「あれは魂が削られる」エマ・ワトソン、俳優業から離れた理由とは…「彼女が恋しい」「肩の力を抜いて」

『ハリー・ポッター』シリーズでハーマイオニーを演じ、世界的に知られるエマ・ワトソン。

しかし、最後の出演作は2019年の『ストーリー・オブ・マイライフ／わたしの若草物語』でのメグ・マーチ役です。

6年が経ちましたが、演技の舞台には立たず、本人もその理由を語ってきませんでした。

「俳優というのは、自分を複数の人格に分けてしまう傾向があると思うんです。演じる役柄だけの話ではありません。公的なイメージを背負いながら、自分を飾り続ける重荷があります」

「複数の人格を手放したことで、余白が生まれました。姉や娘、友人、孫、そしてアーティストとして、ずっと自分らしくいられるようになった気がします」

「ある意味、私は俳優という仕事で宝くじに当たったようなもので、私に起きたことは本当に特別だったと思います」

「でも、なにより負担が大きかったのは、芸術作品を宣伝して売り込むこと。そのバランスが崩れると本当にしんどい」

「正直に言います。私は“モノを売ること”は恋しくありません。それは、“魂を削られる”ような感覚でした」

「自分のスキルを使うことや“芸術”そのものは恋しい。けれど、実際に楽しんでいた時間は、全体のほんのわずかしかなかったと感じています」

「シーンについて話し合ったり、自分がどう演じたいかを準備して考える時間……そして、カメラが回り始めた瞬間、世界のぜんぶを忘れて、その一瞬だけに没頭できる」

「それは、強烈な瞑想のようなものでした。ほかのことを一切考えられない解放感が今でも心から恋しく思います。でも、プレッシャーは恋しくありません」

「私は、プレッシャーの大きさをすっかり忘れていました。友だちと小さな舞台をやったとき、『なんてこと、これはストレスだ！』と感じたんです」

「観客に向けた公演ですらなかったのに。だから、あの重圧は恋しくありません」

「ずっと頑張りすぎて、自分の人生がくずれてしまった。だから建て直す必要があったし、何かを育てられるように、しっかりした土台を作らなきゃいけなかったんです」

「もしその土台がなければ、ある種の狂気のようなものにおちいります。“空白”が怖くてパニックみたいな状態になって、次から次へとプロジェクトに飛びついてしまう。自分の人生にリズムがないことに気づくんですよ」

「何かに向かって進むよりも、離れるほうがずっと難しい。何かを手放して、先が見えないままでいるのは、目標を持って 『これをやっているんだ』 とみんなに言える状態よりも、ずっと大変なんです」

「だから当時は、とても勇気ある行動だと感じていました。でも、実際はただ本当に怖くて、不安で仕方なかったんです」

「それでも正しい選択でしたし、とても満足しています。ときには、簡単なことではなく、難しいことのほうが正しいんです」

「何をしてるかは、言わないでおきます。だって言っちゃうと、みんな『いつ始まるの？ どうなってるの？』って聞いてくるでしょ。だから“今までにやったことのない挑戦をしている”とだけ言っておきます」