
1992年公開の宮﨑駿監督のアニメ映画『紅の豚』。豚の姿でもダンディズムにあふれる主人公ポルコ・ロッソの生き様を描いた作品です。
物語を最後まで見た人の中には「ポルコは人間に戻ったの?」という疑問を抱く方も多いかもしれません。
その答えは、他ならぬ宮﨑監督が明かしていました。
※この記事には『紅の豚』のネタバレが含まれています。

「オメエ、その顔!」カーチスが驚いた理由は?
多くの観客が続きを気になったであろうシーンは物語のクライマックスで、ライバルのカーチスとのリベンジマッチで描かれています。
殴り合いの激闘の末、なんとか勝利を収めたポルコにヒロインの1人であるフィオがキスをした直後です。ポルコの顔を見たカーチスは、こんな風に驚きます。
「オメエ、その顔!待てよ、おい、その顔見せろって」
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画面にはポルコの顔は写りません。豚の姿だったポルコは、果たして人間に戻ったのでしょうか?
その答えは、『ジブリの教科書7 紅の豚 』 (文春ジブリ文庫)のインタビューで宮﨑駿監督自身が明かしていました。
宮﨑監督「豚のままで生きるほうがいいんじゃないかと思います」

映画の観客のアンケートでは結末に疑問を持った人が多かったそうです。「ポルコは人間に返ったのか、それとも一生豚なのかというところが知りたい」という声をインタビュアーが伝えました。
すると宮﨑監督は、“ポルコが人間に戻る”ことに疑問を呈しながら、次のように答えました。
🗣️「人間に戻るということがそれほど大事なことなんでしょうか(笑)。それが正しいと?」
🗣️「僕は豚のままで生きるほうがいいんじゃないかと思います。ときどきつい本音がでて真顔になったりするけれど、でも豚のまま最後まで行きていくほうが、本当にこの男らしいと思う」
🗣️「いわゆる皆さんが期待している、なにか獲得して収まるハッピーエンドは、この映画には用意されていないんです」
ポルコは人間に戻っていないけど、「たまに人間の顔になっている」という衝撃の事実を明かされたのです。
この回答にはインタビュアーも驚いたのでしょう。「ときどきは人間の顔に、真顔になるときもあるけれど……」と再確認。
宮﨑監督はカーチスとの殴り合いのシーンを念頭に置いたのか「ヒロインに対する礼儀として、フィオの心を思ったら、やはりちょっと真顔になってあげなければ」と漏らしていました。
宮﨑監督「僕は豚が人間に戻るなんていう映画を作りたいとは、全然思っていない」

宮﨑監督は結びに、ポルコが人間に戻らない核心ともいえる、自身の心情も語っています。
🗣️「僕は豚が人間に戻るなんていう映画を作りたいとは、全然思っていない。それを作って見せたら、ものすごくいやらしい映画であることに気づくはずです」
🗣️「僕にとって、“美女と野獣”というテーマはずっとやりたかったものですが、もしやったとしても最後は野獣のままです」
人間に戻らないポルコの姿には、やきもきとした気持ちを抱いた方も多いかもしれません。宮﨑監督の思いを知ったうえで『紅の豚』を見れば、新しい側面が見えるかも?
※BuzzFeed Japanで根強く人気がある記事を再編集して掲載しました。
初出: 2025年5月9日