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そのカラオケボックスは、いつ来ても“人生の残りカス”みたいな匂いがする。壁の吸音材は、歌声よりも後... そのカラオケボックスは、いつ来ても“人生の残りカス”みたいな匂いがする。壁の吸音材は、歌声よりも後悔と怨念を吸いこんでいるのだろう。それらと時間を混ぜるとクソみたいな匂いを放つのだ。クソみたいな匂いのする部屋で歌うという行為は、人生のどこかで落としたネジを探す儀式みたいなものだ。そんな場所の真ん中に、義父が座っている。 義父は七十代。箱職人で、木と紙と、昭和と平成の湿気でできている。そして、酒が一滴も飲めない。「飲めるけどな」と義父は強がるが、ほとんど酒が飲めない老人は、ブコウスキーの小説に出てきたら、たぶん一行で退場させられる。義父は人生の苦味をどうやって流してきたのだろう。ビール吸引機のごとく、がぶがぶ飲んでいる僕には理解できない。義父からカラオケに誘われた。嫌な予感がした。これは歌うためじゃない。義父の心の中につもった“おが屑”を掃除する時間なのだと。 僕はウーロンハイを頼み、義父は





























2026/02/13 リンク