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ブラックフライデー
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ケニアには、年間数十億ドルをも生み出す秘密産業がある。そこで働く人たちは聡明で勤勉、しかし完全に匿名だ。 その産業に従事する人々は、「影の学者」と呼ばれる高学歴のケニア人で、この仕事で生計を立てている。英国や米国をはじめとする世界中の学生からの依頼を受け、レポート、博士論文、その他の学術論文を代筆する。納品したものは、依頼者が自分で書いたことにされて大学などに提出される。 実はこの産業はケニア特有のものではない。だが、ケニアはこの産業の一大中心地であり、ナイロビだけでもおよそ4万人の代筆屋が働いていると見積もられている。 優秀で、野心的で、教養があり、テクノロジーに精通している影の学者たちは、懸命に努力して大学に進学し、優秀な学位を取得した。だが、仕事がなかった。そのため、昼夜を問わず、代筆を請け負うプラットフォームにログインし、案件リストをチェックし、機械工学、看護学、量子力学、作家のジ
英誌「エコノミスト」が高市首相の積極財政を手厳しく批判する記事を掲載した。「大盤振る舞いのタカイチノミクスは、マンネリ化したハリウッド映画のリブート版のように古臭い」と容赦ない……。 すさまじい円安と国債利回り上昇 東京のバーは外国人観光客で沸いている。かつて日本への旅行は非常に高くついたものだが、いまや激安だ。円はこの半年ほどでドルに対して約9%下落し、対ユーロでも史上最安値を更新している。 価値が下落しているのは円だけではない。日本の長期国債の価格は下がり、利回りが上昇している。 10年物国債の利回りは現在1.8%で、2016~2021年にかけての大半の期間にほぼゼロだった水準から上昇した。30年物国債の利回りは3.3%に達し、日本で1999年に超長期債が初めて発行されて以来の最高水準となっている。
相撲は170年以上にわたり、諸外国が見る「日本のイメージ」に大きな影響を与えてきたと、米ペンシルベニア州立大学で日本近代史を専門とするジェサミン・エイベル教授は指摘する。ペリーが嘲笑した19世紀から、野球が橋渡しとなった20世紀、そして閉鎖性が問われる現代へ──この長い伝統のあるスポーツはいまも日本のイメージを左右し続けている。 宗教儀式に迷い込んだ? 日本を訪れて大相撲の本場所に足を踏み入れた外国人観光客は、まるで宗教儀式に迷い込んでしまったように感じるかもしれない。 その競技は、派手な化粧廻しを締めた屈強な力士たちが、一列に並んで土俵に上がるところから始まる。名前が呼び上げられるなか、力士たちは俵を埋め込んで作られた円形の土俵の周りを一周し、中央を向いて柏手を打ち、廻しを持ち上げ両手を高く掲げてから、一言も発さずに退場していく。 続いて、二人の力士が向かい合い、腰を落として手を打ち合わ
高市発言に端を発した日中対立は、習近平がトランプと電話会談したことで米国も巻き込んだ外交問題に発展。習は「台湾は中国の一部」の歴史的根拠をトランプに強調したようだが、そのロジックは史実を都合よく塗り替えた虚構にすぎない。ジャーナリストの池畑修平が、中国の欺瞞を指摘したうえで、それでも高市発言は稚拙だったと言わざるを得ない外交的文脈を解説する。 習近平「戦後国際秩序」の虚構 高市早苗首相の台湾有事発言が引き金を引いた日中関係の急激な悪化。中国側の激しい高市批判は、文字通り連日、各メディアで報じられているので、そのあたりは割愛しよう。 首相発言の迂闊さについては後述するとして、まずは中国・習近平政権の怒りのロジックと、その虚構性を整理してみたい。 習近平国家主席は11月24日にドナルド・トランプ米大統領と電話会談をおこなった。中国国営メディアによれば、習は「台湾の中国への復帰は戦後国際秩序の重
IQM Germanyが開発中の量子コンピュータ Photo by Sven Hoppe / picture alliance / Getty Images 「AIの次」は量子コンピューター、投資時期が難題 量子コンピューティングに改めて注目が集まっている。米グーグルの最近の技術的進歩や、米政府がこの技術に取り組む企業に出資を検討していることが伝わったためだ。だが、この業界に投資して得られるリターンがいくつかの明白なリスクを上回るのは、まだ先のことだ。 米株式市場ではこの数ヵ月、量子関連銘柄の大半が急上昇しており、量子コンピューティング企業イオンキューの株価は過去6ヵ月でほぼ2倍に、同業Dウェーブ・クオンタムは4倍超になった。 その熱狂ぶりは、人工知能(AI)と同様に、米国が優位に立とうとしている地政学的な競争の鍵となり得る産業への関心が芽生え始めたことを表している。これはまた、量子コンピ
text by Hurubie MekoKatie, J.M. BakerNicholas, Bogel-Burroughs and Hisako Ueno 2024年12月、米大手保険会社のCEOがニューヨークで殺害された。犯人のルイージ・マンジオーニは、この年の初頭から日本やタイなどのアジア諸国をめぐり、再び日本に戻った後、米国で犯行に向けた準備を進めていった。 保険金の支払い拒否により、米国内でも批判の的となっている保険会社のCEOを殺害したことで英雄視すらされているマンジオーニは、日本でどのように過ごしていたのか。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、彼にとって「決定的な転機となった」と書くこの旅の足跡と、彼の思想の変化を追った。 外国人がほとんど訪れない「修験道の聖地」 7世紀以来、奈良県にある大峰山の樹木とせせらぎの音は、精神鍛錬の修行に訪れる日本人男性たちを迎え入れてきた。仏教と
女優で出版人でもあるサラ・ジェシカ・パーカーは3年前、ブッカー賞公式インスタグラムに、権威ある文学賞の選考委員をやりたいとコメントした。 「お願い、私にやらせて!!!」 そして2025年、パーカーは選考委員としての責務を立派に果たした。11月10日夜のロンドンで、パーカーは弾かれるように椅子から立ち上がると、壇上に駆け上がってトロフィーを受け取るデイヴィッド・サロイの姿を見つめた。サロイは小説『フレッシュ(肉体)』(未邦訳)で、今年のブッカー賞を受賞した。 パーカーはサロイの『フレッシュ』について、自分と仲間の選考委員が5時間を超える討議を経て選んだ本だと明かした。それは、貧しく寡黙なハンガリー人ティーンエイジャーがロンドンの社交界に出て、高みへと上り詰める物語だ。 パーカーは受賞作について、「唯一無二の小説。おもしろさと読み手を惹きつけて離さない推進力、感情への訴求力がすごい」と、ほとん
日中対立が高市の「政治的利益」に 高市早苗首相が「台湾有事」発言で中国を激怒させてから約3週間。中国政府は日本への渡航自粛を呼びかけたり、日本産水産物の輸入停止など経済的報復を強めている。対する高市も発言は撤回しないと強気の姿勢を崩さず、緊張緩和へ向けた糸口は見えないままだ。 そうしたなか、米国のメディアではこの日中対立が「日本国内での高市人気を押し上げている」と指摘する論調も見られる。 米外交誌「フォーリン・ポリシー」は、「日本の新首相は早くも最初の危機に直面している」と題した記事を掲載。そのタイトル通り、首相就任まもない高市がさっそく「外交の泥沼に自ら足を踏み入れた」と指摘し、彼女の台湾をめぐる発言が中国からの激しい反発を招いた現状と背景を説明している。
海外でキャリアを築きたいという思いがあっても、どこから一歩を踏み出せばいいかわからない人も多いのではないでしょうか。さらに、現代では多様な働き方を選択することも可能です。本連載では、海外で自分らしく働く女性の方々にご登場いただき、これからの時代の働き方を考えます。 川端芽衣(かわばためい)1989年生まれ。神奈川県出身、ロンドン在住。株式会社クレフ代表。フォーサイトデザイナー。国内外のメディア・スタートアップを経て、セントラル・セント・マーチンズ修士課程修了。AI倫理やヒューマニティを基盤とした北欧モデルのグリーンエコノミー実現を掲げながら、日欧を文化で繋ぎ、日本の魅力を世界へ発信する。日系大企業の女性が集まり、働き方や生き方を共に考えるコミュニティでも登壇予定。中東ドバイ3年、現在は英国在住6年目。1児の母。 大学時代に国際連合でインターンをしていたときに「ウーマンエンパワーメント」とい
グローバルサウスと呼ばれる国々が、「積極的非同盟」という外交方針をとるようになっている。その意義や有効性について、提唱者である米ボストン大学の研究教授で元在中チリ大使のホルヘ・ハイネに、オンラインメディア「カンバセーション」が聞く。 ──なじみがない人のためにうかがいますが、積極的非同盟とは何ですか? 積極的非同盟とは外交政策のあり方で、国々が各自の国益を最優先させ、米中という対立する大国のどちらにも与(くみ)することを拒むものです。1950〜60年代の「非同盟運動」に倣いつつも、それを21世紀のさまざまな現実に即してアップデートしています。 いま成長しているグローバルサウスは、非同盟運動を担っていた「第三世界」とは全然違います。現代のインド、トルコ、ブラジル、インドネシアなどの国々は、経済的な重要性でも手段でもより優れています。したがって、昔よりも選択肢があるのです。 そうした国々は、自
カエルの着ぐるみが非暴力のアイコンになった背景 反トランプ、反ICE(移民・関税執行局)を掲げた全米各地の抗議デモの現場で、カエルやユニコーンの着ぐるみを着た抗議者の姿が目立っている。 まるでコスプレ大会のようだが、活動家らによれば、これは「戦略的おふざけ(tactical frivolity)」と呼ばれる、ユーモアと不条理を武器にした、古くて新しい抗議のかたちだという。 英誌「エコノミスト」は、この潮流を「ポートランドのカエルたち」として紹介している。 発端は、米オレゴン州ポートランドのICE施設前で、カエルの着ぐるみを着た抗議者が、警官に催眠スプレーを吹きかけられる映像だった。その様子はソーシャルメディアで拡散され、カエルは「暴力的な左派」という政権側のレッテルを逆手に取る象徴となった。
高市早苗首相の台湾有事についての答弁から20日。日中関係の緊張が高まるなか、当初は静観していたアジア諸国が自国の立場を整理しはじめている。米中との外交問題を抱えたインド、軍事・経済において複数国との火種を残す韓国、日中と深い関わりを持ちながらも独立した立場を保つシンガポールなど、揺れ動くアジア諸国のメディアから対日本への立ち位置を探る。 関係強化のインド、中立を目指す韓国 「日中関係の緊張は周辺地域の状況をより困難にさせているものの、インドと日本にとっては安全保障と経済協力を強化する大きなきっかけとなる」 印紙「ヒンドゥスタン・タイムズ」は24日、上述の内容の記事を掲載した。記事では日中の関係性が「安定的な不安定さ」にあるとしたうえで、中長期的に続くと見られるこの問題を機に、日印関係の重要性がさらに増すことを指摘している。同紙は23日にも「アメリカの安全保障が脆弱な状態にあるなか、中国が日
デンマークの精子バンクがドナーへのIQテストを導入した。子供を望む親たちに「知的な子供」をある程度保証する、前例のない選別だ。 デンマークの精子バンク「ドナー・ネットワーク」は、ドナーに対して少し特殊な選別をしている。知能指数(IQ)が85以上の男性の精子のみを取り扱うのだ。この「最低要件」について、デンマークの公共放送「DR」は11月8日、「おバカな精子はもう終わり」と見出しを打って報じた。 同社はもう一つ、「前科がないこと」という基準も導入したが、DRが注目しているのはIQに関する選別だ。
遺伝人類学者としてホモ・サピエンスの遺伝的進化と多様性を研究してきた、フランスの国立自然史博物学のエヴリン・エイェール教授。科学的研究活動のかたわら、彼は人種差別との闘いにも深く関わってきた。遺伝学の研究はいかにして偏見やステレオタイプを打ち砕けるのだろうか。オンラインメディア「カンガセーション」が取材した。 ※本稿の内容をさらに深掘りしたエイェール教授の著書はこちら。 ──ホモ・サピエンスの起源についてざっくりとした歴史を教えてください。 私たちホモ・サピエンスの歴史は約30万年前、アフリカで始まりました。ある特定の場所に出現したのではなく、いくつかの場所に出現したのだと考えられています。その後、私たちはアフリカで進化を重ねました。アフリカ大陸の外へと足を踏み出したのは約7万年前で、最終的にはオーストラリアまでたどりつきました。 長い期間、熱帯で生きていた私たちが、北のヨーロッパの地で暮
高市早苗首相の「台湾有事」発言の余波は広がりを見せるばかりだ。中国の台湾をめぐる武力行使は、日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になりうるとしたその発言を、フランスメディアもさまざまな視点から伝える。 自民党の「右傾化」を裏付けた 台湾有事に関連した高市早苗首相の「存立危機事態」発言に中国が反発し、日中関係の緊張が高まっている。 仏紙「ル・モンド」は「中国との緊張で試される日本の平和主義」と題した記事で、新政権発足から1ヵ月足らずのこの事態に、日本人も「その深刻さを認識しはじめた」と伝える。 同紙は首相の発言について、「現実を反映したものだ」と肯定する。「日本の最西端の島、与那国島は台湾から100kmほどしか離れていない。その台湾に対する中国の攻撃に日本が距離をおくことは難しい。さらに、中国の軍事介入は台湾海峡の閉鎖を意味する。日本にとっては液化天然ガスをはじめとする物資の供給路
高市首相の台湾有事発言をめぐり、英紙「フィナンシャル・タイムズ」は、中国がこの騒動を「日米同盟の強さを見極める好機」と捉えていると指摘する。また米紙「ニューヨーク・タイムズ」によれば、習近平がトランプに直接電話を入れたのは、「日本を抑制しろ」と暗に迫るためとされ、高市発言の余波は大国間の駆け引きへと発展している。 11月24日、中国の習近平国家主席がドナルド・トランプ米大統領に電話をかけ、来年4月に北京を訪問するよう招待した。米メディアによれば、トランプの訪中は約1時間の電話会談で決まり、同会談では台湾問題やウクライナ情勢、両国の貿易協定などについて協議したという。 両首脳は10月末に韓国で会談しており、その際にトランプは4月の中国訪問について記者団に語っていた。したがって今回の電話会談で正式に招待を受けたということで、ここに大きなニュース性はない。 それより特筆すべきは、10月の会談では
Photo: Paul Bersebach / MediaNews Group / Orange County Register / Getty Images コーヒーは外食業界で特に収益性が高く、習慣性のある商品だ。しかし、至る所に店舗が存在するコーヒーチェーンになれた企業は少ない。 ハワード・シュルツ氏がシアトルの小さなコーヒー小売業者を世界的な大企業に変貌させて以来(現在米国内に1万7000店弱を展開)、地域の人気店から全国的なブランドへの飛躍を成し遂げた企業はほとんどない。 その事実は数字にも表れている。米国には数十の小規模チェーンと数千の独立系店舗があるにもかかわらず、売上高ベースではコーヒー市場の約85%をスターバックスとダンキンが依然として支配している(モルガン・スタンレー調べ)。 この状況が変化する兆候がある。マクドナルドやタコベルなどのファストフード・チェーンに加え、全国
かつてハゲタカと呼ばれたが… 迎賓館赤坂離宮は、日本を訪れた政府要人や王族などの賓客をもてなす国の施設だ。しかし、2025年9月に岸田文雄元首相がそこに迎え入れたのは、米プライベートエクイティ(PE)ファンド、コールバーグ・クラビス・アンド・ロバーツ(KKR)の顧客という、通常とは違う顔ぶれだった。 日本国内の企業幹部や銀行関係者など約100人が出席したその夕食会で、岸田はPEの素晴らしさを並べ立て、日本がそうした金融の専門家を必要としている理由を力説した。 未公開企業に投資するPEファンドが日本市場に初参入した四半世紀前とは雲泥の差である。当時、新聞はPEファンドをハゲタカファンド呼ばわりして批判し、政治家は表立った接触を避けていた。 そんなPEファンドがいまや勢いを増す存在となり、政府や企業といった日本のエスタブリッシュメント(既存勢力)は、停滞する実業界を刷新して業界再編に拍車をかけ
怒りの矛先を向けられた外国人 日本の国内メディアが、オーバーツーリズムの危機に注目するのは今回が初めてではない。 1960~70年代初頭の高度経済成長期においても、豊かになった若いファミリー層が開通したばかりの新幹線に乗り、国内旅行に大挙して繰り出した。 現代の日本社会は非常に清潔で秩序があり、人々はマナーも完璧というイメージがあるが、半世紀以上も前の日本人観光客は皆、行く先々で大騒ぎしていた。 保守派は、京都や奈良といった古都を荒すこうした観光客に辟易し、新聞もこぞって「観光汚染」に関する記事を掲載した。人類学者の梅棹忠夫は、1961年に発表した「京都は観光都市ではない」という論考で、「もっともおそるべきことは、観光地とよばれる土地に住む人が、観光を意識することによって、みずからその土地と文化の主人公であることを忘れて、何ものか、えたいの知れぬ連中に奉仕しはじめることである」と断じている
爽やかな秋晴れのある朝、秋田では市民が神経をとがらせていた。 通勤する人たちは鈴をつけたり、スプレー缶を携帯したりしながら、落ち葉が積もる通りを恐る恐る歩いている。子供たちは外出しないようにと言われている。 公園は、「立入禁止」と書かれた黄色いテープで封鎖され、その入口には恐ろしいシルエットが描かれた看板が立っている。自衛隊員が、近くの山林をパトロールし、防護盾を掲げ、罠を仕掛けている。上空にはドローンが飛んでいる。
韓国では通勤時間の長さが深刻な社会問題として浮上している。 最新の国際比較調査によると、韓国の平均通勤時間は1日1時間48分に達し、調査対象43ヵ国のなかで最長だった。同調査の世界平均は1時間8分で、韓国人の通勤時間はこれより40分長い計算になる。 ソウル郊外から都心部のIT企業に通う34歳の男性会社員は、往復2時間半の生活について「慣れたとはいえ、家に着く頃には完全に消耗している」と、韓国の英字紙「コリア・ヘラルド」に語っている。 彼のような長距離通勤者は決して珍しくない。ソウル研究所の調査によれば、ソウル市民の約14%が仕事や学校への往復に1日約2時間を費やしており、片道90分以上かける人も4.5%に達する。 なぜ韓国の通勤時間はここまで長くなったのか。背景にはいくつかの要因がある。主な理由のひとつとして挙げられるのが、住宅価格の高騰だ。
英紙「フィナンシャル・タイムズ」が、人気アニメ作品の聖地や京都・奈良といった特定の観光地ばかりに外国人が殺到する日本の現状に注目。訪日観光客や地元住民、専門家などに取材しながら、オーバーツーリズムに不満を募らせる日本人の複雑な心情と、改善策を考察している。 午後5時頃、絵に描いたように美しい夕陽が相模湾に沈もうとしていた。 台湾からやって来たジョシュア・リーが目指すのは、鎌倉高校前の踏切だ。 スリーピーススーツ姿のリーと、ブライダルガウンを着た婚約者は、車道の中央に走り出ると、わずか10秒ほどで記念写真を撮影した。すぐに他の観光客も狭い車道に流れ込み、憧れの聖地を背景に思い思いの写真を撮る。 海岸沿いの交差点の手前にあるその踏切は、日本の人気マンガ作品のアニメ版オープニングに登場する。 「彼女も私も『スラムダンク』の大ファンで、それが縁で出会ったんです」と話すリーは、まもなく花嫁となる女性
AIによって奪われる「新人の仕事」 生成AIの普及とセットでよく語られるのが、「雇用の喪失」だ。世界経済フォーラムが発表した「2025年 雇用の未来リポート」によると、雇用主の40%が、生成AIによる自動化が可能な業種においては、従業員を削減する見込みだと回答している。 また、報告書の作成やデータ入力など、いわゆる初級職の仕事を生成AIが担うようになったことで、若手社員が職場で経験を積む機会が失われつつあると、メディア「カンバセーション」は指摘している。 すでに、米国では新卒者の失業率が全体の失業率を上回ったという調査報告がある。
作家であり、イタリア紙「コリエーレ・デラ・セラ」のコラムニスト、ダーチャ・マライーニは、第二次世界対戦中の2年間を日本の強制収容所で過ごした。そんな彼女が、スペイン紙「エル・パイス」のインタビューに応じ、当時の壮絶な生活を振り返った。 イタリアの作家ダーチャ・マライーニ(89)は、生涯を通して物語を書いてきた。だが最良の作品は、彼女自身の内に隠されてきた。 第二次世界大戦中、マライーニ一家は日本に住んでいた。彼女は7歳で強制収容所に入れられ、そこで2年を過ごした。1943年9月、東京の当局に呼び出された両親は、ムッソリーニが北イタリアに樹立した最後の政権「サロ共和国」への賛同を示す署名を拒否した。そして投獄という代償を払ったのだった。マライーニは『わたしの人生』でその経験を綴っている。 山積みの本でいっぱいの、光溢れるローマの自宅の居間に腰を下ろしたマライーニは、両親が「ノー」と答えたとき
台湾有事についての高市早苗首相の答弁を機にした日中の関係悪化の波紋は、日ごとに大きさを増して世界に広がっている。このタイミングでの発言は国益にかなうのか──。保守派や高市首相の支持者からも、そんな声が漏れ出る。そうした意見は日本だけではない。英紙「フィナンシャル・タイムズ」は21日、高市首相の率直すぎた答弁と中国の姿勢を批判する社説を掲載した。 中国と日本の無駄な論争 中国のスタンダードである「戦狼外交」だったとしても、その言葉は行き過ぎていた。 「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」 今月初め、大阪の中国総領事・薛剣はSNSへ上記一文などを投稿した。この言葉は、「武力攻撃が発生したら、これは存立危機事態にあたる可能性が高い」と高市早苗首相が示唆したことに向けられたものだ。投稿はのちに削除されたものの、中国政府の憤慨はなおも強さを増し、中国人の渡航を制限する
1974年に日本人写真家6人が東京で立ち上げた「ワークショップ写真学校」に象徴される、日本の写真界の転換期に関する研究で、2024年度「渋沢・クローデル賞」(フランス側)を受賞したエリーズ・ヴォワイヨに、受賞記念講演会があった日仏会館で聞いた。 ──日本に関心を持ったきっかけは? 私はフランスの西部にあるケルローという、家が20軒あるかないかくらいの小さな村で生まれ育ちました。隣の隣の家は農家で、牛も豚も育てていました。いちばん近い町はゲランドで、塩の産地として有名です。 日本に関心を持ったきっかけは、ありきたりですがアニメと漫画でした。いまは漫画もあまり読まなくなりましたが、当時は好きでしたね。 都会に憧れ、大学は絶対にパリに行きたいと思っていました。18歳で、パリのエコール・デュ・ルーブルに入りました。そこでは美術史を学び、そのうちに美術史のなかでも写真に興味を持ちはじめ、写真研究のゼ
ビル・ゲイツでさえ、環境について書かれた「楽観的な」この本には驚いたと明かしている。『これからの地球のつくり方:データで導く「7つの視点」』(早川書房)でハナ・リッチー(32)は、既存の思想よりも数字を重視した「合理的なエコロジー」を、説得力を持って主張している。 英オックスフォード大学の研究者であり、世界の生活環境の変化を可視化するサイト「Our World in Data」の副編集長兼科学普及責任者も務める彼女は、巷に溢れかえる破滅的言説とは距離を置き、より現実的な視点で問題を捉えることを勧める。「問題」には、地球温暖化はもちろん、食糧問題、森林破壊、生物多様性の消滅、プラスチック汚染なども含まれる。 仏「レクスプレス」誌のインタビューで、リッチーは自らの楽観主義の理由を説明し、人々が統計学的な知識の欠如によって、どれだけ些細な行動に振り回されているかを解き明かす。たとえば、ビニール袋
資本主義が奪ったコモンとコミュニティ 斎藤幸平 私は2022年に、一般社団法人コモンフォレストジャパンを立ち上げて、みんなで山を共同購入して管理する活動をしています。いま(2025年時点)は3ヵ所に拠点があり、私は高尾山に月に一度行って、山の保全活動をしています。 共同購入した山は荒れ放題で、いわば資本主義に見捨てられている状態です。高尾のメインエリアには観光客が訪れていますが、裏高尾は手入れが行き届いていないので、それを再生していくのが目的です。 活動では高尾山の生態系や、重機を使わない伝統的なやり方で山を再生させる手法を学びます。 これは資本主義で失われたコモンを作りだす一つの実験でもあります。日々の喧騒から離れてふだんとはまったく違うコミュニティのなかで活動していると、その日の終わりには違う満足感が得られます。 四角大輔 話を伺っていると、コモンとコミュニティは重要なキーワードだと感
「今年に入ってから日本の治安が悪化し、日本で中国人が襲われる事件が多発し、未解決のものもある」 「日本の指導者が露骨な挑発をおこない、在日中国人の身体と生命の安全に重大なリスクをもたらしている」 11月14日、中国外務省は高市首相が国会でおこなった台湾有事への答弁を理由に、上記内容で中国国民に日本への渡航自粛をよびかけた。これらの内容の真偽については議論の余地があるにせよ、日中関係の劇的悪化が関連産業に打撃をもたらすだけでなく、周辺海域の地政学リスクを急激に引き上げることは間違いなさそうだ。 英紙「フィナンシャル・タイムズ」はこの問題を「5年前に安倍晋三元首相が同様の発言をして以来最悪となる、日中関係悪化のひとつ」とし、世界的に注目されてきた訪日インバウンド市場への影響や中国市場で需要の高い日本株の急落などを伝えた。 同紙が引き合いにしているのは、安倍元首相が退任後に台湾のシンポジウムで述
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