見たことがない少女の見る夢 とても奇妙で、そして愛おしい。宝物のような映画である。 僕自身、数えきれないほど多くの知人や友人にこの映画を紹介してきた。 ある人は言った──「おかしい。なぜ私は今までこの映画を見ていなかったのか」 ある人は
2025年9月、BABYMETALについての音楽評論家・湯川れい子、ミュージシャン・近田春夫のXでの投稿が「炎上」した。湯川は、(BABYMETALは好きだとしつつも)彼女たちが自分で演奏していない点について「人形浄瑠璃」のようだと指摘。近田もそれに同調し、「彼女たちに『表現の主体性』がないとしたら、音楽的な興味はない」という趣旨のポストをしたところ、ファンから猛反発を受けたという経緯だ。 この件について音楽ライター / 批評家3人に語り合ってもらったところ、議論は「ジャンルにとっての真正性=オーセンティシティ」をめぐって大きく展開した。 自作自演だけが偏重される時代を超えて、多様なポップミュージックのあり方と、その折衷的な存在の面白さについて考える。座談会「What’s NiEW MUSIC」第6回。 ベビメタ論争と「ロッキズム」という問題 —BABYMETALをウォッチしてきた清家さん
「良質であるが聴かれてはならない」——『ワン・バトル・アフター・アナザー』がかくもスリリングなわけ かつて革命組織で爆弾工作員だったパット / ボブ(レオナルド・ディカプリオ)が、子育て期間を経て娘(ウィラ)を奪還するために駆けずり回るサスペンス・アクション映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』。 『ワン・バトル・アフター・アナザー』日本版予告 あらすじ:かつて革命運動に携わっていたボブ(レオナルド・ディカプリオ)が、16年ぶりに姿を表した敵と対峙し、誘拐された娘を救い出そうと奮闘するサスペンス・アクション。ボブは反乱組織「フレンチ75」に所属し、アメリカ・メキシコ国境付近の収容施設を襲撃するなど、軍と対立していた。その後、16年を経てボブは娘ウィラと共に隠遁生活を送っていたが、過去の敵ロックジョー(ショーン・ペン)が再び動き出し、ウィラが誘拐されてしまう。ボブは、娘を取り戻すため孤立無
前作『Ampelsands』(2020年)から5年の歳月を経てリリースされた3作目のアルバム『All About McGuffin』を、mei eharaは自ら「第一章の最後の作品」と位置付けている。今、手元にあるもの、これまで捨てたり無くしてきたもの、それらすべてが大切で、同時にすべてが代替可能なものである——そんな想いが込められた本作は、痛みや揺らぎを抱えながら、着実に歩んできた彼女の冒険譚でもあり、同時に彼女と同じ時代を生きる我々のための物語でもある。 この5年間で、深く自分自身の内面と向き合いながら、諦められること、諦められないことを取捨選別できるようになったというmei eharaは今、「究極に自分勝手に生きている」と語る。自身初のアメリカでのヘッドラインツアーの最中にインタビューに応じてくれた彼女に、一つの物語であり、ファンタジーであり、RPG的であり、同時にある種の生々しい記
Oasis復活の報からおよそ1年。ついにイギリス・カーディフ公演を皮切りに日本国外でのツアーが幕を開けた。10月には日本公演も控えている中、日本国内の夏フェスでもツアーのマーチをまとった人が多く見られ、日本からの現地参戦組も多く見られる。マンチェスター公演に参加したお笑いコンビ・かが屋の賀屋による現地参加レポをお届けする。 賀屋壮也 (かやそうや) 1993年、広島県呉市出身。お笑い芸人・タレント。東京学芸大学在学中にバイト先のコンビニで相方の加賀翔と出会い、2015年にかが屋を結成。2019年、2022年に『キングオブコント』決勝進出を果たしたほか、『第46回ABCお笑いグランプリ2025』でもファイナリストになるなど、数々のお笑いコンテストで活躍。個人としてもR-1グランプリ2021決勝進出を果たす。 賀屋少年にとって「遠い国のお話」だったOasisの解散。大人になった賀屋はイギリスへ
2025年8月23日(土)、長崎大学でトークセッション『あたらしいハコモノのカタチ~地域における公共施設の可能性~』(以下、『あたらしいハコモノのカタチ』)が開催された。同イベントに登壇したのは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文と、その友人でNPO法人アップルビネガー音楽支援機構代表理事の小林亮介、そして音楽評論家の柳樂光隆。人口減少や高齢化が進む地域社会における公共施設の役割について、芸術文化のみならず教育や地域振興にまで広がる可能性を多角的に語り合った。進行役を務めたのは、長崎市の文化芸術施設チトセピアホール館長で、市内の公民館や市民活動センターの指定管理を行う、地域のプレイヤー出口亮太。 本記事では前半でトークセッションの模様をレポート。後藤は若手ミュージシャンの経済的負担を減らし、自由な音楽制作を支援する滞在型音楽制作スタジオ「MUSIC inn Fuji
『水曜日のダウンタウン』を筆頭に、飽くなき攻めの姿勢で作品を作り続けるTVディレクターの藤井健太郎。 スペースシャワーTVのアーカイブサイト「DAX」のインタビュー企画「My Favorite X」特別編として、NiEWにてテキスト形式でのインタビューが実現。 ヒップホップに傾倒した経緯から、 地上波マスメディアで賛否を呼ぶ番組を作り続ける意図を語ってもらった。 ヒップホップ好き、藤井健太郎の10代 ―相変わらずお忙しそうで。 藤井:ありがたいことに配信系の仕事もオファーを頂くので、可能な範囲で受けつつ、そういった配信番組も『水曜日のダウンタウン』も全部編集は自分でやっちゃっているので、「この齢でまだ徹夜するのか……」とか思いながら、相変わらず休みなくやってます。 ―でも、自分で編集しないと気が済まない。 藤井:そうですね(笑)。やると結局そうなっちゃうので、これ(『水曜日のダウンタウン』
青葉市子は途方に暮れるほどの長い旅を続けている。2025年2月の香港公演を皮切りに、3月のバルセロナから4月のグラスゴーまではヨーロッパを、4月のホノルルから5月のメキシコシティまでは北米を回り、6月はイギリスの老舗フェス『Glastonbury Festival』に出演も果たした。下半期は久々の日本ツアーを行うなど、ギターを抱えてひたすら移動を続けている。 過去最大規模のワールドツアーに先駆け、2月には新作『Luminescent Creatures』をリリース。ここには近年忙しいスケジュールを縫って足繁く通っている沖縄・八重山諸島の波照間島での経験も色濃く反映されており、世界的なブレイクのきっかけとなった前作『アダンの風』(2020年)とも異なる風が吹き抜けている。 ローカルに息づくものを丹念に見つめながら、グローバルな活動を展開している青葉市子。彼女は波照間島で何を受け取り、何を世界
誰かから相談を持ちかけられて、それにちょうどいい塩梅で答えるというのは、想像以上に難しい。 自分では的確なアドバイスをしたつもりでも、上から目線のハラスメントになる可能性はいくらでもあるし、かといって「人それぞれ」でお茶を濁しては何も言っていないに等しい。 誠実に答えようと思えば思うほど身動きが取れなくなる。しかし、「とにかくやるんだよ!」のような暴力的な精神論を振りかざすよりは、黙っている方がマシな気もする。 どんな顔して話を聞いて、何を言えばいいんだろう。本当に難しい。ここは一つ、人生相談に乗っている人たちに、どうやっているのかを聞いてみるのがいいんじゃないか。そこから「他者との一歩踏み込んだコミュニケーション」の作法を見つけることができるかもしれない。 最初にお話を聞いたのは、RHYMESTERの宇多丸さん。音楽活動にラジオDJ、映画評論と多岐にわたる活躍をしながら、実は長年人生相談
能 狂言『日出処の天子』。発表から40年が経った今も熱く支持される伝説的漫画作品の舞台化とあって、制作が発表された当初から話題となり、チケットは即完。たちまち追加公演も発表された。 原作の耽美な世界は、古典芸能にどのように翻案されたのか。2025年8月9日(土)公演の模様を、ライターの塚田史香がレポートする。 センセーショナルな名作漫画が能舞台に 8月7日から10日に、GINZA SIXの地下・観世能楽堂で能 狂言『日出処の天子』が上演された。山岸凉子の同名漫画を原作に、野村萬斎が構成・演出を手掛け、厩戸王子(うまやどのおうじ)役をつとめた。さらに大槻文藏が監修し、穴穂部間人媛(あなほべのはしひとひめ)役で出演している。 原作の漫画は、1980年4月号から1984年6月号まで雑誌『LaLa』で連載された。貴族たちが権力争いを繰り広げる飛鳥時代を舞台に、厩戸王子=聖徳太子と蘇我毛人(そがのえ
コロナ禍によって大きなダメージを受けた2020年代初頭のライブハウスシーン。しかし、そこから息を吹き返した2025年現在では、エモ、ポストロック、シューゲイザーなどの影響を感じさせるオルタナティブなロックバンドが多数頭角を現し、新たなシーンが形成されている。彼らはどんなバンドに影響を受け、どんな精神性で活動を続け、どんな未来が待っているのだろうか? そんな現在のシーンを俯瞰するべく、現役のバンドマンであり、レーベルオーナーでもある2人、辻友貴と中川航による対談を実施。cinema staffのギタリストとしてメジャーシーンでも活動しながら、2010年代半ばにインディレーベル「LIKE A FOOL RECORDS」を設立し、2015年にオープンしたレコードショップ(兼飲み屋)が2025年で10年目を迎えた辻。数多くのバンドにドラマーとして関わりながら、インディレーベル「ungulates」
早いもので、2025年ももう残すところ半分。NiEWでは、上半期に生まれたさまざまな音楽作品やシーンの動向を振り返るべく、座談会を実施しました。 参加してくれたのは、Podcast『コンテンツ過剰接続』のホストで、幅広くポップミュージックを観測し続けるキムラ。国内インディや、ブラジルをはじめ英米以外の各国の音楽に詳しい風間一慶。DJとしても活動し、国内外のインディペンデントなクラブミュージックに精通した松島広人(NordOst)。守備範囲の異なる若手音楽ライター3人に、音楽ファンにはおなじみの作品から、まだあまり知られていないアーティストまで、それぞれが気になった音楽を語り尽くしてもらいました。 音楽通のあなたもきっと、読めば未知の音楽と出会えるはず。良い出会いがあれば幸いです。 私性のにじませ方が絶妙だった星野源『Gen』 キムラ:去年はビヨンセ、アリアナ・グランデ、テイラー・スウィフト
来る6月7日、OGRE YOU ASSHOLE主催のイベント『””DELAY2025″”』が、バンドの拠点でもある長野県・原村にて開催される。出演者にはOGRE YOU ASSHOLE、活動休止を経て待望の復活を果たしたD.A.N.に加えて、Corneliusが名を連ねる。 なんとも嬉しい組み合わせだが、特に、OGRE YOU ASSHOLEとCorneliusの共演は初となるだけに、多くのファンが期待に胸を躍らせていることだろう。一方で、その共演の知らせに、やや驚きの感を持った方もいるかもしれない。近そうで遠い、遠そうで近い両者の音楽が重なる場所、あるいは重ならない部分があるとすれば何なのか。 以下、編集部たっての希望で実現した、実にレアな対談をお届けしよう。お互いの出会いや音楽遍歴、「サイケデリック」観について会話を交わすうち、気が付けば、今現在世界に大変革を起こしつつあるAIのテクノ
漫画家オカヤイヅミさんが、ゲストを自宅に招いて飲み語らう連載「うちで飲みませんか?」。第10回は漫画家のカラスヤサトシさんにお越しいただきました。 自画像のキャラクターが進行役として登場する、気さくなエッセイ漫画を、長く描いてきたお二人。おだやかな会話の中にその創作論や矜持がのぞく、サシ飲みの模様をお届けします。 当日振る舞われた「チリコンカン」のレシピもお見逃しなく!(レシピは記事の最後にあります) レポート漫画の仕事術 カラスヤ:今日はありがとうございます。歩いてでも来れる距離でした。こんなにご近所だったんですね。 オカヤ:お近くだとは聞いてましたけど、そんなに近かったんですね! カラスヤさんは多作でお忙しそうですよね。いつも気がつくと新刊が出ているイメージです。 カラスヤ:オカヤさんもけっこうあちこちで描かれてますよね。同じタイプな印象です。 オカヤ:節操がないというか、やれる仕事は
「文化遺産として、どうしても記録映像を残しておかなければいけない」 坂本慎太郎のライブについて、映像ディレクター・大根仁はこう語る。その思いの結晶ともいえる『坂本慎太郎LIVE2022@キャバレーニュー白馬』が、2025年5月1日からNetflixで配信された。本作は、かつてゆらゆら帝国の日比谷野音ライブの映像もディレクションした大根が、自主制作したもの。さらに撮影には16ミリフィルムが使用されている。そうした事実からも、この作品に対する大根の熱量の高さが伺えるだろう。 今回、本作について大根にインタビューを実施。聞き手は、「キャバレーニュー白馬」をライブ会場に選ぶきっかけにも関わった音楽ライター、松永良平が担当。本作に対するモチベーションや、フィルムを使用した背景、ミュージシャン・坂本慎太郎に対する思い、ゆらゆら帝国時代からのつながりなどを聞いた。 「坂本慎太郎のライブを記録に残す」。大
世界35カ国で翻訳が進められる柚木麻子の小説『BUTTER』(新潮社)。2024年に英語版が刊行され、イギリスで26万部超、アメリカで10万部超のベストセラーになり、イギリスの大手書店チェーンが選ぶ『Waterstones Book of the Year 2024』を日本人として初受賞した。 今、海外では日本語文学がブームだと、柚木は話す。そうした人気が後押しとなり、イギリスでは6都市を巡るオーサーズツアー(著者によるPRイベント)に招かれ、オックスフォード大学でも講演。インド、香港など世界各地を訪れている。日本での刊行から8年、『BUTTER』とともに世界を旅する中で感じたことから、本著がテーマとする「生きづらさ」から考える、自分にとっての心地よさの「適量」についてまで、たっぷりとお話をうかがった。 『BUTTER』は英語圏だと「穏健な」フェミニズム文学 ─小説『BUTTER』が刊行さ
カクバリズム期待の新人バンド、シャッポが1stアルバム『a one & a two』を完成させた。ともに2000年生まれの福原音と細野悠太の2人がシャッポを結成したのは2019年だが、コロナ禍を経てしばらくは練習や曲作りの日々が続き、ライブやリリースなどの表立った活動を開始したのは2023年から。 『a one & a two』はYOUR SONG IS GOODやSAKEROCKの系譜を受け継ぐインストバンドとしての側面があり、Ålborgや思い出野郎Aチームといったレーベルの仲間も多数参加しているが、歌も環境音も朗読も詰め込んだ作風にはシャッポならではの歪さや面白みがあり、それがゆえに深い味わいがある。 そもそも福原と細野が出会ったのは、1940年代の大衆音楽を愛する福原が、その話をするために細野の祖父である細野晴臣の事務所に突然押しかけたことがきっかけで、その後に似ているようで正反対
親との関係は人格形成に深く関わっているが、至極個人的で他人と比べることが難しい。ゆえに作家が親との関係に向き合う創作は自己理解を深めるセラピー的な一面を持ち、それに触れる私たちも呼応するように、親との関係や自分自身に向き合うことになる。 森山直太朗の約2年にわたるライブツアーの国内最終公演となった両国国技館の様子、そしてツアー中に亡くなった父親との関係が描かれた映画『素晴らしい世界は何処に』もまさにそういった作品だった。両親が幼少期に離婚して以来、父親について語ること自体を避けてきた森山が、あるきっかけを経て彼への愛惜の情に気がつき、自分と父親を重ね、自己理解を深めたこの数年。映画公開に際して、父親の晩年が森山自身にどう影響していたのか聞くと、アルバム『素晴らしい世界』に収録された“papa”という楽曲が生まれてから「父に書かされた」という新曲“新世界”が生まれるまで、世界の見え方について
1989年から1990年に放映された『平成名物TV 三宅裕司のいかすバンド天国』は、『イカ天』と呼ばれたアマチュアバンドのコンテスト番組。出演するバンドは、イロモノやキワモノから実力派、前衛系まで玉石混交だったが、結果的に『NHK紅白歌合戦』に出場した「たま」のような隠れた才能を、いくつもフックアップした。その狂騒は、衝動や情熱をガソリンに突っ走ったお祭り騒ぎだったとも言える。そして、何かをやりたいけど、何をやっていいのか分からない、そう鬱屈した若者が『イカ天』を見てバンドをやり始めた。 『イカ天』や若者のバンド活動を加速させたムーブメントについて3回の連載で紹介する本連載。第1回は『イカ天』の全体像を振り返り、第2回は、『けいおん!』『ぼっち・ざ・ろっく!』から『ふつうの軽音部』までを題材に2000年代以降のバンドブームについて考察した。 最終回となる第3回は、『イカ天』から活躍の幅を広
シンガーソングライター・大石晴子の楽曲は、それぞれの日常を肯定し、そこから生まれる大小さまざまな光が呼応し合う世界を賛美している。決して壮大な物語を立ち上げるわけではないが、いつどこで何が起きてもおかしくない人生と、喜びも悲しみも内包した自らの心を深く見つめることによって、スムースなソウルミュージックをベースとしたアレンジや歌声から、確かな魂の息遣いを感じさせることがとても素晴らしい。 BREIMENの高木祥太やBialystocksの菊池剛などが参加した2022年発表のファーストアルバム『脈光』がASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文主宰の『APPLE VINEGAR -Music Award-』で特別賞を獲得するなど、音楽ファンの中で大きな話題に。昨年10月と12月に発表された新曲“サテンの月”と“沢山”では新たに高橋佑成や細井徳太郎らを迎え、新たなフェーズの始まり
日本のミュージシャンにも人気。ピノ・パラディーノとの共演も 細野:細野晴臣です。今日はね、やっと会えたという感じがします。サム・ゲンデルさんと、隣には奥さんがいます。はじめまして。さっき「どこから来たのか」って聞いたら、静岡の掛川からだということで。何をされていたんですか? サム:昨日は演奏をしていました。 細野:日本で名前が飛び交っていたので、初めてお会いできて嬉しいです。 細野晴臣(ほその はるおみ) 1947年東京生まれ。音楽家。1969年、エイプリル・フールでデビュー。1970年、はっぴいえんど結成。1973年ソロ活動を開始、同時にティン・パン・アレーとしても活動。1978年、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を結成、歌謡界での楽曲提供を手掛けプロデューサー、レーベル主宰者としても活動。YMO散開後は、ワールドミュージック、アンビエント、エレクトロニカを探求、作曲・プロデュ
細野晴臣の記念碑的作品に再解釈を施した『HOSONO HOUSE COVERS』のリリースを祝した「短期連載:『HOSONO HOUSE』再訪」。 最終回の書き手は、柴崎祐二。カバー集にも参加したマック・デマルコを入り口に、細野晴臣と『HOSONO HOUSE』がどのように国外のリスナーや音楽家に受け入れられるに至ったのか、その経緯とともに、背景にある音楽を取り巻く現状について考える。 【編集部より】本連載、および本記事は昨年末に執筆・制作されたものです。2025年1月、数十万人の被災者を出した米カリフォルニア州・ロサンゼルスの大規模な山火事で、『HOSONO HOUSE COVERS』の共同プロデュースを手がけた「Stones Throw Records」をはじめとするLAの音楽コミュニティーは大きな被害を受けました。本作に参加したジョン・キャロル・カービーも被害にあった旨をSNSで報告
細野晴臣の記念碑的作品に再解釈を施した『HOSONO HOUSE COVERS』のリリースを祝した「短期連載:『HOSONO HOUSE』再訪」。 3人目の書き手は、原雅明。レイ・ハラカミ、サム・ゲンデルの2組のカバーをお題に、そのサウンドが時を越えて示した細野晴臣含む三者の繋がりについて執筆してもらった。 細野晴臣(ほその はるおみ) 1947年東京生まれ。音楽家。1969年、エイプリル・フールでデビュー。1970年、はっぴいえんど結成。1973年ソロ活動を開始、同時にティン・パン・アレーとしても活動。1978年、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を結成、歌謡界での楽曲提供を手掛けプロデューサー、レーベル主宰者としても活動。YMO散開後は、ワールドミュージック、アンビエント、エレクトロニカを探求、作曲・プロデュース・映画音楽など多岐にわたり活動。2019年に音楽活動50周年を迎え
江東区森下の渋い商店街の一筋脇に建つ、かわいらしい外装のカフェ。往年のジャズを中心としたレコードが流れているが、ジャズ喫茶のものものしさは無い。 2024年にオープンした「parade」、その「新しいセンス」を音楽評論家・柳樂光隆が紐解く。連載「グッド・ミュージックに出会う場所」第11回。 通訳さんから教わった、東東京の新店 主にアメリカやイギリスのアーティストについて文章を書く音楽ライターをやっている僕の最も身近な仕事相手に、通訳さんがいる。ひとくちに通訳と言っても、いろいろな通訳がいて、僕らがお願いするのは音楽専門の通訳さん。音楽の知識が豊富で様々な文脈を把握しているので、時に僕らライターを助けてくれることもある。僕らが最も信頼する仕事相手でもある。なぜ、そんな書き出しかというと、paradeというカフェを勧めてくれたのはある通訳さんだったからだ。 取材後、彼女が「柳樂さんが好きそうな
『イカ天』やそれに類似するムーブメントなどについて3回の連載で紹介する本連載。第2回は、『けいおん!』『ぼっち・ざ・ろっく!』から『ふつうの軽音部』までを題材に2000年代以降のバンドブームについて考察する。 ※本連載に大幅加筆を加えた『イカ天とバンドブーム論(仮)』(DU BOOKS)より2025年2月に刊行予定。 アニメ『けいおん!』はカッコよさと簡単さの共存で「自分も弾いてみたい」と思わせた 筆者がフィクショナルな理想のバンドの筆頭として挙げたいのが、アニメ『けいおん!』の劇中バンド・放課後ティータイムである。アニメの舞台は女子校の軽音学部。バンドの練習や演奏シーンは殆ど登場せず、放課後に紅茶を飲みながらたわいもないおしゃべりに興じる女子たちの友情が作品の主軸を成している。ドラマティックな展開はほぼ存在せず、部室での無邪気な日常が延々と繰り返される。その作風は「日常系」「空気系」など
「これはあなたのためのフェスです」──そう語るのは、ロッキング・オンとサマソニが共同で立ち上げた、100%洋楽ロックだけにこだわる新フェス『rockin’on sonic』の仕掛け人・山崎洋一郎だ。 2024年1月4日(土)5日(日)、千葉・幕張メッセ国際展示場に集結するのは、PULP、Weezer、Primal Scream、Death Cab for Cutieといった豪華ラインナップ。さらに、若手バンドのWEDNESDAYやセイント・ヴィンセントといった幅広い世代のアーティストも登場する。全16組のステージは「タイムテーブルの被りなし」で展開され、洋楽ロックの「今」と「これから」を存分に堪能できるだろう。 洋楽不振と言われて久しいなか、このラインナップはある種のノスタルジーを感じさせながらも、時代を超えたロックの力を改めて問いかけている。ロックとは、単なる進化ではなく、受け継がれ、混
「あれなら自分でもできそうだ」「ああいう恰好がしてみたい」「あんな舞台に立ってみたい」――お笑い芸人でもYouTuberでもボカロPでも、自分なりの表現を発信したいと欲する時、誰しもがまず、このような希求を抱くのではないだろうか。音楽の領域でもそれは顕著だ。3コードと8ビートさえ弾ければステージに立てたパンクロックも、ターンテーブルとマイクさえあればゲーム感覚でプレイできたヒップホップも、そうだった。パンクなら素肌に革ジャン、ヒップホップならアディダスのジャージ。それまでなら白眼視されていた奇矯なファッションも、新しいもの好きの若者にはヒップに感じられた。 1989年から1990年に放映された『平成名物TV 三宅裕司のいかすバンド天国』は、『イカ天』と呼ばれたアマチュアバンドのコンテスト番組。出演するバンドは、イロモノやキワモノから実力派、前衛系まで玉石混交だったが、結果的に『NHK紅白歌
1989年から1990年に放映された『平成名物TV 三宅裕司のいかすバンド天国』は、『イカ天』と呼ばれたアマチュアバンドのコンテスト番組。出演するバンドは、イロモノやキワモノから実力派、前衛系まで玉石混交だったが、結果的に『NHK紅白歌合戦』に出場した「たま」のような隠れた才能を、いくつもフックアップした。その狂騒は、衝動や情熱をガソリンに突っ走ったお祭り騒ぎだったとも言える。そして、何かをやりたいけど、何をやっていいのか分からない、そう鬱屈した若者が『イカ天』を見てバンドをやり始めた。 かくして、家にひきもって深夜番組の『イカ天』を見ていた(当時の言葉で言うなら)ネクラな少年少女たちの逆襲が始まる。受動から能動、いや、行動へ。のちの『けいおん!』や『ぼっち・ざ・ろっく!』が誘発したのと同質の現象、そう、バンドブームの到来である。バンドブームはバンドを聴くブームじゃない。「バンドをやる」ブ
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